ひろのギターで息抜き

趣味のギターで息抜きしてジャンジャン鳴らしてます!

"見えないもの"が見える、世界が広がる 網膜に直接映像を投影するスマートグラス「網膜走査型レーザアイウェア」(前編

2018-06-08 23:00:25 | 日記

"見えないもの"が見える、世界が広がる
網膜に直接映像を投影するスマートグラス「網膜走査型レーザアイウェア」(前編)

【未来を創るチカラ Vol.2】

最先端の超極細レーザーが網膜に直接映像を映し出す

網膜走査型レーザアイウェア利用シーン

視力に依らずに、ものを見ることができる───。

「網膜走査型レーザアイウェア」は、そんな目の覚めるような驚きに満ちたスマートグラスです。先日の「CEATEC JAPAN 2016」で、最高賞にあたる「経済産業大臣賞」と「米国メディアパネル・イノベーションアワード グランプリ」を受賞し、その存在を広く知られることになりました。
開発を手がけるのは、富士通のスピンオフベンチャー「QDレーザ」。一体どんなデバイスなのでしょうか。同社代表の菅原充に聞きました。


「網膜走査型レーザアイウェア」はプロジェクターを搭載したメガネにコントローラーを接続して使う

株式会社QDレーザ代表取締役社長 菅原 充

「メガネの内側にレーザー技術を応用した超小型プロジェクターがついていて、内蔵カメラで撮影した映像や外部入力したスマホ・PCデータを網膜に直接走査(スキャン)します。眼球は半球型なので、プラネタリウムに映像を投影するようなイメージですね。ポイントは直径1mmにも満たない最先端の極細レーザーを使っていること。この細さであれば眼球の奥にある網膜に直接届くので、視力やピント調整の必要がなく、ロービジョン(全盲ではない視覚障がい者)の方々も、鮮明にものを見ることができる可能性があるんです」

メガネもコンタクトも使えないロービジョンのために

ロービジョンとは、視機能が弱く、メガネやコンタクトレンズを使っても十分な矯正ができない状態のこと。世界保健機構(WHO)の定義では、矯正視力が両眼で「0.05以上、0.3未満」となっていますが、緑内障、白内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性、強度近視など症状は様々で、国内だけで約145万人、世界には約2.5億人いると言われています。

株式会社QDレーザ取締役兼富士通株式会社経営戦略室シニアマネージャー 幸野谷信次

「ロービジョンの方は普段、望遠鏡やルーペ、白杖を使っています。日常生活に様々な不便を抱え、働きたくても働けないという方も沢山いるんです。でも、スマホと同じ感覚でこのアイウェアを持つことができれば、より便利で豊かな生活が送れるようになると考えています」
そう語るのは、QDレーザ取締役兼富士通経営戦略室シニアマネージャーの幸野谷信次。
QDレーザの立ち上げに関わり、広報や資金調達など、様々な面から開発をサポートしています。

「見える!」という喜びの声が開発のモチベーション

「実際に網膜走査型レーザアイウェアをモニタリングしたロービジョンの方からは、『家族の顔を久しぶりに見ることができた』『人の目を見てしゃべるという長年の夢が叶った』など、うれしい反応が多く寄せられています。メールや電話での問い合せも毎日のように届いていて、開発の大きなモチベーションになっています」(幸野谷)

「現在、日本とドイツで臨床研究を行っているのですが、事故で両目の視力が0.028まで低下し、仕事もできなくなったドイツ人の青年がレーザアイウェアを装着したところ、0.25まで視力が矯正され、本が読めるようになったと、とても喜んでいました。そういう姿を見ると、やはりうれしくなりますね」(菅原)

自分たちの技術を使って、革新的な製品を生み出したい

網膜走査型レーザアイウェアの開発がスタートしたのは2012年。菅原が着目したのは、1980年代にアメリカで開発された眼底撮影用機器です。
「メガネへの応用も進められましたが、非常に大型だったため、普及はしませんでした。しかし、我々の持つ最先端のレーザー技術を使えば、軽量小型化・高性能化が可能になり、画期的なウェアラブルデバイスが作れると確信したんです。当初は一般向けに開発を進めていたのですが、展示会でプロトタイプを手にしたロービジョンの方が『ぜひ、これを私たちのために製品化してほしい!』と。そこで、まずは本当にこのデバイスを必要としている方々に届けるため、医療機器の認証を目指すことにしました」(菅原)

安全性、高画質、軽量小型化......押し寄せる課題

光学系部品を全てメガネの内側に入れることで普通のサングラスと変わらない外観を実現

網膜走査型レーザアイウェアは富士通グループではほぼ初めてとなるハード系の医療機器開発。厳しい国際規格をいくつもクリアしなければならず、開発は課題に次ぐ課題。前例のないプロダクトのため、すべてが手探りだったといいます。

「このアイウェアには長時間目に照射しても全く問題のない超微弱レーザーを搭載しているのですが、光が弱いほど安定に作動させるのが難しいんです。また、高画質であるほど画像処理が複雑で電力を必要とするため、バッテリーにある程度のスペースを取られてしまい、コントローラーの小型軽量化もすんなりとはいきませんでした。レーザー、プロジェクター、カメラ、バッテリーなど、すべてのパーツのバランスを見ながら何度も設計をし直し、ようやく今の形になりました」(菅原)

気軽に持ち運べて、違和感なくかけられるデザインに

右が初期のプロトタイプ、左が最新のプロトタイプ。ともに手前がメガネ、奥にあるのがコントローラー

初期のプロトタイプはコントローラーがA4サイズ、重さは7キロ以上ありましたが、9.5代目となる最新のプロトタイプはコントローラーが手のひらサイズで300g、メガネは50g。試行錯誤を繰り返して小型軽量化し、見た目もスタイリッシュになりました。 「従来のスマートグラスは外出時にかけるのにはかなり抵抗があるものでしたが、光学系部品を全てメガネの内側に入れることにより、普通のサングラスと変わらない外観になりました。ロービジョンの方からも『軽くて疲れない』『これなら街中でかけていても恥ずかしくない』と好評です。最終的には健常者も含めた全世界の人が障壁なくコミュニケーションできるデバイスにすることを目指しているため、さらに小さく、軽く、シンプルにしていきたい。ゆくゆくはコントローラーもケーブルもなくし、メガネのみで操作できるようにするのが目標です」(幸野谷)

2018年の製品化に向けて、今もなお改良を重ねている網膜走査型レーザアイウェア。インタビュー後編では、様々な道のプロが集まる開発チームメンバーや富士通のベンチャー支援制度、エンターテイメントやスポーツ分野での活用など、イノベーションを生み出す環境やプロダクトの未来について語ります。

株式会社QDレーザ代表取締役社長工学博士
菅原充
1958年新潟生まれ。1982年東京大学工学部物理工学科卒業、1984年同修士課程終了。1995年東京大学工学博士を取得(論文)。研究テーマはナノ量子半導体エレクトロニクス。1984年富士通株式会社入社。富士通研究所 フォト・エレクトロニクス研究所フォト・ノベルテクノロジ研究部長、ナノテクノロジー研究センター センター長代理として、量子ドットレーザーの光電子物性の理論・実験的研究、及び、光通信応用に関する研究を進めた。2006年4月富士通のベンチャー支援制度により、株式会社QDレーザ設立。 量子ドットレーザーの基礎から実用化までの業績に対して、IEEE Photonic Society Aron Kressel Award、一般財団法人材料科学技術振興財団山崎貞一賞等、受賞歴多数。

株式会社QDレーザ取締役CFO
幸野谷信次
1965年秋田生まれ。北海道大学法学部卒業後、1991年富士通株式会社入社。経営企画室にて外部ベンチャーとの提携やM&A、富士通からのベンチャー創出などの制度企画、運営を16年にわたり推進。2015年経営戦略室 シニアマネージャー 兼 株式会社QDレーザ 経営企画室長となり、2016年経営戦略室 シニアマネージャー 兼 株式会社QDレーザ 取締役CFO 兼 経営企画室長に。新規事業開発の戦略立案、人事組織企画、提携契約交渉、資金調達、IPOに向けた体制作りなどを行う。(社)日本証券アナリスト協会 検定会員。

FUJITSU JOURNAL に関するお問い合わせ

6月7日(木)のつぶやき

2018-06-08 03:35:29 | 日記