アングラ小説です、不快感がある方は、読むのを中断して
下さいメジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな・・・
紀元前104年、長安の遊民であった李広利は突如大宛攻略
の命を皇帝から受けた。大宛とは西域の果てにある
未知の国。そこに たどり着くまでには天まで届く山脈、
さまよえる湖、広大な砂漠、果てしない草原……
さまざまな障害が彼の前に立ちふさがる。そこに生きる
人々との出会いは 希望に満ちたものか、それとも幻滅か
・・・
韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・城下の策謀家
「店主と、匈奴の二人をここへ呼べ。尋問する」
李広利が命じると、やがて三人が姿を現した。そのうち二人
の匈奴は、手枷をはめたままである。
「お前たちの誰でもいいが……あの李淑という男が何者か、
私に教えてくれ」
李広利が尋ねると、彼らはお互いに顔色を窺う素振りを見せ、
すぐには返答しようとしなかった。その様子から、この三人の
誰もがその正体を知っているようであった。
「では、店主。お前に話して貰おう。知っている限りのことを包み
隠さず申せ」
「私が、ですか? ……仕方ありません、お話しします。あの
方は、僮僕都尉の後見人というか、助言者というか……正式
な官名はありませんが、僮僕都尉とは友人以上の関係に
あります。また、それでいて莫大な利益を上げる商人でも
あります」
李広利は怒りを覚えた。店主を怒鳴りつけたい衝動を抑え
ながら、彼は厳しく尋ねた。
「李淑は漢への帰還を望んでいたと言うが、その気持ちを
内に秘めながら、あえて僮僕都尉に仕えていたというのか。
店主、おまえの観点ではどう思うか。李淑が裏切り者か、
そうでないか」
店主は困った表情を見せ、やがて呟くように言った。「それは
私には判断できません」確かにその通りであろう。彼などに
李淑の頭の中が見通せるようであったなら、苦労はない。
李広利は質問を変えた。
「李淑が僮僕都尉の協力者だったというが、具体的にどの
ようなことをして協力していたというのか」「それはもう、
僮僕都尉の本来の業務というか……あの方が大物の商人
だと申し上げたのはそのためです」
「どういうことか? あまりよくわからぬ」
店主は自分の言うことが李広利に通じなかったことに意外さ
を感じたのか、しばらくその理由を頭の中で探っているよう
であった。やがて得心したように頷くと、彼は調子よく説明を
始めたのである。
「将軍。そもそも『僮僕都尉』とはあなた方の言葉であって、
匈奴語ではアルバンとかアルバズとかいう官名なのです。
しかし漢語である『僮僕都尉』とはこれを音で表した語では
ありません。昔の人がこの官職の本質を見据えてこの名前
を付けたにも関わらず、いまの漢の人々はその由来を忘れた
ように思われますな」
「何と、僮僕とは匈奴語をそのまま音訳したものではないのか。
店主はその意味を知っているのか」
店主は得意げであったが、その質問に答える際は、やや声
を抑えた。「僮僕とは、簡単に言えば、奴隷を捌く役職です。
李淑はその協力者として、人身を売買する商人でした」
「なんだと……。では我々の部隊から離脱した兵たちも、奴隷
として売られたというのか。李淑の話によれば、捕虜として匈奴
に送った、とのことだったが」
「将軍。それは言葉は違えど、同じ意味ですよ。奴隷として
売れば、対価が貰える。捕虜として届ければ、褒美が貰える。
どっちにしても同じことです」
「なんとも吐き気がする思いだ。話が本当ならば、李淑は同胞
として唾棄すべき男ではないか」
李広利は苦虫を噛み潰したような表情を示し、実際に怒って
いるようであった。私は彼の袖を引き、あえて話に割って入る
ことにした。どうも怒りに身を任せては、冷静な判断ができ
かねるように思えたからである。
「店主どの。対価や褒美を貰えるといっても、匈奴には貨幣の
文化がない。そのような中で財産を築くには難しいことと思うが、
李淑はそのあたりをどう処理したのだろう」
私が呈した疑問に李広利は頷いて同意の意を示してくれたが、
店主はいとも簡単にそれに対する答えを提供した。
「なに、不動産ですよ。例えば、この館です。この館を旅館として
運営しているのは確かに私だが、所有者は李淑、あの男です。
あの男は西域のそこかしこに匈奴から権利を保障された土地
を確保し、建物を建ててもらっているのです。
それを現地の者に売ったり貸したりして利益をあげている
のですよ」「では、お前も彼の商売を助けている者のうちの
一人なのか」
「まあ、その通りです。私はもともと焉耆国の生まれでしたが、
商売に失敗しましてねえ。そんなときにあの男に拾われた
のです。いまの商売で得た利益の大半をあの男が持って
行ってしまいますが、それでも不自由なくは暮らせています。
この館は私にとって借り物に過ぎませんが、作りは豪勢だし、
とりたてて不満はない」
「感謝しているというのか」
店主の答えが自分の意に沿わぬものであったことが不満だった
のであろう、李広利はそのように反問した。ただ、それに対する
店主の答えは、我々をさらに困惑させたのである。
「あの男に拾われる、ということは奴隷として処理されるという
ことなんですよ。それを思えば、私はいい生活をさせてもらって
いる部類に入ると思うのです。
売り飛ばされず、自分の手元に置いてくれたことは、私にとって
幸運であった。……しかし、奴隷であることには変わりない。
複雑なところですな」
つまり、愛憎が相半ばしているということだろう。店主の気持ち
はそれに違いないだろうが、我々にとっては李淑という人物像が、
より一層捉えにくくなったことは否めない。
そこで業を煮やした李広利は、端的な質問を店主に発した。
「では、李淑の腹にある意思は、我々を捕らえて奴隷として
売り飛ばすことなのだろうか。お前の目にはどう映るのか、
聞きたい」
問われた店主はしばし沈思し、やがて答えた。
「李淑が漢に帰還したいという気持ちを持っていることは事実
だと思うね。そのためにあなた方をこの館に引き入れて保護
したという行為自体に嘘はないと思う。
だが、油断はしない方がいいだろうな。あの男は商売に
貪欲でね……。最後の最後には裏切るかもしれん」
「つまり、彼が晴れて漢に帰還できると確信した時点で、我々
は売り飛ばされるかもしれない、ということか」
「焉耆にも危須にもあの男は館を持っている。漢への道を
行くなら、当然あの男は自身の館にあなた方を泊めようと
するでしょう。しかし朝になって目覚めてみたら、館は匈奴
に取り囲まれていて、あの男だけがいなくなっていた……
ということは充分あり得る」
「ふうむ……」
「もっとも、李淑がどう考えているか私にはわかりません。
だから、可能性の話をしたまでのことですよ」
確かに可能性の話をしたらきりがない。李淑にしても、
店主にしても、その発言を裏付けるものは何もない。
どちらの発言が真に迫っているか、言葉ぶりと態度で判断
するしか、この局面を乗り切る策はなかった、と言える。
しかし李広利は、拙速なようだがこれを解決する策を定めた
ようであった。
「もし李淑が我々の裏をかこうとしているのならば、我々は、
裏の裏をかくべきだな。そのためには、相手以上の知識と
状況の把握が必要だ。……
・・・
あるテントウムシの受難
脳細胞を破壊され 体中は食い荒らされても 寄生バチを守り
続ける テントウムシの悲劇
テントウムシは、コウチュウ目テントウムシ科に分類される
昆虫の総称です。
テントウムシは英語圏では「Ladybug:レディーバグ=聖母の
ムシ」と呼ばれ、農作物を守ってくれる益虫ととらえられています。
日本では、テントウムシは「天道虫」という字を書きます。
天道とは太陽のことです。
テントウムシは太陽に向かって飛び立つという習性をもちます。
そのために天道(太陽)に向かって飛ぶ虫ということで
テントウムシと名づけられています。
ゴキブリが近くにいたら「ギャー!」と叫んでしまう人が多いの
に対し、テントウムシが近くにいてもほとんどの人は叫んだり
しません。
テントウムシは赤や黄色の色鮮やかな体色をもち、小さくて
真ん丸な体です。そして、ゴキブリのようにすばやく動くことは
ほとんどなく、家の中に急に出現することもありません。
このような見た目とおっとりとした特性に加えて、一部の
テントウムシは農作物を荒らすアブラムシを大量に捕食して
くれます。
しかし、テントウムシと一口にいっても、その種類も様々でエサ
となるものも大きく違います。そのエサとなるものは大きく分け
て3つあり、アブラムシやカイガラムシなどを食べる肉食性の
種類、うどんこ病菌などを食べる菌食性の種類、ナス科植物
などを食べる草食性の種類がいます。
肉食性の種が害虫のアブラムシなどを捕食するため世界中
で重宝されてきたテントウムシです。そして、これらの種の
テントウムシは、農薬代わりに使用される生物農薬の1つ
として活用されています。
小さく丸くかわいらしい姿をしたテントウムシですが、自分
を捕食しようとする多くの敵から身を守る手段をもっています。
私たちが水玉のようでかわいいと思っている赤や黒の斑点は、
実は捕食動物に向けた警戒色です。そのため、鳥などは
テントウムシをあまり捕食しません。
また、幼虫・成虫とも敵に出会って突かれたりすると死んだ
ふりをして難を逃れます。それでも、動物の口などに入れら
れてしまった時には、脚の関節から強い異臭と苦味がある
有毒な黄色い液体を分泌し、口にした動物はすぐに吐き
出してしまいます。
寄生バチに狙われるテントウムシ
テントウムシは様々な防衛手段を持っていますが、寄生バチ
にはまんまとやられてしまうことがあります。
テントウムシに寄生するのは、テントウハラボソコマユバチと
いう寄生バチです。この寄生バチはテントウムシにしか寄生
しません。体長わずか3ミリほどです。
テントウハラボソコマユバチのメスは産卵できるようになると、
まずテントウムシを探します。そして、テントウムシを見つけると、
最初に麻酔を打ちこみ、その後、テントウムシの脇腹に卵を
1つ産み付けていきます。
卵から出てきたテントウハラボソコマユバチの幼虫はテントウ
ムシの体に入り込みます。そして、テントウムシの体液を吸って
大きく成長していきます。
その間、寄生されたテントウムシの体は少しずつ蝕まれて
いきますが、外見や行動に変化はなく普段と同じように生活
します。
テントウムシの体内で体を食べに食べまくって約3週間後、
テントウムシの半分以上の大きさになったハチの幼虫は
テントウムシの外骨格の割れ目からゆっくりと這い出してきます。
こんなにも大きなハチの幼虫に体内を食い荒らされていた
テントウムシは、それでもなお30~40パーセントは生きています。
その理由は、寄生バチの幼虫が、生死に直接影響しない脂肪
などの組織を重点的に食べているからだと考えられています。
体中を食い荒らされてもなお寄生バチを守る
テントウムシの体から出てきたテントウハラボソコマユバチの
幼虫はテントウムシの腹の下にもぐるような形で繭を作り、
その中で蛹になります。
そうして、テントウムシは繭を抱くような形になります。
そして、3割以上のテントウムシはこの時まだ生きています。
命があるうちに、さっさと逃げたら良いのにと思いますが、
寄生バチの幼虫が体内からいなくなった後も、逃げようとは
せず繭を抱いています。
ただじっと抱いて守っているだけではありません。自分の
体の中身を食い荒らした寄生バチが蛹となって動けない間、
蛹のボディーガードをします。
蛹になった寄生バチは動けず外敵に狙われやすい状態です。
クサカゲロウの幼虫などは、このハチの蛹が大好物です。
しかし、瀕死のテントウムシは、蛹を狙った捕食動物が近付い
てくると、脚をばたばた動かして追い払い、蛹を守ります。
こうして、ハチが成虫になって飛び立っていくまでの約1週間、
テントウムシは蛹を守り続けるのです。
寄生されたテントウムシの末路
体内を巨大なハチの幼虫に食い荒らされ、そのうえ1週間も
飲まず食わずで蛹のボディーガードをしていたテントウムシは、
そろそろ死んでしまうのではないかと想像できます。
しかし、信じられないことに寄生されたテントウムシの4分の1
が最終的に元の生活に戻ります。
そして、その奇跡の生還をしたテントウムシの一部は、再び
テントウハラボソコマユバチに寄生される可能性もあるという
皮肉な結果になるのです。
どうやってテントウムシを操るのか 寄生されたテントウムシ
は寄生バチの幼虫が体から出てからもなお自分の意思とは
関係なく寄生バチを守ろうとします。
体内に寄生している状態であればマインドコントロールされて
しまうのもわかりますが、体内に寄生バチがいなくなってからも
マインドコントロールは続きます。
なぜこのようなことが起こるのか、最近まで不明なままでした。
しかし、2015年の論文で、その謎の一部がわかってきました。
なんと、寄生バチは麻酔物質と一緒に脳に感染するウイルス
をテントウムシに送り込んでいたのです。
研究チームはハチに寄生されたテントウムシの脳はある未知
のウイルスに侵され、脳内がそのウイルスでいっぱいになって
いたことを発見しました。
寄生されていないテントウムシからはもちろんそのような
ウイルスは見つかりません。
研究チームはこの新規のウイルスを(DCPV)と命名しました。
テントウハラボソコマユバチはテントウムシに麻酔をして卵を
産み付ける際に、同時にこのウイルスをテントウムシの体内
に送り込んでいました。
そして、ウイルスはテントウムシの体内で複製を繰り返して、
その数を増やしていますが、この時点ではまだ脳まで広がって
おらず無害な状態でいます。
そして、寄生バチの幼虫がテントウムシの体内から出てくると
すぐに、ウイルスがテントウムシの脳内に入り込んで充満し、
テントウムシの脳細胞は破壊されていきます。
しかし、、ハチの幼虫がテントウムシの体内から這い出てくると、
このテントウムシの免疫遺伝子は抑制を解かれ再活性化します。
再活性化したテントウムシの免疫システムがウイルスに
感染した自分の細胞を攻撃しているのです。
そして、自己の免疫システムによって傷つけられた脳は、
新規の寄生バチにまた寄生された場合、再び麻痺すること
がわかっています。
・・・