貧者の一灯 ブログ

掲載しているお話は、当ブログには著作権はありません。
掲載内容に問題がある場合は、お手数ですが ご連絡下さい。

妄想劇場・歴史への訪問

2021年03月15日 | 流れ雲のブログ
















むかしむかし、深い海の底に竜宮(りゅうぐう)がありました。  

ある日の事、病気のお后(きさき)が、急にサルのきもを食べ
たいと言い出しました。  

サルのきもは、どんな病気でも治すと言われているからです。  
そこで王さまは、クラゲにサルのきもを手に入れてくるよう
に命じました。  

命じられたクラゲは張り切って、海の底からサルがたくさん
住んでいるサルが島へやって来ました。  

ちょうど一匹のサルが、波打ち際で遊んでいます。
「よう、サルさん、こんにちは」 「おや、クラゲくん、
いい天気だね」

「ねえ、サルさん。きみ、竜宮へ遊びに来ないかい? 
とってもいい所だよ」

「竜宮! 行く行く! ・・・でも、駄目だよ。ぼくは泳げ
ないんだもの」

「それなら大丈夫さ。ぼくの背中に乗せていってあげるよ」
「本当かい、うれしいなあ」  

サルは、すぐにクラゲの背中に飛び乗りました。  
クラゲは、スイスイ泳いで海の中へ。

「うわっ、海の中ってきれいだなあ」  珍しい景色にサルは、
ただうっとり。

「さあ、サルさん、もうすぐ竜宮だよ」  
少し間の抜けたクラゲは、うっかりサルに聞いてしまいました。

ところで、「ねえ、きみ、きもを持ってる?」
「きも? どうして?」
「竜宮のお后さまが、食ベたいんだって」

(そ、それでぼくを。・・・こりゃ大変だ!)サルはビックリです。  
きもを取られては、死んでしまいます。  

でも頭の良いサルは、少しも慌てず残念そうに言いました。
「そりゃ、あいにくだな。今日はお天気が良いから、木の上に
干してきたよ。クラゲくん、ご苦労だけど取りに帰ろうよ」

「そうかい。仕方がないや。じゃ、引き返そう」  
そこでクラゲは、またサルが島へ逆戻りです。  
島に着くと、サルは慌てて飛び降りて言いました。

「やーい、やーい、クラゲのお馬鹿さん。きもは木の上なんか
にありゃしないよ。ぼくの体の中さ。アハハハハッ」

「ええっ! 本当かい?!」  クラゲはくやしがりましたが、
もう仕方がありません。トボトボと、竜宮へ帰って行ったクラゲは、

「この、間抜けクラゲめっ!」 「お前なんか、消えてしまえ!」  
王さまや魚たちに、メチャクチャに叩かれました。  

クラゲが今の様に骨無しになったのは、この為だそうです。

・・・おしまい


鬼が餅つきゃ、閻魔が捏ねる、そばで 地蔵が食べたがる













手術中、まさかの「師匠からのダメ出し」

あなたが麻酔で眠っている間、手術室ではどんな会話が
なされているのか?

場合によっては、絶対に患者さんには聞かせられない
やりとりが行われている場合もある。

以前、知人に頼まれて骨折箇所の整復手術をした。
骨折に気づかず、ずれたままくっついてしまった箇所を元に
戻してほしいというのだ。

手術の際には事前にミーティングがある。定年退職した恩師
がたまに手伝いに来てくれるので、症例のプレゼンテーション
を行った。すると恩師がこう言った。

「お前、このケースは無理だよ。受傷からだいぶ時間が経って
いるじゃないか。これじゃ元に戻らないぞ。どうして外来のとき
に『これは治りません』と言わなかったんだ?
おれ、知らねーぞ」

いざ、手術本番。骨折の整復を試みる。師匠のおっしゃる通り、
くっついてしまった骨折部は全く動かなかった。横で恩師が
ブツブツ言う。

「だからダメだって言っただろう? どうすんだよ、おまえ」
「そんなこと言ったって、知り合いが私を頼って来たんですから、
『できません』なんて言えないですよ。
先生、手伝ってくださいよ。

えいっ! やーっ!」

「おれだったらやらない」
「もう手術は始まってるんですよ。お願いですから手伝って
くださいよ」
「無理だ。あきらめろ」
「そんなことできません。行きます、このまま、渾身の力を
込めたら「ポキッ」と音がした。曲がってくっついていた骨が
折れて、やっと元の位置に戻った。

できた! うまくいった! ほっとした。ふふふ、
やればできるじゃないか!
「師匠、どうです? 上手く戻ったじゃないですか!」

ドヤ顔で師匠の顔を覗くと、「たまたまだよ」という呟きと
冷笑が返って来た。結果、手術は成功し、患者さんは無事
退院していったが、このケースも、「聞かせられない話」
のひとつのパターンだ。

医師は黙って手術しているかと思いきや、実はこのように
いろいろな話をしている。もちろん、まじめに話していること
が多い。ほとんどは手術に関する所見を確認し、治療計画
を確認しあったり、後輩を指導したりする。

また緊迫した場面では話をする余裕もない。だが、出血や
持病などのリスクが少なく、患者さんの全身状態も良く、
良性の疾患で毎日のように行って慣れっこになっている手術
こういうときは、気軽におしゃべりがしやすい。

手術の前半では難しい操作や多少の出血があるので、
術者の体内にはアドレナリンが充満して興奮状態にある。
経験と共に、興奮状態にあっても冷静に手術を進められる
ようになるのである。

ところが、血を見た途端にやたらと興奮するタイプのドクター
がいる。予想外の出血があれば誰でも焦るが、大した出血
でもないのに血を見た途端に興奮して、助手や看護師を
怒鳴り始めるドクターがいるのだ。

「出血止めろ! そこじゃない! 早く! 早く! 何してんだ
……お、お前が悪いんだ!」

そんなに慌てなくてもよい場面なのだが、このタイプの
ドクターは往々にして偉そうにしていたいだけなので、
ひたすら「はいはい」と言って、言われた通りにすればよい。

だいたい、この手の外科医はあまり手術が美しくない。
手術が山場を越えると、緊張がゆるむ。一般におしゃべり
が始まるのはこのタイミングだ。

おしゃべりは以下の3つに分類できる。

(1) 真面目な話
(2) 悩み相談
(3) 患者さんに聞かれてはまずいもの

(1)は、学問、手術に関する一般教養についての話だ。
これは説明するまでもないだろう。

(2)のケースのおしゃべりは意外と多い。大学病院や大きな
総合病院では人の数だけ悩みも多い。人事に不満を
持っている者もいる。

まだ若く、がむしゃらに働いていた頃、ある先生の手術
の助手に入ったときのこと。

「君、最近どう? いっぱいいっぱいみたいだけど、
大丈夫か? 誰にでも好かれようと思わない方がいいぞ」

やさしい心遣いに、手術中にもかかわらず、涙がこぼれ
そうになったこともある。

若いドクターたちは自分の将来がイメージできないので
常に不安をかかえている。

「同級生がどんどん手術をやらせてもらってるのに、
僕だけ遅れをとってます。手術に当ててください」
「どうして僕が地方に飛ばされなきゃいけないんですか?」
「あんな准教授、終わってますよね」
などなど。どれも手術中でなくともよい話なのだが。

問題は(3)だ。手術にはふさわしくない不謹慎な話をする
ドクターがいるのだ。

「今日さあ、飲みに行こうよ」と看護師を誘って、手術が
終わったときには看護師の手を握っていた強者もいる。

これはたまらんな、と思ったおしゃべりもある。

ある若い先生が部長に手術を指導してもらうことになった。
その若い執刀医はカチカチに緊張している。執刀医のある
操作が気に入らなかったのか、指導医の部長にスイッチ
が入った。

部長は小声でこんなことを言い出した。
「お前、何であんな女と結婚したんだ?」
「はいっ?」
それから延々と「お前は女を見る目がない」というお説教
が続いたのだった。

全身麻酔の場合は患者さんが眠っているから、スタッフ以外
に聞かれることはないのだが、局所麻酔(部分麻酔=意識
のある麻酔)のときにもこういう話をしてしまうドクターがいる。

不謹慎な話を手術中にするから、患者さんに投書される。
教授や院長に呼び出されて厳重注意を受けるはめになる。
ドクターのキャラによるが、日頃の心がけが悪いとまた
繰り返す。

執刀医は真面目に手術しているものの、これは患者さん
に聞かれてはまずいな、というケースもある。

血管を広げる手術だとしよう。予定の手術はほぼ終えている
のに、予定外の血管も広げてあげようと親切心を起こし、
その血管を広げたら血管が破裂してしまった。

「あっ、しまった。余計なことをするんじゃなかった」
こんな叫びを聞いてしまったら、患者さんは当然不安になる。

また別のケース。骨折が複雑で固定が上手く決まらない。
執刀医は汗だくになりながら何度も何度もやり直し。
手術が終わったとき、その執刀医はこう言った。

「もうやだ! もうこんなオペやりたくないっ!」
これも患者さんから苦情が来た。

局所麻酔で行う手術は、患者さんの意識があるので、実は
患者さん自身も緊張している。手術中のおしゃべりは
必ずしも悪いことではなく、患者さんをリラックスさせるため
に話しかけてあげることが大切だ。

でも「大丈夫ですか?」だけでは患者さんも疲れてしまうし、
どう答えていいかわからない。一番良いのは患者さんと
一緒に話をすることだ。

「どうです? ドラマで見た手術室にそっくりでしょ? 
でもこっちが本物なんですよ。ただ、ドラマと明らかに違う
ところがひとつだけあります。それは何でしょう? 
それは、この手術にはイケメンドクターが出てこないことです! 

局所麻酔にからめてこんな話をしてもよい。
「麻酔の効きが弱かったら言ってくださいね」
「おれ、大酒飲みだから麻酔が効かないって言われた
ことあるよ」

「どんなお酒がお好きなんですか?」と言いながら、好きな
酒の銘柄などを話してもらって患者さんをなごませるのもよい。

ちなみにたくさん酒を飲むからといって、麻酔が効きにくく
なるということはない。ただ「酒飲みは麻酔が効きにくい」と
一般に信じられているので、麻酔が効かないときに責任を
患者さんに転嫁できるのだ。

麻酔が効かないのは麻酔を施したドクターが下手だから
なのだが、そんなときに患者さんが酒飲みだったりすると、
「やっぱりお酒を飲んでいると、麻酔が効きにくいんですよね」
と、自分の不首尾を棚に上げて、うまく逃げることが
できるのである。

いかがでしたでしょうか。
私、佐々木次郎と申します。「覆面ドクター」というタイトルに
したくらいですから、もちろんペンネームです。・・・