「カクザイって、握ってると、後で手ェ離そうとしても ガチガチで、離せなくなるんですよ」
「・・・火炎ビンとか投げたりしました?」
「う~ん、そーゆー話はまあ置いといて(笑) え~と、何科なんですか?」
「何科?」
「お医者さんなんでしょ?」
「ううん、私は医者じゃなくて・・・ なれなかったんです。あ、でも 卒業だけはし . . . 本文を読む
映画の冒頭、幼い娘と相手をする母親の映像が続く。淡い光、優しい音・・・切ないほど一生懸命娘を見つめる母親の瞳に胸を衝かれ、「(かつての)私なんかと全然違うなあ。大事な子で、この人もいいおかあさんなんだ」などと思いながら見ているうちに、子どもは病気で亡くなったのを知る。「ああ、そうだったんだ」その後に続く現在の母親の日常、その佇まいが、どちらかというと暗く寂しそうに見えるせいで、私はきれいにダマサレ . . . 本文を読む
13年前。今はなくなってしまった映画館で。
「アンタも来ちょったんやね。うちら、後ろの方で観ちょったき気ィつかんかったやろ」
・・・映画お好きなんですか?
「うん。ここも時々来るよ。今日のはアンタ、どーやった?」
・・・う~ん、まあまあかなあ。
「実はうち・・・最近、姉が亡うなってね。乳がんやったんやけど、なんかしてやりとうても何したらいいんかわからんで」「それで、死んでからもずっと考え . . . 本文を読む