気が付くともう8月。日本の学校では夏休で、子供たちは皆楽しそうに過ごしていることだろう。ミャンマーの学校ではこの時期も毎日授業があるので、本センターでも普段どおりの時間が流れている。
つい最近、1学期中間テストをした。学生たちにとって、入学後最初のテスト。人によっては、生まれて初めて受ける学生もおり、そんな場合はテストの意味や受け方も教えている。
本センターに集まってくる学生の年齢や出身学校・過去のバックグラウンドは様々。クラスマネージメントはけして容易ではないが、限られた環境の中で、1日1日、いや1時間1時間の授業に真剣勝負で向き合っている。そして、学生たちも最高のモティベーションで答えてくれている。
私が学生たちにいつも言い続けていることの一つが、「その日その日の小さな一歩を積み重ねること」。どんな小さな一歩でも良い。
例えば、解剖学で取り扱う骨の名前一つ覚えるだけでもすばらしい。授業を受けるまでは全く知らなかった学生の口から、次の日に復習をすると前日教えた骨の名前が元気な声で飛び出す。またその数日後、実習の時間にマッサージをしながら、「先生これはあの骨ですね」と学生自ら座学と実習を結び付けたような発言をしてくることもある。たかが骨の名前一つだが、これが立派な教育効果だ。
これらの積み重ねが、知らぬうちに大きな力となり、自立の糧になる。そして、この国の視覚障害者にとって遠い話だったはずの「経済的・職業的自立」が、クヲリティーを持った医療マッサージに関する知識・技術と共に現実の物となる。
現在、本センターで学んだ学生たち20数名はミャンマー全国の盲学校に戻って、教員として後輩たちの指導に当たっている。そんな彼らもセンター新入生の時には同じ道を辿り、0の段階から毎日の小さな一歩を積み重ねてきた。当時苦戦していた彼らの姿が懐かしい。
この6月に新しくセンターへ入ってきた学生たちも、未来の自分を自覚しながら自立へと繋がる小さな一歩を積み重ねてくれることを信じている。
塩崎