ミャンマー視覚障害者医療マッサージトレーニングセンターの日々の記録 「未来に向かって」

NPO法人「ジャパンハート」が、ミャンマーの視覚障害者の社会的自立を目指して立ち上げた新たなプロジェクト

「第1回ミャンマー医療マッサージ師資格試験」

2013年02月28日 | 日記


2月23日、本センターを会場にミャンマーで初となる「第1回ミャンマー医療マッサージ師全国統一資格試験」が行われた。
これまでミャンマーの学校では、解剖学・臨床医学等の医学的知識は皆無で、実技中心のマッサージを短期間で教えていた。
指導期間・指導内容も各校まちまちで、それぞれの学校から修了証明書が交付され、マッサージ店等で勤務しているのが現状だった。
このようなミャンマーの状況を初めて見て以来、私はなんとか教育と資格試験をセットにした仕組みを作れないだろうかとずっと考えてきた。
たとえ視覚障害者と言えども、実社会に出ればプロのマッサージ師としての資質を求められるし、そうでなければ本当の職業人とは言えない。

そこで、本センターでの医療マッサージ教員養成と並行して、現地政府当局・全国盲学校等関係機関との協議を重ねながら、この国に根差した医療マッサージに関する教育や資格試験のシステム作りにも取り組んできた。ジャパンハートヤンゴン事務所担当者にもネピドーに何度も足を運んでいただき、現地の理解を得て実現した全国標準教育カリキュラムの導入と今回の資格試験。

当日は、ミャンマー各地の盲学校医療マッサージコースで2011年度より2年間、本センター卒業生たちの下で学んできた受験生がヤンゴンに集い、座学と実技からなる全国共通の統一試験に臨んだ。試験は、座学・実技共に、2011年度に導入した「ミャンマー盲学校医療マッサージ科全国標準教育カリキュラム」内から全て出題した。更に、合否判定は、予め作成した評価基準に基づいて客観的に行った。
こんかい受験生の引率教員として着いてきていたのが、今は母校の医療マッサージ担当教員として活躍している本センター第1期卒業生。2年前は本センターで学んでいた彼らも、今回は全国統一資格試験を受験する生徒に付き添ってきた。

生徒たちに囲まれてうれしそうな私の教え子たち。試験開始ぎりぎりまで受験上のアドバイスをしたり、休憩時間に自分の生徒の所に差し入れの水片手に近寄って「難しかった?」、「ちゃんと答えられた?」と心配する姿は、盲学校の教員そのものだった。

今回の合格発表は、3月1日。合格者には、将来正式な免許化を前提としたミャンマー政府公認の「医療マッサージ師推薦証明書」が授与される。そして、合格後は、有資格者の立場で1年間出身盲学校付属のマッサージ治療室で臨床実習を行い、2014年2月に盲学校医療マッサージコースを卒業できる仕組みにしている。

今後、本プロジェクトが終了した後も、この仕組みをミャンマー現地の関係者がしっかりと引き継ぎ、更に発展することを切に願っている。それが、結果的にミャンマーにおける視覚障害マッサージ師の質と経済的自立・社会的地位をより強固にすることになり、同時に、ミャンマーに住んでいる方々に質の高いマッサージ施術を保証・提供することに繋がると思う。
現在、無秩序ではと思ってしまうほど急速な勢いで世界中からの投資が加速しているミャンマー。10年後・20年後「気付いたら全て市場を奪われ、路頭に迷う視覚障害者」。そんなシナリオはだれも望んでいないはずだ。
    塩崎