ミャンマーの子供たちにとって楽しかった長い休みももう終わり、明日から学校が始まる。
この長期休み中も私は、昨年度の整理や新年度の準備、日本への一時帰国や地方盲学校への巡回など何かとあわただしかったが、授業がある次期に比べると少しは時間が取れた。そのため、普段よりもゆっくりと社会の状況にも眼を向けて色々なことを考えた。
最近マスコミでも度々眼にするようになったミャンマー。昨年の新政府発足後、新しい国づくりが着々と進められている。
私が住んでいるヤンゴンもものすごいスピードで変わりつつある。本当に驚異的な勢いと盛り上がり様で、若者を中心に人々は浮かれ、ある意味こちらが不安になることもある。
車の数が急増し、渋滞の中我先にと行こうとするクラクションの音が絶えない。また、次々とオープンする新しいショッピングモールは、消費欲を持った大勢の人々でごった返し、珍しい新商品が飛ぶように売れる。「どこからそんなお金が出てくるの?」とつい思ってしまうほど、ミャンマーの人たちの消費力には驚かされる。正に好景気。これまで民族衣装の巻きスカートが定番だった服装もみるみる西洋化してきている。
一方、町のタクシードライバーの多くが値切り交渉には一切応じなくなり、無理に値切ると驚くほどの対応の悪さ ・・・。供給不足の外国人向けホテルや住宅賃料も今や日本の都心部並みに急上昇し、払えなければ住むところがすぐに全くなくなるような状態だ。
発展することは大いに歓迎できるが、ミャンマーも国際社会の他の国々が経験した同じ道を辿るのかもしれないと思うと何だか寂しい。
私がミャンマーに着たばかりのころ、ある日40℃近くの中で停電になってエアコンも扇風機も長時間完全に止まってしまった。初めて経験するあまりの暑さに、センターの床に張り付くようにぐったり横になり涼んでいた。そんな時、頼みもしないのに言葉も通じないのにミャンマー人が1杯の水を持ってきてそっと差し出してくれた。冷蔵庫も止まっているので冷えてなんかいないが、これまで飲んだどんな飲み物よりも美味しいと思ったことを今でもはっきり覚えている。そして、「ミャンマーの人たちはなんてやさしいんだろう ・・・、ミャンマーの人たちのために少しでも力に慣れたら」と純粋に感じ、ここでの生活の大きなエネルギーになったことを思い出す。でも、こんな人の心の美しさも社会の発展の波に飲み込まれながら、物質的・金銭的な豊かさと共にいつしか消えてしまうのだろうか ・・・。時代の波に翻弄されるのではなく、ミャンマーの人々がずっと大切にしてきた信仰心の深さ、神の前に自己を律し他人を敬う心、そんな大切な忘れ物をしないことを願っている。
さて、今週は新入生が全国各地からセンターに到着し、来週からは授業を本格的に始める。こんな社会状況だからこそ、「ミャンマーの視覚障害者の職業的・経済的自立の基盤となる医療マッサージ教員の養成をする」と言うプロジェクトの基本コンセプトの元冷静に未来を見つめ、今年も教室で1日1日着実に学生たちの指導に当たっていくつもりだ。
塩崎