冥土 in Japan -メイドインジャパン-

闘病記録を後悔ブログとし、
更なる病人の参考に供せむとてすなり

巷では低体温症云々…

2009年07月18日 20時01分29秒 | 雑感

そうです。北海道の大量遭難事故の件。
これからきっと、『低体温症になったらxx』なんて評論家がゾロゾロと出てくるでしょう。
そして浅知恵をばら撒くわけです。

低体温症は現地での対策は不可能。
なぜなら『低体温症を発症した事』が認識できないからです。
物理的に、医学的に、「ああすれば」「こうすれば」という対策がない訳じゃない。ちゃんとあります。

でも、体温が下がると脳の活動が低下してしまい、認識能力も思考能力も極度に落ちてしまいます。
低体温症発症時は必ずこうなっていて、まともな時の状態の脳みそじゃないのです。

低体温症が怖い理由はまさにこれなのです。
何が起きたのか理解できないけど、いやに体が重い、動くのがキツイ…といった感覚しかないのです。
特に山歩きのように「疲労が当然」の状況では「あ、疲れたな」と勘違いしやすい。

この時、それが疲労ではなく(極度の疲労でも経過は同じになりますが)、低体温症の初期症状だった場合、すぐに体温調節機能が麻痺し、皮膚の下の毛細血管が収縮して熱が奪われる事を避ける反射が起こらず、皮膚から熱が逃げ放題になります。
また、脳も認識・感覚ともおかしくなって筋肉を震わせて熱を出す、産熱運動をしなさい、という命令を出さなくなってしまい、震えはとまってしまいます。
思考がおかしくなってるので「寒い」という感覚も失われます。
こうなると後は死ぬまで「変だな?」で動き続けて倒れ、たちまち冷たくなる、という事になります。

物理的な対策は認識さえできればいくらでもあります。
手足をさするのは摩擦熱という意味ではほとんど無意味ですが、感覚を保つ、手足を動かす事で産熱運動を促す、という意味があります。
他にもとりうる対策は風や雨を避けるだとか、いくらでもあるけど、それに気づかない、その恐ろしさが低体温の恐怖なのです。

何で私がこんな事を書けるのか…実は私も数ヶ月前、34度という体温を体験したからです。
私の場合は病気で体温中枢が一時的に麻痺したものですが、とにかく体が重くてしんどい、熱でもあるんだろう、と体温計を取り出して計ったら、体温計がぜんぜんあがらない(そこまでメモリがない)、さては体温計が壊れたか?と思って料理用温度計で測ったら本当に34度。

病院や救助のプロが現地に行っても、自分が低体温症を発症した時、正確に認識できる人は非常に少ないと思います。

こういう病気ですから、今回の対策は『撤退』以外なかったはず。
その時「寒い」あるいは「疲れた」といった人がいたか、それをガイドが認識していたか、ガイド自身が低体温症を発症していなかったか、というのが、程度は低いけど、実際に体験した私から見たポイントです。


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