観てきた感じでは、ミュージカルと言うよりもオペラに近いと思いましたね。
すごい声量での朗々たる歌いっぷりはオペラでしょう。
タイトルは「悲惨な人々」という意味のようですが、
特にオープニングからの悲惨さなんぞ、
逃げ出したくなるほどにヘビーな場面の連続で、
エエェェ・・・ちょっと間違えたかな~と思いました。
序盤は”二回も見に来る人の気がしれないな”どと思いつつも、
我慢して観ていると、だんだんその悲惨さにも慣れて来て、
物語展開の中にズンズンと引き込まれて行きました。
全体的には、キリスト教的世界観に貫かれた、
罪と償いと愛と救済の物語といったところでしょうか。
最後にはホッと救われた気持ちになって、劇場をあとにした事です。
主人公ジャン・バルジャンは悲惨な人生を次次に味わい尽くすのですが、
慈悲深い神父との出会いで、善意と不屈の精神を持った人物となります。
努力の結果、一時は富裕な実業家兼市長にまで上り詰めます。
しかし、追跡者ジャベールから身を隠した時に、
彼の経営する会社の女工である貧しいファンティーヌの窮地を救えませんでした。
後にファンティーヌの死の床に居合わせ、彼女からその事実を知らされて、
何としてもその娘コゼットを養父母から救い出し、立派に育てると約束します。
首尾よくコゼットを救い出した後は、バルジャンの地位と名誉は消え失せ、
再び逃亡生活を、しかも二人での逃亡生活を余儀なくされます。
時は過ぎコゼットは美しい娘へと成長しますが、
やがてマリウスという青年と運命的な恋に落ちます。
恋と革命の板挟みに悩むマリウスはバリケードの決戦に身を投じます。
コゼットの思いを知ったバルジャンは、身を賭して窮地のマリウスを救い出しますが、
犯罪者の汚名を背負っている彼は、娘の幸せを願って身をくらますのです。
しかし彼の最後は修道院で二人に看取られながら、魂の救済を受けつつ召されてゆきます。
ついつい筋書きを追っかけて書いてしまいましたが、
主人公以外の人々も、それぞれの悲惨な運命を背負わされており、興味深い人生が描かれます。
特に主人公を執拗なまでに追跡してゆく、敵役のジャベールは、
当初は残虐な役人かと見えますが、実は厳格に法律を信奉する真面目な役人。
最後には、バルジャンの寛容な態度で命を救われるという経験を経て、
自分の従来の生き方の間違いに気づいた時、自ら命を絶つに至ります。
貧しい中で娘を養女に出さざるを得なかったファンティーヌは、真実気の毒な身の上。
娼婦となりボロボロになって死んでゆく姿は正視に堪えない場面でした。
その娘コゼットの少女時代は、絵にかいたような養父母の虐待を受けますが、
ファンティーヌのいまわの頼みを果たすバルジャンに助け出され、美しい娘に成長します。
一方、救いようのない悪人の養父母達、その親に似つかわしくない娘エボニーヌなど、
それぞれの人生をじっくり想像してみると、味わい深いストーリーが沢山仕組まれています。
時代背景はフランス革命の後の王政復古の時代です。
人々は貧しく、真面目な若者たちがバリケードを築いて権力者への反逆を決行します。
コゼットの恋人マリウスは貴族の家柄ながら正義感に厚く、恋との板挟みの中で、
その怒れる若者集団に加わって権力に立ち向かいますが、力の差は歴然としており総崩れ。
しかし、あわやのところをバルジャンに救われ、コゼットと結ばれて幸せな結婚生活へ。
物語はバルジャンの死で終わるので、彼らのその後は分かりませんが、
まだまだ続く時代の変転の中で、どんな人生が待ちうけていたのだろうかと思います。
160分の映画がそれほど長くは感じられず、
もっと続きを知りたいなぁという欲求に駆られています。
・・・余談・・・
2・3年前にNHKで新三銃士という人形劇をやっていました。
お話の展開、登場人物のキャラクター設定が似通っている印象を受けました。
憎たらしいが憎めない悪人とか、二転三転する筋立てとか、
ともにフランスの作家であることが、作品の共通性を生んでいるのではないでしょうか。
貴殿の明解、詳細な解説にはいつもながら感心させられます。名曲ばかりですが、好きなのはエポニーヌの歌う「オン マイ オウン」いじらしい女性心を歌った名曲です。こんな優しく哀しい女性があの極悪夫婦の娘なんて・・面白い。
余談ですが、これはお1人で見に行かれたのでしょうか。
あの人あたしをいらない 幸せの世界に縁などない
愛してる 愛してる 愛してる でもひとりさ
本田美奈子 歌
岩谷時子 日本語詩
おそらく、この出会いは無かったと思います。
強い印象の映画でした。
話に馴染んでくると、ほとんど歌とは思わずに
ストーリーを追っかけていました。
エポニーヌはちょっと気になる人ですね。
二回見に行く人は、やっぱり本当に
歌を聴きに行く人なんでしょうね。
ところで、4月からレミの新メンバーでの公演が、
帝国劇場から始まり、名古屋にも来るんですね。
どうしようかな・・・。
歌と思わずストーリーに引き込まれたことはきっと監督の演出の狙いが当たったのかもしれませんね。出演者も歌うというよりも台詞を語ることを意識していたみたいなコメントもあったようですし。この映画でまた、よりコンサートのチケットが取りにくくなるかもしれませんね。