ロンドンを間もなくして去るその日々
・昭和43年11月4日(月)晴れ(査証の取得等、旅への準備)
今日は珍しく晴れた。その前はいつ晴れたのか、分らない程だ。多分、私がウェールズから帰って来て以来ではないか。念の為、日記を調べたら9月20日以来、45日振りの晴れであった。毎日毎日どんよりとした曇りか小雨では、気分も滅入っていた。しかし久し振りに晴れたので、今日は何となく気分が良かった。
昨日、家族や友達へロンドンから最後の手紙を書いて過ごした。私は字も文も下手なので、手紙を書くだけで1日掛りであった。
手紙と言えば、私の友達の1人N君へ、「ロンドンを去る」と手紙を書いたら、10月15日付けで彼から返事が届いた。彼からの手紙はいつも楽しく、心がこもっていた。そんな理由もあり、彼は私の良き理解者である、と勝手に私は思っていた。そんな彼からの手紙の一部が、私の心に強烈な印象を与えた。
彼は自分に代わって、私にイギリスで何かを掴んで貰いたいと期待し、或は何か望んでいたようであった。そんな彼は私がイギリスを去り、その足で帰国する、と思っていた。
私は憂鬱なロンドン生活の中で、先輩や友達からの手紙に随分助けられ、癒されたのは事実でした。
話は変わるが、8月の下旬から寒かったが、今まで気温の方はあまり変化なく、平均を保って来た。しかし秋が深まり、近頃とても寒くなって来た。冬が間もなくやって来る、そんな気温・季節の変化を感じるようになって来た。日中、街を歩いていたら、店の前に温度計があったので見たら6度であった。ロンドンは、北海道の札幌と同じ緯度であるが、北に位置する割には、寒くないのだ。
所で、私は陸続きでシンガポールへ行く予定であるので、査証用の写真、行先の査証申請、、旅券欄に行き先国名の追加記入(これは、後になって教えられた事)、予防接種、道路地図購入等、これからの旅の準備でやらなければならない事がたくさんあった。
今日、トルコの査証を取りに大使館へ行ったら、「ここではなく、領事館の方でやっている」と言われ領事館へ行った。そこへ行ったら館員に、「観光目的で3か月以内の滞在なら査証は、必要ありません」と案内された。
次にシリア大使館へ行ったが、閉鎖されていた。シリアは脇道の国、それほど重要視していないので取れなくとも構わないと思った。ただ、心変わりして行く可能性を案じての事だけであった。
お昼時になって腹も空いていたが食べずに、イラク大使館へ行った。イラクもシリアと同様、トルコ、イランからインドへ向かってのルート上にある国ではないが、チグリス・ユーフラテス文明の地を訪れたくなるかも知れないので、一応取っておく事にした。そんな理由で、イラク大使館へ行って手続きをしたら、「明日出来る」と案内された。