2021年2月13日、雪が降り積もったベラルーシでは除雪後の雪の山に白赤白の旗を立てたりやっぱり雪だるまデモ隊を作って反政府活動を続けています。
ベラルーシ野党のラトゥシコ氏は、「すでに1090人の役人がルカシェンコ大統領の辞任を求める公開書状を提出することに支持表明した。」とロシアの独立系メディアで発言しました。
つまりルカシェンコ大統領に近い位置にいるはずの人物1000人以上が、実はもう早く大統領をやめてほしいと願っているということです。
ベラルーシ政権内に歪みが生まれているということでしょうか。
一昨日、昨日と全ベラルーシ国民会議で大統領が演説をして、選出メンバーは万雷の拍手を何度も送っていましたが、その人たちの中にも実は辞任してほしいと思っている人が混ざっていたかもしれません。
反政府活動は大統領の強権によって抑えられ、ルカシェンコ大統領も安泰(少なくとも新憲法改正までは。)という見方をされていますが、実際には、今国外にいる野党は5月までに帰国する、刑務所で服役中のババリコ氏は、自分は新生ベラルーシの大統領になる準備ができている、などと最近も発言し意気盛んです。
昨日の全ベラルーシ国民会議の席上でルカシェンコ大統領は、ババリコ氏に唾を吐きかけたかった、経済は政治に首を突っ込むものではない、と発言しました。ババリコ氏が元銀行総裁で、経済の専門家だからでしょう。
ババリコ氏が昨年の大統領選挙に立候補しようとしていたのを大統領に阻止されたのは、逆に言うと、最も有力な候補だったからです。どうして最も有力な候補だったかと言うと、経済の専門家だからという理由です。ババリコ氏に一票入れようと思っていたベラルーシ人は、つまり人権云々より、ベラルーシの経済状況(終わらないインフレ、経済格差、不景気)などに終止符を打ってくれるのではないかとババリコ氏に期待していたのです。
ババリコ氏は立候補手続きもできないまま、逮捕されてしまいましたが、チハノフスカヤ氏のことは、ただの英語教師、ブロガーの妻、女性、ということでルカシェンコ大統領は甘く見ていたのです。そうでなかったら、チハノフスカヤ氏も立候補すらできないようにしていたでしょう。その後チハノフスカヤ氏は野党のシンボルとして世界的に有名になり、ノーベル賞候補にまでなっています。大統領の誤算ですね。
一方でチハノフスカヤ氏は、自分が大統領になったら半年以内に大統領選をやり直す、としています。そのときにはババリコ氏が立候補できますから、チハノフスカヤ氏よりババリコ氏が選ばれる可能性が高く、チハノフスカヤ氏が大統領に就任していた期間は1年もないのでしょうか。
来年初め、国民投票により憲法が改正されたら、辞任するとルカシェンコ大統領は表明しています。実際そうなるとして、次の大統領はどのように選ぶのか、まだ明らかではありません。
ルカシェンコ氏が現時点ではっきり言っているのは、ベラルーシは大統領制共和国という政治体制を継続する、という点です。憲法改正後、ルカシェンコ氏の辞任に伴い、大統領選挙をするという流れになるでしょうが、野党からの立候補は認めない(チハノフスカヤ氏もババリコ氏も立候補できない。)大統領の側近の中から立候補者が数名出て、その中の1人が選ばれるという結果になりそうです。
辞任に際して、ルカシェンコ大統領は新しい規則「大統領職にあった人を保護する法令」を作成するでしょう。内容は「元大統領にはこれこれの額の年金が支給される。」「大統領時代に得た財産、特に不動産をずっと持ち続けることができる。」「死ぬまでボディーガードがつく。その経費は国家予算から出す。家族も同様。」「元大統領を逮捕することはできない。当然裁判にかけることもできない。何の罪にも問われない。」・・・とまあ、政治について素人の私でも、すぐにこれだけ出てきます。要するに死ぬまで特権を保持しようとするでしょう。自分の側近が次期大統領になったら、裏で政治を操る黒幕政治家になり、「ベラルーシのトップは今もやっぱりルカシェンコ前大統領なんだよね。」とみんなが噂する・・・そんな国になるかもしれません。
来年の憲法改正後のベラルーシはどうなっているでしょうか。今からおよそ1年後ですね。