名誉毀損事件において、違法性阻却事由が適用された主な判例を以下に挙げます。
1. **昭和41年6月23日 最高裁判決(昭和37(オ)815)**:
この判例では、名誉毀損行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的で行われ、摘示された事実が真実であると証明された場合、その行為は違法性を欠き、不法行為には該当しないと判断されました。 ([courts.go.jp](https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57744&utm_source=chatgpt.com))
2. **平成9年9月9日 最高裁判決**:
この判例では、事実の摘示と意見・論評の区別について詳細に検討され、意見・論評が公共の利害に関する事項であり、公益を図る目的でなされ、前提となる事実が真実であると信じる相当の理由があり、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱していない場合、違法性が阻却されると判断されました。 ([shinginza.com](https://www.shinginza.com/db/01976.html?utm_source=chatgpt.com))
3. **平成8年2月28日 東京地裁判決(研究社英和辞典名誉毀損事件)**:
この事例では、英和辞典の誤りを指摘する書籍の出版が問題となりました。裁判所は、論評が公共の利害に関する事項であり、公益を図る目的で行われ、前提事実が主要な部分で真実であり、論評が人身攻撃に及ぶなどの域を逸脱していない場合、名誉毀損の不法行為は成立しないと判断しました。 ([isplaw.jp](https://www.isplaw.jp/vc-files/isplaw/provider_mguideline_ex_m_20210330.pdf?utm_source=chatgpt.com))
これらの判例は、名誉毀損における違法性阻却事由の適用基準を示しており、公共性、公益目的、真実性、そして意見・論評の場合には非逸脱性が重要な要素とされています。
名誉毀損において違法性阻却事由が適用されるための基準は、主に以下の3つの要件に基づいて判断されます(**最高裁昭和41年6月23日判決**を基にしたものが代表的です)。
1. **公共性のある事実に関するものであること**
- 問題となる事実の摘示(主張や報道など)が、公共の利害に関わるものであることが必要です。
- 例えば、政治家の不正、公共機関の運営など、社会的関心の高い内容であることが該当します。
2. **専ら公益を図る目的で行われたこと**
- 発言や行為が他人を中傷することを目的としたものではなく、社会の利益を図る意図があるかが問われます。
- 単なる悪意や個人的攻撃であれば、違法性阻却事由の適用は難しくなります。
3. **摘示した事実が真実である、または真実と信じるに足る相当な理由があること**
- 摘示された事実が客観的に真実であることが重要ですが、完全な真実でなくても、真実と信じる合理的な理由があれば違法性は阻却される可能性があります。
- 真実であると証明できない場合でも、合理的な調査や裏付けが行われていれば適用されることがあります。
**論評の場合**
- 事実の摘示ではなく意見や論評に基づく名誉毀損の場合、次の基準も適用されます。
- 公共性や公益目的があること。
- 前提となる事実が真実か、真実と信じる相当な理由があること。
- 論評が人身攻撃や誹謗中傷の域を逸脱していないこと。
これらの要件をすべて満たした場合、名誉毀損であっても違法性が阻却され、責任を問われないことがあります。