新潟久紀ブログ版retrospective

新行政推進室14「足跡を残せて満を持しての異動内示は…」編

●足跡を残せて満を持しての異動内示は…

 行政改革を担当する部署というのは、既往の各職場においてやるべき内容を取りまとめたあとはそれを引き継ぎ渡し、定着の道筋を着けたら閉じるもので、その部署そのものが職員を抱えて永く存続すべきものではない。それは仕事のための仕事を増やすことにも繋がりかねない。だから、新行政推進室も2年か3年限りの時限的な職場だ…。初代室長は就任早々そう話していた。
 そのことが何時も頭にあったので、とにかく限られた期間内に目に見える成果を追い求めてきた3年間だった。県行政創造運動基本構想の取りまとめへの参画と自作イラストによる普及啓発リーフレットの作成、県庁ほぼ全ての行政手続きを総点検して処理期間の短縮や添付資料の簡略等を年次計画にまとめた「行政手続簡素化計画」の取りまとめ、「窓口サービスの質の向上のための指針(サービス指針)」と「県民サービスの質の向上のためのチェック項目」策定に「県民参加型手法推進ガイドブック」の制作。目に見える形で残せるものを仕上げられたと思う。担当に裁量度を高く持たせてもらえる"スタッフ制"という組織体制の試行的運用の下で、度量の大きい室長にも恵まれたことは、30歳代前半の実務者として、一番活動したい年頃において、とても幸運であったと思う。
 平成13年2月。例年、次年度の組織改正が発表される場面において、予想に反して新行政推進室の改廃は示されなかった。組織機構改革など重い課題の検討が続けられていたということもあったのかもしれない。ただ、私は自身の担当業務において、この職場で思い残すことは無いと思っていたし、人事のサイクル的にも異動がありえる年齢と経歴だ。県の仕事とその進め方はどうあるべきかという事を考え続けた3年間を経て、県職員を目指した頃を改めて思い起こし、産業政策など郷土の利活用を促進して県勢を増強するような仕事に関わりたいと考えていた。
 そんなあれこれを日々考えているうちに3月の半ば、人事異動内示の日は訪れた。室長補佐が異動対象者を順次呼んで新たな職場を告げていくのは県職員14年も経てば見慣れたものだ。末席の私の名前が最後に呼ばれた。
 「財政課に異動となります」。「ええっ」と思わず声が出て腰が引ける。各部局からの予算要求を厳しく査定する財政課に異動とは。バブル経済崩壊以降の財政状況厳しい中で、部局との渡り合いはけんか腰で、時間のある限り要求案をどこまで削ることができるか詰めていき、"新潟県の財政課は斬る財政課"と異名を漏れ聞くあの財政課か…。残業はエンドレスと言われ、現代ならばさしずめ"ブラック"といったあの財政課か…。そこは無いだろうなとノーマークだった私は軽いめまいを感じた。
 「ハッ」と考えてみると、目の前で内示を言い渡した補佐は財政課のOB。仕事中心の生き方を嫌う若い職員が増えていて、今で言うワークライフバランスが重視され始めた中で、予算の査定権限を握り役所の中で最上位とされて羨望の眼差しで見られていた財政課は、今や"行きたくない早く出たい職場"の最上位になってしまっている。いつか補佐がそんな話をしていたことを思い出す。公金不適正支出問題対応の怒涛の残業を乗り越え、一風変わった発意や実践の数々が、過酷職場でも持ち堪えられるだろうと上司に思わせたのか。それとも単に、上司だろうが臆せずモノ言う生意気だった私を厳しい環境で更生させたくて内々に推薦したのかもしれない。
 それにしても、ただでさえ超過酷職場と言われている財政課のこれからを考えると、バブル経済崩壊後の税収不足の一方で経済対策として累次の財政出動が続き、県財政の貯金は払底しそうな危機的な状況にあると議会の議論や報道がかまびすしくなっており、そんな渦中に飛び込むのは、気が重くなるばかりだ。
 そして、私の財政課行きと同時に、室長がその財政課と人事課を配下に置く総務部長に就任するという。部局長の中のトップだ。そしてこの人も財政課勤務を長く経験していた。室長時代はその度量の大きさの下で随分と自由にさせてもらえたなどと以前のんきに記述したが、実は時折、徹底的な厳しさでやり込められてぐうの音も出なくなることも少なくなかった。そんな人を更に高い地位に置いて厳しい査定業務に臨まなくてはならなくなるのだ。更なる暗雲が垂れ込めるかのような前途に、"私をどうしてくれようというんだい"と万歳したくなる2001年3月。気づけば"21世紀"最初の春の到来なのだった…。

(「新行政推進室14「形を残せて満を持して待った異動内示は…」編」終わり。「新行政推進室15「【番外編】同郷の上司はクセが強い」編」に続きます。)
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