新潟久紀ブログ版retrospective

新行政推進室9「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その2)

●恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~(その2)

 自分の思いに合致するISO9001を探し当てたというのに悩ましさが募るばかりの折り、行政、経営、品質などなどキーワード検索によるネットサーフィン(死語か?)で別の単語が目にとまった。「経営品質賞」って何だ??
 「いかにお客様本位の仕事の進め方をしているかを競い合いながら、お互いの経営水準を高めていこうという趣旨で創設されたもの」だという。1987年に当時のマルコム・ボルドリッジ商務長官が中心となり制定した「国家品質改善条例」が元になっているらしく、起源を辿ればアメリカ経済市場を席巻した日本や欧州の企業への対抗心が根底にあるというから何とも数奇な巡り合わせを感じる。日本の地方の一自治体の小役人が今、日本憎しと講じた米国の制度に教えを請おうとしているのだから。
 米国産業界に苦汁を飲ませた日本企業も、奢れるものは久しからずの例えの通り、バブル経済の崩壊でガタガタになってしまった。気がつけば根強く息の吹き返しに転じる米国企業に再び学ぶ番だとばかり、日本IBMが中心となって、制度を翻訳し、「日本版の経営品質賞」が設けられ、普及に乗り出し始めたというタイミングであった。
 「日本経営品質賞」は8つの審査基準で構成されている。一つ目は「経営幹部のリーダーシップ」と題して、21世紀の企業経営として進むべき方向(社会責任と顧客志向)を経営幹部がどのようにとらえ、どのような方法で確立し、それわ浸透させるかという"仕組み"を審査するもの。二つ目は「情報共有化と活用」で、企業の進むべき方向に関する情報の共有化とそれを活用する"仕組み"を審査するもの。三つ目は「戦略立案マネジメント」として、一つ目で示す企業として進むべき方向をどのように戦略計画に取り入れ、展開するかという"仕組み"を審査する。四つ目に「学習マネジメント」で、企業の進むべき方向に個々人及びチームとしての社員が、創造性を発揮して仕事を進めるためにどのような方法をとり、展開するかという"仕組み"を審査。五つ目は「プロセス・マネジメント」で、企業活動におけるすべてのプロセスが企業の進むべき方向をどのように採り入れ、それを展開するかという"仕組み"を審査する。六つ目は「顧客関係マネジメント」として、顧客の要求や期待をどのように把握し、それを展開する"仕組み"を審査。七つ目は「事業活動の成果」をどのように把握し、評価、改善しているかを審査。八つ目に「顧客価値の創造」をどのように把握し、それをどのように評価・改善するかを審査する。各々の項目に80から200の配点が課せられていて、総合得点で競いあわせるという制度のようだ。
 ISO9001に比べて経営品質賞について敢えて長々と書き出して見たのは、ISOが製造業の品質管理をベースとしているということを記せばおおよその規定の項目並びや無内容が空でイメージできることに比べて、経営品質賞は8つの表題を記しただけでは中々審査内容がイメージしにくいと考えたからだ。同じ顧客満足を目標として「高い品質の確保」を求める制度であっても、見た目がこうも大きく違うものなのかと思う。
 ISO9001はスイス発祥で欧州から展開されてきたもので、その造りは仕事のプロセスの自然な流れに即して明確に限定列挙された規定集であり、型にはまるかどうかで評価しようという、いわば「規定演技」のイメージだ。それに対して、経営品質賞の造りは、骨太の論点を掲げるのみで、具体的な善し悪しは論証内容次第という、いわば「自由演技」のイメージで、もともと欧州主導で国際的に標準化されることを良しとせず、自らの決め事で世界を回したいという米国流志向を背景にISOへ対抗する制度として構築された経緯があると噂に聞くから面白い。
 ISO9001と経営品質賞。普通であれば拮抗する2択を前にしたとき、どちらを活用するか悩ましくなるところだ。しかし、ISO9001の活用を考えたとき、製造業をベースとする堅苦しい点検項目の多さが、とかく"面倒くさがり"や"うるさ型"の多い県職員達らに、入り口で食わず嫌い的な拒絶反応を起こさせるのではと心配していた私は、経営品質賞の取り組み方の自由度を併せて取り込むことで、理解を得やすいものにできるのではないかとひらめいた。

(「新行政推進室9「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その2)」終わり。「新行政推進室10「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その3)」に続きます。)
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