新潟久紀ブログ版retrospective

【連載3】空き家で地元貢献「不思議なおばちゃん達と僕(その3)」

●不思議なおばちゃん達と僕(その3) ※「連載初回」はこちら 

 僕の幼稚園の送り迎えを、歩くこと片道20分程度かけて毎日やってくれていた祖母は、帰り道に一休みも兼ねて途中にある"おばちゃん達"の家、つまり自分の弟妹が住まい、気兼ねなく寛げる生家へ、しばしば連れて行ったものだった。
 しかし、僕は小学校に上がると近所の子供達と集団登下校ということとなり、また、終業後も毎日のように友達どおしで野球やら何やらで暗くなるまで公園て遊ぶようになり、祖母から"おばちゃん達"の家へ連れて行かれることは殆ど無くなってしまった。たまに、何かの用事で祖母や母に着いてそこに行くときも、例によって愛想のない対応の人達であったし、子供の目や関心を引くような家財や、まして玩具などは皆無であったので、面白みのない場所から早く帰りたいと思うばかりだった。
 さらに、僕は中学に上がると、同級生達からからかわれていた肥満体型から脱却すべく一念発起して、それまでまともにスポーツなどしたこともないことから親や担任までが「ムリだ」と止めるのも聞かずに、バスケットボール部に入部したものだから、毎日の早朝と日没過ぎまでの練習、休日も試合か練習という具合となり、食事と寝るためだけに家に帰るような生活の中で、"おばちゃん達"の家の事など意識から無くなっていった。
 高校に進学すると、中学で少しかじった経験を頼みにバスケットボール部に入るも、市内の強豪中学から集まってきた連中とのレベル格差に圧倒されたことと、顧問の教師とつまらないことで喧嘩した勢いで1年で退部してしまう。
 ならば自由に遊べる時間が出来そうなものだが、速やかに学業に注力せざるをえなくなってきた。地元では進学校とされていた高校であったのだが、仮に大学に行くとしたら国公立以外認めないと両親から早々に僕は言い渡されていたのに、田舎とはいえ優秀な子供達が集っていた中で、相対的に僕の成績は芳しくなかった。父親は国公立受験に失敗したら自分の顔が利く小さな会社に勤めさせるという。このままではマズいということだった。
 中学では明けても暮れても部活ざんまいで、高校では遊びたい盛りの2年生から早くも"帰宅部"と揶揄されながら終業後は図書館か直帰しての勉強という生活になった。自宅から5分もあれば顔を出せる"おばちゃん達"の家は、幼い頃には少なからず暇を潰す場にもなっていたかもしれないが、男子中高生になってからは、ますます縁遠い存在と成り果てていた。
 それでも、かすかに一筋、おばちゃん達と僕をつなぐ事が続いていた。彼女達の中で何とかまともに仕事ができる唯一のおばちゃんが、そう、幼い頃に家を訪ねると常に玄関入って直ぐの部屋で黙々とミシンか編み機で作業していたあのおばちゃんが、地元でも有名な近所の割烹旅館で仲居として夕方から夜間のパートをしていたのだが、残った料理や惣菜等の持ち帰り品を、育ち盛りの僕に食べさせてやってと、僕の母のところに度々持ってきてくれたのだ。
 どう考えても裕福とは思えない年老いたおばちゃん達の住まいにおいても、それは貴重な食べ物だったであろうに、随分遠い幼い頃に遊びに来てくれたということだけで僕をずっと気にかけ続けてくれていて、食べ盛りの中高生くらいの男子ともなれば賄いも大変だろうということで、お裾分けを頻繁に持ってきてくれたといったところかなあと思っていた。
 残り物とはいえ、会社の接待などでお偉方の御用達とされる、地元では高級な割烹旅館で供される料理である。共働きで手間を掛けた料理などする余裕のない我が家の食生活の中で、食材も味付けなど調理の具合も別格のものであった。少し意地汚いかもしれないが、口が肥えていった僕は、おばちゃんが高級料理のおこぼれを運んでくれることを心待ちにさえしたものだ。
 そうした料理の受け渡しについては、さすがに年頃の中高生男子の僕ではなく、僕の母、すなわちおばちゃんにとっての姪がやりとりをしており、殆どの場合、僕は家に居ても顔を出して日頃のお礼や挨拶をすることすらしなかったのだか、やはり、食べ物に関する恩義というのは感じ入るものがあったものだ。そうこうしていた高校3年のある晩、珍しく母親と二人でお茶を飲みながらたわいない雑談をしていた時に、母親の若い頃の苦労話からおばちゃん達の生き様へも話が及ぶこととなった。

(空き家で地元貢献「不思議なおばちゃん達と僕」の続きは近くupします。)
※"空き家"の掃除日記はこちらをご覧ください。↓
 「ほのぼの空き家の掃除2020.11.14」
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