老人からもらった小舟を漕いでいると次第に小さな島がどんどん近づいて大きな島になりました
砂浜に舟を打ち上げて老人から聞いた方角に進むと
木でできた小さな家がありました
老人からはそれだけしか聞いていませんでしたが不安はありませんでした
老人がずっと暮らして来れた島なのだからと思うだけでした
これまでの旅で培った勘がそう思わせるかのようでした
その島の家の周りには10軒
ほどの家がありました
旅人はチーズしか持っていませんからそれを持ち挨拶に回りました
島の住民達は珍しい食べ物に喜んでくれたようですが深く介入して来る様子はなく旅人も気楽に暮らして行けるように思いました
家の中には老人が島で暮らして行くための知恵が書かれたノートがありましたからそれにそって生活を始めたのでした
その島は旅人が旅してきたどこの土地より自然が豊で静かで和ませてくれる場所でした
いつしか旅人はここで骨を埋めるのではないかと思い初めていました
朝陽を拝み夕陽に感謝し夜空に語りかけそういう暮らしを数えきれないほどしたある日
白髪の穏やかな顔をした老女が家の前に姿を現しました
話を聞いてみるとこの家にいた老人に会いにやってきたようでした
懐かしそうに家の中を見渡している様子を見ると以前この家であの老人と暮らしていたのかもしれないと思いました
あの老人が島で暮らせなくなり街に出て行ったと伝えると
無表情でうなずいていました
それから旅人と老女はなんとなくこの家で共に暮らすようになりました
不思議と二人はあまり語らずとも意志疎通ができるような面があり気楽な親子のような生活をしていました
老女は旅人が問かけるとだいたいのことは同調してくれました
そしてたくさんの知識を持ち合わせていましたからそれを聞くだけでも楽しかったのでした
ある時旅人は尋ねました以前感じたあのことを
一つ得ると一つ失うことを
老女はニコリと微笑みました
それだけで何も語りません
珍しく旅人はもう一度答えを促しました
すると天を仰ぎながらそれがルールだから...と言いました
もうそれ以上は答えないと知りながら旅人はそんなルールがあるのなら安住の場所にたどり着けないと大きな声で叫びました
旅人はそう言いながら何に誰に腹を立てているのだろうと思っていました
老女は気の毒に思ったのか静かにこう言いました
その答えは自分で探すしかないんだよと
それからどのくらいの朝陽と夕陽を見たのか旅人は覚えていませんでしたが
その答えを見いだせたのでした
それを老女に伝えるとようやく抜け出せたようだねと微笑みました
その翌日老女は優しい顔つきのまま天に召されました
不思議と悲しみはありませんでした
悲しむこともないと思ったのです
老女は自分らしく最後に旅人にすべてを与え自らの旅を終えて行ったのだと思えたからです
それに姿が無くなってもいつでも語りかければ旅人に返事があると確信していたのです
もうこれで失うものはないと思っていると最初に手にして一つだけ持っていた宝物を思い出しました
その宝物は忘れるほどに旅人と一体化してい たのです
旅人は初めて自らこの宝物に感謝を込めて愛を込めて海に投じました
その時海が黄金色に輝きました
旅人は自分が旅を始める前に決めたすべてを思い出したのでした
そして旅人のルールはこの時点で無くなったのだと知ったのでした
旅人は清々しさと心の奥から沸き起こる感動で涙が次々と流れ出しました
その時旅人はすべてを失ったにも関わらず夢中で進んで来た旅から得たたくさんの経験が自分の中にあることを知りました
旅人はここからが真に自由な旅になるのだと理解したのでした
そしてその旅は過去や未来に捕らわれることのないその時々の喜びを与えてくれる旅になるのではないかと思うのでした
砂浜に舟を打ち上げて老人から聞いた方角に進むと
木でできた小さな家がありました
老人からはそれだけしか聞いていませんでしたが不安はありませんでした
老人がずっと暮らして来れた島なのだからと思うだけでした
これまでの旅で培った勘がそう思わせるかのようでした
その島の家の周りには10軒
ほどの家がありました
旅人はチーズしか持っていませんからそれを持ち挨拶に回りました
島の住民達は珍しい食べ物に喜んでくれたようですが深く介入して来る様子はなく旅人も気楽に暮らして行けるように思いました
家の中には老人が島で暮らして行くための知恵が書かれたノートがありましたからそれにそって生活を始めたのでした
その島は旅人が旅してきたどこの土地より自然が豊で静かで和ませてくれる場所でした
いつしか旅人はここで骨を埋めるのではないかと思い初めていました
朝陽を拝み夕陽に感謝し夜空に語りかけそういう暮らしを数えきれないほどしたある日
白髪の穏やかな顔をした老女が家の前に姿を現しました
話を聞いてみるとこの家にいた老人に会いにやってきたようでした
懐かしそうに家の中を見渡している様子を見ると以前この家であの老人と暮らしていたのかもしれないと思いました
あの老人が島で暮らせなくなり街に出て行ったと伝えると
無表情でうなずいていました
それから旅人と老女はなんとなくこの家で共に暮らすようになりました
不思議と二人はあまり語らずとも意志疎通ができるような面があり気楽な親子のような生活をしていました
老女は旅人が問かけるとだいたいのことは同調してくれました
そしてたくさんの知識を持ち合わせていましたからそれを聞くだけでも楽しかったのでした
ある時旅人は尋ねました以前感じたあのことを
一つ得ると一つ失うことを
老女はニコリと微笑みました
それだけで何も語りません
珍しく旅人はもう一度答えを促しました
すると天を仰ぎながらそれがルールだから...と言いました
もうそれ以上は答えないと知りながら旅人はそんなルールがあるのなら安住の場所にたどり着けないと大きな声で叫びました
旅人はそう言いながら何に誰に腹を立てているのだろうと思っていました
老女は気の毒に思ったのか静かにこう言いました
その答えは自分で探すしかないんだよと
それからどのくらいの朝陽と夕陽を見たのか旅人は覚えていませんでしたが
その答えを見いだせたのでした
それを老女に伝えるとようやく抜け出せたようだねと微笑みました
その翌日老女は優しい顔つきのまま天に召されました
不思議と悲しみはありませんでした
悲しむこともないと思ったのです
老女は自分らしく最後に旅人にすべてを与え自らの旅を終えて行ったのだと思えたからです
それに姿が無くなってもいつでも語りかければ旅人に返事があると確信していたのです
もうこれで失うものはないと思っていると最初に手にして一つだけ持っていた宝物を思い出しました
その宝物は忘れるほどに旅人と一体化してい たのです
旅人は初めて自らこの宝物に感謝を込めて愛を込めて海に投じました
その時海が黄金色に輝きました
旅人は自分が旅を始める前に決めたすべてを思い出したのでした
そして旅人のルールはこの時点で無くなったのだと知ったのでした
旅人は清々しさと心の奥から沸き起こる感動で涙が次々と流れ出しました
その時旅人はすべてを失ったにも関わらず夢中で進んで来た旅から得たたくさんの経験が自分の中にあることを知りました
旅人はここからが真に自由な旅になるのだと理解したのでした
そしてその旅は過去や未来に捕らわれることのないその時々の喜びを与えてくれる旅になるのではないかと思うのでした