テンポ良くなんて言っておいて遅くなりました。すみません
私の妄想だけはテンポ良く突っ走りまして
すでにラストシーンを迎えてしまいました
それでは主題歌は『トビラ』で!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
妄想ドラマ 『 トビラ 』 (7)
夜の公園のベンチに座ってぼんやりとしていた。
時折、駅からはきだされてくる人が公園の中を横切っていく。
家路を急ぐサラリーマン、楽しそうなカップル・・・
みんな俺に気がつくと避けて通る。
そろそろ終電だ。
こんな時間じゃ不審者に見えるのだろうか。
ひどい顔をしているのかもしれない。
いつもは気にも留めない街灯が今夜は寂しげに見えた。
何も考えたくない。
だけどそうもいかないのは分かっている。
ライブまであと10日。
俺と智がこんな状態のままではいられない。
事実を確かめて、すべてはそれからだ。
でも夏美と智が本当に惹かれあっているとしたら俺はどうする?
時の流れはいつも未来に向かう。
どんなに辛くても後戻りは許してくれない。
星も月も見えない漆黒の夜でさえ、必ず朝を迎えることに気がついた時、
堂々巡りの思いがひとつの決心に変わった。
携帯を見ると着信履歴に夏美の名前が並んでいる。
夏美は、もし智のことを好きになったとしたも、
それを隠して平気で俺と付き合っていられるような女性ではない。
智だってジェイストのメンバーとして夢を追いかけている仲間だ。
事実を確かめよう。
夏美の携帯にかけると早朝なのにすぐに出た。
「ごめんね。あんなところを見たら誤解されて当然だよね。でもそんなんじゃないの」
「そっか。それを聞いて安心した」
「それでね、大事な話があるから仕事に行く前に会いたいの。今どこ?」
「T駅前のファミレス」
「そう、45分・・・40分で行くから待ってて。お願い」
「大丈夫、待ってるから」
俺からの連絡を待っていたのか夏美は本当に40分でファミレスに来た。
「今日も練習あるんでしょ?智くんみんなには自分から話すって言ってたけど、
もともと口数少ない人だし、雅紀には事情を知っておいて欲しくて」
そう言って夏美は一冊の美術雑誌を開いて見せた。
そこには美術史に残る逸材という見出しで、どこかの有名な画廊のオーナーが育てたという、
将来を嘱望される若き画家の記事が載っていた。
その画家の写真は紛れもなく智だった。
ちょっとはにかんだような笑顔。
個展には多くの人が訪れ、彼の絵は高額で取引されたらしい。
雑誌が販売されたのは半年前。
「どうしてこれを?」
「絵が好きで個展に行った友達が智くんじゃないかって」
「なんで隠してたんだろう?しかも将来有望な奴が俺のところで・・・」
「自分が悪い病気なんじゃないかという不安で絵が描けなくなっていたんだって」
「智がそう言ったのか?」
「うん、夕べ」
いつも一緒にいたけれど具合が悪そうには見えなかった。
「だけど歌うときはパワフルだし、酒だって飲んでる。どこか悪いなんて信じられない」
夏美は視線を外すと、うつむいたまま小さな声でいった。
「目が見えなくなるかもって・・・」
------------つづく----------
私の妄想だけはテンポ良く突っ走りまして
すでにラストシーンを迎えてしまいました
それでは主題歌は『トビラ』で!
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妄想ドラマ 『 トビラ 』 (7)
夜の公園のベンチに座ってぼんやりとしていた。
時折、駅からはきだされてくる人が公園の中を横切っていく。
家路を急ぐサラリーマン、楽しそうなカップル・・・
みんな俺に気がつくと避けて通る。
そろそろ終電だ。
こんな時間じゃ不審者に見えるのだろうか。
ひどい顔をしているのかもしれない。
いつもは気にも留めない街灯が今夜は寂しげに見えた。
何も考えたくない。
だけどそうもいかないのは分かっている。
ライブまであと10日。
俺と智がこんな状態のままではいられない。
事実を確かめて、すべてはそれからだ。
でも夏美と智が本当に惹かれあっているとしたら俺はどうする?
時の流れはいつも未来に向かう。
どんなに辛くても後戻りは許してくれない。
星も月も見えない漆黒の夜でさえ、必ず朝を迎えることに気がついた時、
堂々巡りの思いがひとつの決心に変わった。
携帯を見ると着信履歴に夏美の名前が並んでいる。
夏美は、もし智のことを好きになったとしたも、
それを隠して平気で俺と付き合っていられるような女性ではない。
智だってジェイストのメンバーとして夢を追いかけている仲間だ。
事実を確かめよう。
夏美の携帯にかけると早朝なのにすぐに出た。
「ごめんね。あんなところを見たら誤解されて当然だよね。でもそんなんじゃないの」
「そっか。それを聞いて安心した」
「それでね、大事な話があるから仕事に行く前に会いたいの。今どこ?」
「T駅前のファミレス」
「そう、45分・・・40分で行くから待ってて。お願い」
「大丈夫、待ってるから」
俺からの連絡を待っていたのか夏美は本当に40分でファミレスに来た。
「今日も練習あるんでしょ?智くんみんなには自分から話すって言ってたけど、
もともと口数少ない人だし、雅紀には事情を知っておいて欲しくて」
そう言って夏美は一冊の美術雑誌を開いて見せた。
そこには美術史に残る逸材という見出しで、どこかの有名な画廊のオーナーが育てたという、
将来を嘱望される若き画家の記事が載っていた。
その画家の写真は紛れもなく智だった。
ちょっとはにかんだような笑顔。
個展には多くの人が訪れ、彼の絵は高額で取引されたらしい。
雑誌が販売されたのは半年前。
「どうしてこれを?」
「絵が好きで個展に行った友達が智くんじゃないかって」
「なんで隠してたんだろう?しかも将来有望な奴が俺のところで・・・」
「自分が悪い病気なんじゃないかという不安で絵が描けなくなっていたんだって」
「智がそう言ったのか?」
「うん、夕べ」
いつも一緒にいたけれど具合が悪そうには見えなかった。
「だけど歌うときはパワフルだし、酒だって飲んでる。どこか悪いなんて信じられない」
夏美は視線を外すと、うつむいたまま小さな声でいった。
「目が見えなくなるかもって・・・」
------------つづく----------