「九十九里まで来るんだったら、お蕎麦食べにおいで」
そばつゆは、繊細な風味を生かすように仕上げられていて、揚げたての天ぷらも
伯父のお通夜で数十年ぶりにあった従兄K兄さんが、会社を息子に任せて御宿でお蕎麦屋を開いて3年経つという。
釣り好きが昂じて御宿に移り住み、
蕎麦うちの趣味も昂じて蕎麦屋かぁ。
働いているのが幸せなのか、儲け度外視。
まぁ、私も余裕があればそうしたいが、
何せ、ある事情で虎の子いっさい失って、日々の生活費を稼ぐのみ。
まぁ、それなりに身の丈に合った生活を楽しんでいるから幸せなんだけど。
K兄さんのお蕎麦は十割で、特にボタン蕎麦」という珍しいものらしい。
蕎麦の大吟醸と銘打つだけあって、ピカピカと輝きを放っていた。
「先ず、そのまま、それから塩をつけて食べてごらん」
食感と風味が、今まで食べていた物とはまったく違うのに驚かされた。
お酒を頼むとK兄さんの釣って来た魚がお通しで出される。太っ腹なサービスに、お客様の笑顔が絶えない。
そばつゆは、繊細な風味を生かすように仕上げられていて、揚げたての天ぷらも
素材の味が生きていた。
「また遊びにおいで」
そう言われて電車に揺られること3時間...
もっと近けりゃ、しょっちゅう行けるのに!
いやいや、儲けにならないお客ゆえ、たまにが良いに決まってる、アハハ。