「シモーヌ・ヴェイユの『重力と恩寵』は私のバイブルなんです。」
その言葉を聞いて工藤さんはとても驚かれた。
会話の中の些細な一言で共通の話題が出来、
吉本隆明の「甦るヴェイユ」と
絶版になってしまった講談社文庫「重力と恩寵」をお貸しした。
ふとしたことが切っ掛けで知り合い、著書「職業としての国語教育」を頂いた。
パラパラと捲ってみると「羅生門」
あぁ、高校の頃教科書で読んだ記憶はあるけど、黒澤映画の場面の方が頭に浮かぶ。
まず自分が読みやすいところから読んだ。
この場合、前後しても差し障りはないと思ったから。
工藤さんは高校の国語教師だったそうで、その時に授業した話をまとめた様である。
今日は休みなので、コーヒー好きの工藤さんの為に先日頂いたコスモスのドリップバッグと電気ポットやマグカップ持参で訪ねた。
何のことはない、部屋には電気ポットがあり荷物になってしまったが、自分のマグカップは置いて来た。
独りで必要な会話以外しない毎日を送っている工藤さんは、私との会話を楽しんでくれている。
私も、話していると亡き父と話している様な錯覚を覚える。
哲学や文学の話から人生の話まで尽きる事がない。
工藤さんも私も、閉ざされた記憶の蓋が開いて行く。ごちゃごちゃかき混ぜながら、蘇ってくる記憶に次から次へと話が膨らんでくる。
忙しさに追われて「羅生門」しか読んでいないので、明日の休みは別の章を読んでみよう。
次に会う時のために。