のりひめのひとりごと Monologue of Noriko

2012年からオーストラリアと日本を行き来しています。日常のいろいろを書いてます。

監獄でナンバーワン★のりひめエッセイ

2011-09-25 18:28:07 | のりひめエッセイ
その2「監獄でナンバーワン」

 「患者様、ご入院で~す」
 まつげもしっかり盛ったミニスカートのナ
ースが、出迎える。
 「一番具合の悪い方は?」との問いに、一
歩前に出ると、ナースは1メートルもある大
きな注射器をもちあげる。
 「ちくっとしますよ」といわれ、首をすく
めてこわごわ手を差し出すと、甲にぺたんと
スタンプが。

 「うそで~す」
 「な~んだ」ばかばかしくもほっとする。

 ここは渋谷の円山町、アルカトラズE.R.と
いう居酒屋である。

 わたしは、この居酒屋に自分では累計15
0名以上連れて行っている。
最大人数は40名程度、だいたい8名から2
0名で、月に1回くらい通っていた。

 さて、注射が終わったら手錠をかけられ、
間接的にミニスカナースと手をつないだよう
な状況で、歩き始める。
 おどろおどろしい人体標本などが並んだ実
験室のような通路をぬけると、そこは監獄。

 お客の人数に応じて、2名から40名ほど
収容できる、檻のような個室が並んでいる。
手術着のウェイターとナースが、注文をとる。
 メニューも念の入ったもので、「しびんビ
ール」(リアル!)や、試験管に入った何種
類ものカクテル、さらに「正露丸」というメ
ニューは大きな海苔に丸く包まれたマグロの
たたきで、ソースが赤い。

 きわめつけは、21時から始まるショータ
イム。おもちゃの銃を持った手術着のウェイ
ターが、迫力たっぷりに、がちゃんがちゃん
と各個室を開けて、逃げた囚人を探し周り、
お客の一人が通路に引き出され、衆人環視の
中、ミニスカナースにおしりに注射をされる。

 お客のグループには必ず初めて来店する友
人がいて、連れてきた人は、反応をみるのが
楽しみだ。こんな人もいる。

 「いま俺、アルカトラズにいるんですよ」
 と、長野の20代の農業青年が電話をして
た。彼を誘って2年位前にこの店にいった。
 「全部で50名で来たんです。」
 20代の農業青年たちが、大いに盛り上が
っている中、声を枯らして電話をくれた。

 お店の魅力は、いかがわしさだ。とはいえ、
まじめな人でも乗りやすい軽さがある。
 接客のセリフまで一貫している。
 トイレに行くと「検尿、お疲れ様でした。」
帰りは「ご退院、おめでとうございます。」
 入店してから退店するまでのストーリー、
起承転結もわかりやすい。

 通っていたときは、ビジネスセミナーの懇
親会後の二次会で行っていた。「手錠の会」
なるものまでできて、セミナー受講生さんの
活性化に大いに貢献してくれたお店だ。

 ついつい話題にしてまた新しい人を連れて
行ってしまうこのお店、わたしの中では「居
酒屋ナンバーワン」である。
(2011年7月26日)

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