”スローライフ滋賀” 

「日野椀」技術で「近江曲げワッパ弁当」 手作り販売(滋賀県日野町)

 滋賀県日野町中之郷でギター修理業「じほうどう工房」を営む嶋村則幸さんが、4年間の修業で習得した日野町の伝統工芸「日野椀」の技術を生かし、漆塗りの弁当箱を手作りしている。その名も「近江曲げワッパ弁当」。
↑写真:中日新聞より 

 滋賀県産木材の調達から完成までを一人で手掛け、生産量は限られるも、滋賀県内外の客が相次いでいる。
 光沢のある黒や、木目のきめ細かい茶の弁当箱。色合いや質感の違いは、漆を塗る技法を使い分けることで生まれる。嶋村さんは「これにご飯と焼き魚でも詰めて食べたら最高」と語る。
 町内で時計店を営む家に生まれ、49歳で特別支援学校の職員を退職。生徒のために日曜大工に励んだ経験があり、関東で1年間、家具の木工やギターの修理を学んだ。帰郷後、2004年に日野椀を復興させた「北川木工」に弟子入りし、漆の塗り方など椀の製造技術を身に付けた。
 9年前に独立。工房名は、実家の時計店にちなんだ。「あくまでも本業はギター修理」としつつ、並行して日野椀作りに注力。高台が大きい「室町椀」や、手のひらになじむ「ハソリ」など5種類を製作しており、スプーンや箸もそろえる。

 弁当箱作りは5年ほど前、友人の要望がきっかけだった。静岡の「井川メンパ」など全国各地のわっぱ産地に足を運び、作り方を教わった。「各産地のいいとこ取り」で製造工程を確立し、道具は手作りした。
 材料は滋賀県産のスギやヒノキで、建築資材を切り出した後の端材を板状に加工している。3、4年かけて乾燥させた後、湯で煮て柔らかくし、楕円の型に巻き付けて曲げる。つなぎ目は、なめしたヤマザクラの樹皮で縫うように留め、底面は漆と上新粉で接着する。
 表面の漆の塗り方は2つ。塗った後に研いだり磨いたりして鏡のようなつやを出す「呂色仕上げ」と、漆を塗っては拭き取る作業を何度も繰り返すことで木目を見せる「拭き漆」。日野椀同様、手間暇のかかる工程で、売れても「マッサージ代も出ない」と笑う。
 客自身の目で好みの器を選んでもらうとともに、「忙しくなると、いいかげんなものを出しかねない」として、ネット通販はせず、工房での直販にこだわる。評判を聞き付け、愛知や三重など他県から買い求める客もおり、通算で100個ほどを売った。「弁当箱だから適当でいいとも言われるが、修理すれば子や孫の代まで使える物。生きているうちは直す責任がある」と気を引き締める。
 弁当箱の価格は漆の塗り方や大きさによって異なり、1個1万~1万5000円前後。漆を塗っていない「白木」もある。

問い合わせ: じほうどう工房
090(4903)6485
滋賀県蒲生郡日野町中ノ郷412

<中日新聞より>


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