米原市醒井の旧中山道。地蔵川で白い花を咲かせる沈水植物の梅花藻(バイカモ)がきれいな醒井宿で、昔ながらのたたずまいの建物が並ぶ中にある「醤油屋喜代治商店」。

1906年(明治39年)創業の老舗のしょうゆ屋だ。名水百選に選ばれている醒井の水と地元産の素材を使ったしょうゆやみそ、甘酒が人気となっている。
店を経営するのは代表取締役会長で4代目の江竜謙一さん。
大阪で会社員をしていたが、35年ほど前に父で3代目の八郎さんが体調を崩したのをきっかけに家業を継いだ。しかし実家に戻ると、技術を継承する間もなく八郎さんは死去。独学で専門書を読んだり、県醤油工業協同組合に入りしょうゆ造りの基礎を学んだ。
力を入れたのは新商品の開発。それまでしょうゆ一本だったが、みそ製造を開始。「霊仙三蔵味噌」と名付けたみそは滋賀県内産のうるち米と伊吹の大豆を使った自然発酵のこだわりの商品だ。薄茶色をした甘口のみそは、みそ汁以外の料理にも使いやすいと人気となっている。
みそ造りの米こうじから甘酒の生産も始めた。みそ造りがない夏場にもできる商品をとチャレンジ。保存料や酸化防止剤などを一切使わず、米こうじのみで造った甘酒は舌に残らないさっぱりとした甘さで、夏には1日50杯売れることもある人気商品となった。
醒井宿にバイカモ目当ての観光客が増え始めた10年ほど前には、濃い口しょうゆ「喜代治」を開発した。「良さを聞かれたときに語れるものをつくらないといけない」と伊吹産の大豆、長浜産の小麦、醒井の水を使用し、通常の倍の2年熟成させるなど材料、製法ともにこだわりぬいた。
創業者の名を冠した喜代治は、深いコクとまろやかさが特徴だ。
多くの商品で使っている醒井の水は地面を5mほど掘ってくみ上げた地下水。江竜さんは「クセがなく生で飲んでもおいしい」と評す。
一方で霊仙山を通った水はカルシウムを多量に含んでいる硬水。そのままではカルシウムがボイラーに付着するなど扱いが難しい。それでも「地元の水を」とカルシウムを取り除いて軟水に変えるなどして使っている。
新商品を多く開発する一方で、100年以上の歴史を持つ喜代治商店は常連客も多い。江竜さんは「これからも昔ながらの味をそのままに、安定したものをつくっていきたい」と語った。
しょうゆや甘酒、みそなどは店頭のほか、米原市のふるさと納税の返礼品や、インターネットショップ「オリテ米原」で購入することができる。
醤油屋喜代治商店
米原市醒井370
http://yamakisyouyu.jp/
<中日新聞より>