あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その4)

2007年02月03日 01時28分27秒 | よく分かる(?)シリーズ
今回は,問題点を中心に説明します。

第4 現行刑事裁判の問題点
 1 当事者に被害者がいない

   以上のとおり,裁判の当事者は「検察官VS被告人」です。これは,刑罰権は国家のみにあるということを根拠しています。
   一方で,長年にわたり,被害者が裁判からないがしろにされてきたという点が問題となってきていました。
   近年では,徐々に被害者も裁判に参加できるような制度になってきましたが,それでもあくまでも被害者は「第三者」にすぎないのです。
 2 時間がかかる
   以上のような手続きを取りますので,争いがあればそれだけ時間がかかるということは制度上仕方がないことです。
   しかし,それでも少しでも短時間で済むようにするため,最近では,「公判前整理手続き」を導入し,裁判の前に争点を整理して証拠調べを最小限にするような手続が加わりました。
   ただし,起訴状一本主義や予断排除の原則は維持されますので,公判前整理手続きで行えるのは,あくまでも「こんな方針で,こんな証人がいる」という程度のことしかできません。
 3 弁護人の姑息な戦術
   ここも非難が集まります。確かにやりすぎな場合もありますが,一方ではえん罪防止のために必要な制度もあることから,一律に批判することは難しいと言えるでしょう。
 4 分かり難い
   裁判員制度が導入されると,ここが確実に問題になります。
   まず,用語が難しいです。また,手続きも簡単そうで難しいです。
   例えば,「未必の故意」。なんだか分かりますか?。作家の曽根綾子さんは,この言葉を聞いたとき,「あら,刑法も粋だわね」とビックリされたそうですが,実は「密室の恋」と勘違いしていた,なんていうエピソードがあります。
   これは,宿題にしますね!
   いずれにしても,難しい手続や用語を改善しなければ,裁判員も「日本語で裁判やってください」と言いたくなってしまうかもしれませんね。

以上長々と説明しましたが,刑事裁判は,このような仕組みや流れで進んでいるんだ,っていうことを少しでも理解できれば幸いです。
たしかに一部まどろこしい制度もありますが,この辺は「冤罪防止」という目的がある,という前提で見てみたらよろしいでしょう。
その上で,裁判員制度が始まったらどうなるのかとか,被害者家族が裁判に参加することの問題点などについての議論について考えてみるとよいかと思います。

よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その1)
よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その2)
よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その3)

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よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その3)

2007年02月03日 01時22分28秒 | よく分かる(?)シリーズ
さあ,いよいよ裁判の始まりです。
ここでは,ノーマルケースについて説明します。実際は,いろんな枝葉がありますが,それを言い出すと本になっちゃうので,そこは省略します。

第3 裁判の流れ
 1 人定質問

   裁判官が被告人の本籍,住所,氏名,年齢,職業を聞きます。
 2 起訴状朗読
   検察官が起訴状を読み上げます。
   起訴状は多くがA4用紙1枚程度のシンプルなものです。記載内容も単純です。これは,前述のとおり「予断を与えないため」に,最低限しか記載されていません。
   例えば,殺人事件の場合はこんな感じです。
   「被告人は,平成19年1月1日午前2時50分頃,東京都千代田区丸の内1丁目2番3号の路上で,江頭太郎(当50年)に対し,刃渡り15センチの文化包丁を用いて,殺意を持って同人の左胸に刺し,同日午前3時42分に同人を死亡させたものである。
 3 黙秘権告知
   裁判官が,被告人に対し,黙秘権を告知します。これは,憲法上の要請なので,告知がない裁判は,違法とされます。
 4 罪状認否
   裁判官が,被告人に対し,起訴状事実の有無について尋ねます。
   新聞でよくでる「最初の被告人の発言」は,この罪状認否の部分です。
   多くの場合,「そのとおり」と児玉清さんのように答える被告人がほとんどですが,否認事件,すなわち争う事件の場合は,ここで様々な主張をします。
   いわば,最初のドラマがここにあります。
   また,被告人が認否した後に,弁護人がさらに意見を補足します。
 5 冒頭陳述
   検察官が,証拠によって立証する事実を述べます。ここでは,起訴状の事実をかなり詳細に説明します。場合によっては,冒頭陳述だけで数時間かかるなんていう超大作の場合すらあります。
   ここが,新聞やテレビでよく紹介される部分です。おそらく,一般の人が裁判を傍聴していると,この冒頭陳述を聞いて初めて「事件の全体像」が見えてくることになります。いうなれば,「週刊誌に書かれた情報」がここに初めて現れてくるのです。
 6 証拠の認否
   検察官が証拠を提示し,それに対し,弁護人が同意するか否か返答します。
   ここでいう証拠の多くは,警察や検察庁が作った「調書」です。
   細かい理論は省略しますが,日本の裁判では,本来は「調書」に証拠能力を認めていません。つまり,調書に出てきた人は,必ず証人尋問をしなければならないのです。ところが,それでは裁判がなかなか進まなくなるため,特に争いのない事案については,すべての証拠に同意して,調書を証拠として扱います。そして,一気に裁判は終局に向かいます。
   一方,否認事件では,ここで多くの証拠を不同意として,原則どおり「証人尋問」が始まります。
 7 証拠調べ
   検察官が証拠の内容について説明します。
   証拠には甲号証と乙号証の2種類があります。甲号証が客観的な証拠類(被害届や目撃者の証言,実況見分調書など),乙号証が被告人自身に関する証拠(被告人供述調書,前科リストなど)になります。
   そして,取調べ順序は,必ず甲号証から始めます。
   なぜでしょうか?これも地味ながら憲法上の要請があるからです。
   憲法では,自白のみでは有罪にできないという規定があるため,まず被告人の自白の前に客観的な証拠で固めなければならないということになるのです。
   すなわち,客観的な証拠で周りを固めた上で,さらに「ほーら,客観的な証拠に即した自白を被告人もしているでしょう」という形で立証することで,初めて有罪認定ができるのです。
   逆に言うと,ここで被告人が否認していたとしても,客観的な証拠があれば当然有罪にできますし,被告人が自白していたとしても,客観的な証拠が全くない場合は,被告人は無罪となります。
   「死体なき殺人」が,立証が難しいというのは,こういう点にもあるのです。
   もちろん,弁護人側も証拠を提出することができますが,弁護人側の証拠には甲乙は付きません。
 8 証人尋問
   争いのない事件の場合は,弁護人が情状証人として,被告人の両親や家族などを呼ぶことがあります。そこで,「しっかり監督します。もう二度と馬鹿なまねはさせません」などと証言し,できるだけ涙を誘おうと頑張ります。
   一方,争いのある事件の場合は,検察官が立証証人を呼び,弁護人が反対尋問を行うという,まさしく「法廷ドラマ」になります。もちろん,逆に弁護人がアリバイ証人を呼び,検察官が反対尋問で崩していく,という場合も多くあります。
   裁判の山場ですし,検察官と弁護人の腕の見せ所になります。
   おそらく,裁判員制度でも,これが有罪無罪を判断する要になると思われます。
   ちなみに,証人は,証言に際して宣誓を行うため,嘘を付いたら偽証罪に問われる場合があります。
 9 被告人質問
   証拠調べが終わった段階で,被告人に対し質問を行います。
   被告人質問では,証人のような宣誓は行いません。なぜなら,黙秘権があること,また被告人はとかく嘘を付くということを踏まえてのことです。
10 論告求刑
   検察官が,最後の締めを行います。
   ここで,いわゆる「被告人を懲役*年に処するのを相当と思慮します。」などという求刑を行います。
   ちなみに,ここで誤解する方が多いのですが,求刑はあくまでも検察官が一方的に言っているものに過ぎないため,裁判所は求刑には全く拘束されません。したがって,求刑が懲役3年であっても,裁判所の判決は,法令の範囲内の刑であれば,1年でも10年でも,極端死刑でも構わないのです。
   従って,求刑とは「単なる目安」に過ぎません。
11 最終弁論
   弁護人と被告人が,最後に言いたいことをまとめて主張します。
   多くの事件では,「ごめんなさい。反省してます。もうしません。」程度のことを言い,弁護人も「今回だけは執行猶予で許してちょんまげ」ぐらいのことを言うにとどまります。
   ただ,否認事件の場合は,ここで最後のプレゼンを行います。検察官の立証がずさんであること,被告人のアリバイは完璧であること,証人の証言は矛盾が多いなど,自分が無罪であることについて主張していくのです。
   これで裁判は終了します。
12 判決
   被告人に対し,口頭で判決を告知します。
   ただし,大きな事件の場合は,事前に判決書を作成し,朗読する場合がありますが,通常の事件では,判決書は後で作成する場合が多いです。
   そして,14日以内に控訴しなければ裁判は確定する,っていうことになります。

ちょっと長くなりましたが,これが裁判の流れです。実際は,ここにいろんな手続が関与してきます。
とりあえず,今回はこの程度で。

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よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その2)

2007年02月03日 01時08分43秒 | よく分かる(?)シリーズ
今回は,裁判が始まるまでの流れです。

第2 刑事裁判が開かれるまで
 1 裁判の請求を誰がするか

   原則として,検察官しか請求ができません。逆に言うと,被害者が直接裁判所に「こいつを懲役刑にしてくれ」と訴えても,当然受け付けられません。
   検察官が「起訴状」という書類を書いてそれを裁判所に提出します。
   ちなみに,裁判所は,最初はこの起訴状しかもらいません。いわゆる「証拠資料等」は一切もらいません。これを「起訴状一本主義」と呼んでいます。
 2 なぜ起訴状一本主義か

   「え,最初から証拠書類読んでおいた方が,裁判早く進のに」と思う方も多いかと思いますが,ここが日本の刑事裁判の大きなポイントなのです。
   裁判所は,「えん罪を防止する」ために,余計な情報を裁判官は一切持たず,裁判の中で出てきた事実や証拠だけで裁判を勧めていく必要があります。そのためには,最初の基礎の段階で証拠書類まで読んでしまうと,「ああ,こいつ犯罪やったなあ」という予断を持って裁判を勧めてしまう可能性が高くなってしまいます。このような予断を防ぐために,起訴状以外は一切もらわない,という決まりとなっています。
   検察官は,あくまでも裁判の一方当事者に過ぎないため,反対当事者である被告人の話や証拠をみることなく,検察官だけの証拠をみるのはフェアーではない,という発想です。
 3 起訴状送達
   被告人に対し,起訴状を送ります。通常は警察に留置されているため,警察に送り,そこから被告人に渡されます。
   この際,弁護人を自分で選ぶかそれとも国選弁護人にするかという意見も同時に聞き,その回答を裁判所に送ります。
 4 召喚状送達
   裁判の期日が決まったら,裁判所の出頭日を書いた召喚状を送ります。
   そして,裁判当日に裁判所に来ることになります。

さて,次回から,いよいよ裁判が始まります。

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よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その1)

2007年02月03日 01時03分41秒 | よく分かる(?)シリーズ
法制審の答申案の中に,刑事裁判手続に犯罪被害者も参加できるような制度を導入する旨含まれていることが報じられており,「犯罪被害者の権利拡大を図る」などとコメントされています。
一方で,裁判員制度については,約8割の国民が参加に消極的である旨の世論調査結果も報じられています。
さらに,連日のように,刑事裁判に関するニュースにおいて「今日の法廷で,**被告は**をした」等と報じられています。
一方で,「そもそも刑事裁判ってどういう仕組みなんだろう」「どういう流れで進んでいくんだろう」「何で検察官の求刑がそのまま判決にならないんだろう」などという疑問をお持ちの方も多いかと思います。
そこで,今回は刑事裁判の仕組みや流れについて説明したいと思います。
なお,刑事裁判制度の大前提にあるのは,「えん罪防止」という観点です。したがって,被告人の権利が厚く保障されている背景については,私の過去のシリーズ(「被疑者,被告人の権利について」と 「逮捕勾留について」)をご覧ください。

第1 そもそも論
 1 刑事裁判って何?

   刑事裁判とは,犯罪者を刑務所送りにするための裁判です。刑事裁判では,犯罪を犯した容疑者のことを「被告人」と呼びます。
   そして,「こんな犯罪をしたんだ。けしからん奴だ」と追求するのが,「検察官」です。
   刑事裁判では,検察官vs被告人の対決,ということになります。
 2 被告人に弁護士が付くのはなぜ?
   ところで,被告人には弁護士(刑事裁判では「弁護人」と呼びます)がつきますが,それはなぜでしょうか。
   それは,「検察官は法律のプロである。ところが被告人は法律の素人であるため,まともに戦えない。そこで,検察官とまともに戦えるために,法律のプロである弁護士を付ける」というものです。
   また,被告人は警察に逮捕されているため,自由に活動ができません。証拠集めや証人の用意,さらには被害者との示談交渉なども必要となります。そのための代理人として弁護人は必須なのです。
   いわば「朝青龍と戦うためには,自分じゃ勝てないから千代大海を雇って戦ってもらう」ようなものなのです(かなり強引な例えかな?)。
 3 国選弁護人って何?
   お金がない被告人に対し,国が弁護人を付ける制度です。刑事裁判の多くは,この国選弁護人になります。
   これは,お金のあるなしで刑事裁判の結果が変わってしまうということを防ぐためのもので,憲法上認められた権利です。いわば,格差社会対策とも言えるでしょう。
   ただし,判決の際に,被告人にこの費用の負担を命じることができますので,全部が全部タダで済むとは限りません。
 4 誰が裁判をやるの?
   裁判官です。じゃなくて,どこの裁判所がやるのか,ということです。
   多くの事件は,地方裁判所が第1審となります。そして,通常は裁判官1人で裁判をしますが,重大事件(殺人など)の場合は,裁判官3人で審理します(これを「合議事件」といいます。)。
   一方,軽微な事件(窃盗など)については,簡易裁判所が第1審となり,裁判官1人で裁判をします。
   第1審の判決で不服があった場合は,地裁簡裁問わず,第2審は高等裁判所になり,裁判官3人で裁判をします。高裁の判決に不服があれば,最後の砦の最高裁で裁判をします。ここでは,5人の裁判官で審理しますが,場合によっては15人の大法廷で審理する場合もあります(ただし,刑事裁判ではほとんど大法廷は開かない。)。

長くなるので,次回に続きます。

よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その2)
よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その3)
よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その4)

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