
アートによるまちづくりをやっている香川県直島を訪ねた。
直島は、香川県香川郡直島町に属する瀬戸内海の島である。離島ということになるのかもしれないが、アプローチはよく、香川県と岡山県からの両方から行くとができる。高松港(香川県高松市)と宇野港(岡山県玉野市)からは行くことができるが、私たちは宇野から行った。わずか約20分の船旅である。しかも船の便数は比較的多く、高松港からは6往復程度、宇野港からは1日20往復以上の便が出ている。
直島に来る観光客の目的は、「現代アート」である。中心となるのがベネッセコーポレーションが手がけた美術館であるが、島内には、空き家を改修した「家プロジェクト」と呼ばれる美術品群がある。これが今回の訪問の目的である。そのほか、島のいたるところに著名な芸術家、建築家による現代アート作品が置かれている。
ベネッセが運営する宿泊施設「ベネッセハウス」には、多くの現代アート作品が展示されているとのことで、それを目当てに来る観光客も多く、予約が取りにくいらしい。そのホテルが運営する島内周遊バスも走り、宿泊客には、さらに魅力的になっているようだ。
直島への来島者は年々増加傾向にあり、2003 年までは年間 5 万人程度で推移していたが、2004 年に地中美術館が開館して以降に急速に伸びた。 町の人に聞いた話では、最近では年間60万人も来るようになったということである。確かに、私たちが出かけた日は、この島を中心に行われている瀬戸内国際芸術祭の夏と秋のちょうど端境期でお休みの時であったが、多くの観光客がいた。
調査によると、「来場者の約7割が女性であり、年齢別に見ると、7 割が 10~30 代で、特に 20 代が 4 割を占めている」ということであるが、9月のはじめということもあって、カメラをぶら下げた若い女子学生がめだった。またここは外国人が多いのが特徴で、半数以上は外国人といった実感だった。聞くところによると、フランスでは、日本=直島といわれるくらい「聖地化」されているようだ。
直島には、空き家を使った建築群を見に行ったが、特に印象的だったのは、民家(空き家)を使ったカフェの多さである。家プロジェクトがある本村地区では、2004 年に民家を使った「カフェまるや」が開業されて以降、飲食店が増えてきた。現在、本村地区では、20 店強の飲食店が開業しているとのことで、しかも、島外の人が開業した店である。
私たちや一休みしたカフェも、外見は民家そのもので、なかも民家のたたずまいである。ふすまがあるが、それが破れていて、子どものころに戻ったような感覚にある。アートの島らしいといえば、言えないこともないが、若い人にとっては異文化体験であることは間違いないだろう。現在も開業希望者は多いが、物件がない状態とのことである。
こうした、「民家をそのまま使って、そこにカフェを開く」というパターンは、全国で見ことができる。私たちが時々出かける沖縄の島々では、あちこちにある。そこが好きで遊びに来ているうちに、空いた民家を借りて、レストランやカフェを経営するというものである。みな若者で、こうした若者の自由さや柔軟さは、うらやましい限りである。