松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆若者議会と成果(4)ふるさと納税

2021-03-24 | 若者議会
 第1期から第5期まで、若者議会が提案したのは、累計で33事業になる(第6期は4事業が提案中である)。

 経年で行われている事業もあり、類型化すると、14分野に分類できる。これを見ると、自分たち関心からスタートしても、他世代やまち全体を考えた事業提案を行っていることがわかる。

 顕著な政策効果が現れているものもある。後述するふるさと情報館リノベーション事業では、大幅な利用者増となった。新城まちなみ情報センターでも、使用者層が広がり(学生が増え、昨年度は小学生の利用も見られるようになった)、利用者も増加している。

 ここでは、ふるさと納税を取り上げる。

 ふるさと納税は、何度も書いているように、問題のある制度である。本来は、ふるさとを応援する制度のはずであるが、結局は、返礼品競争になっている。

 簡単に言うと、自分のまちに対しては責任を持たず(納税せず)、税金で返礼品をもらう制度である。菅さんが、総務大臣のときに強力に始めたもので、理念もヘチマもない制度である。かと言って、何もしないでいると、自分の町の税金が流出することが続く。対応スタンスの難しい仕組みである。

 若者議会が、ふるさと納税を取り上げたのは、第2期(平成28年)と第3期(平成29年)である。これは予算提案なので、実施は、それぞれ翌年になる。

 第2期の提案は、「新城市若者議会PR事業」のなかで一環という位置づけで、ふるさと納税を考えたものである。第3期は、その事業化の提案で、ふるさと納税リニューアル事業として位置づけられている。

 予算・決算で見ると
 第2期(実施はH29)では、予算は208,000円、決算は1,296円である。予算の内容は、ふるさと納税分は、先進事例調査である。
 第3期(実施はH30)では、予算は361,000円、決算は309,048円となっている。内容は、お礼の品生産者へのインタビューと記事の作成。新聞広告への掲載である。
 2年合計では、予算は569,000円、決算は310,344円となっている。

 ふるさと納税の実績は、次のとおりである。
    (件)  (千円)
H26  170  3,672
H27  203  4,780
H28  210  5,848
H29  227  9,249
H30  435  15,427
R1   558  18,095

 若者議会が取り組み始めた平成29年度から、ふるさと納税の実績が急上昇している。若者の取り組みが、市役所や事業者に刺激を与えたものと思われる。

 新城市役所の担当課も、「3期委員を中心にプロジェクトチームを結成し、担当課(企画政策課)とともに活動した。具体的には、体験型の返礼品の提案、生産者インタビューの記事をふるさと納税サイトへアップ、寄付者へのお礼の手紙作成を行うことで、納税額アップへ貢献した」と評価している。

 次に、若者会議における検討経過を見てみよう。
1.スタートは、若者議会のPR方策としてはじまった。
(1)第2期中間報告(第7回新城市若者議会 平成28年8月26日(金))
 「ホームページの内容としては、若者議会の紹介以外にも・・・ふるさと納税PRを取り上げたり、・・・関心を持っていない市内外の方にも見ていただけるようにしたいと思っています。新城市独自の組織である若者議会のPRを通して、市内のPRにつなげていきます。
 PRすることにより、わかりやすい成果を出せるような仕組みづくりをできるように考えています。例えば、ふるさと納税などに関すること等を検討しています」

(2)答申 (第13回新城市若者議会 平成28年11月2日(水))
 ・広報について話し合いを進めるうちに、広報の成果って何だろう、若者ばかりにお金を使われているという反対があるのかなという不安が私たちの中に生まれてきたことでした。
 そこで私たちで何か収益を上げられるようなもの、目に見えて成果が出るもの、もしくは市へ還元できるような取り組みはできないかと検討し、ふるさと納税を若者議会でもPRすることによって、税収を上げられないかということを考えました。
 
 ・現在新城市では、ふるさと納税においては、市内の税収と市外への支出のバランスがとれていない状態であり、ふるさと納税の税収は赤字となっていると聞いています。ふるさと納税により、市が圧迫される状態を放っておくことはできません。全国に名を広め、人が集まってくる暮らしやすいまちにするためには、ふるさと納税に力を入れていくべきだと私たちは考えました。

 ・現在新城市では、寄附の使い道の項目が4つ設けられていますが、漠然としていて、具体的に何に使われているかわからないと感じました。この4つの選択肢を基盤に、今制度がつくられていると伺いますが、この仕組み自体を変えるべきだと提案します。
 
 ・私たち市民は納税後、基本的にはどのような使われ方をしてほしいかということは選択できないものですが、ふるさと納税は唯一それができるチャンスです。新城市でも、もっとふるさと納税がいかに使われているかをPRし、一つ一つのすばらしい返礼品の魅力についても、もっとうまくPRできるとよいと感じました。

2.ふるさと納税の事業化に歩を進める
(1)政策中間発表(第6回若者議会 平成29年8月22日)
・ふるさと納税リニューアル事業  ふるさと納税へのPR方法、返礼品の見直しにより、 全国へ新城の魅力を今以上に発信し、新城市の認知度の向上と経済の活性化を目指す。

・そこで、新城市ゆかりの特産品、あるいは催し物をアピールし、生産者の思いをふるさと納税の仕組 みを通して発信する。 そして、市外の人に新城市の魅力を届け、新城市のファンをふやすということを目的とする。

・目標としては、
 ふるさとチョイス(ふるさと納税まとめサイト)の新城市のページの閲覧数の増加
  ふるさと納税の広告物のリニューアル
  寄附者の満足度、本市の認知度向上、リピーターの増加のために、 寄附後の使い道の明確化
  ふるさと納税返礼品のリニューアル及び開発

・手法については、
 今年度 ふるさとチョイスの再編集に伴い、写真、文章の作成と掲載提案
 委員による生産者、業者へのインタビューをもとに、ふるさとチョイスの記事及び若者議会ホームページに掲載、ふるさとチョイスのふるさと納税広告物のリニューアル
 
 来年度は、 使い道の詳細をふるさとチョイスに掲載する。また使い道の進捗報告。使われ方紹介の 動画作成、ふるさと納税についてのアンケート調査等の寄附後の使い道を明確化
 若者と地域産業との連携による返礼品開発

(2)答申(平成29年11月2日)
 ふるさと納税リニューアル事業36万1,000円。 ふるさと納税の寄附の使い道を明確化やPR方法の見直しにより、全国に新城市の魅力 を今以上に発信し、認知度向上と経済活性化を目指す。

 ふるさと納税リニューアル事業としては、3つのことを提案する。
・寄附金の使い道の明確化を提案する。
 現在は、森林、観光、福祉、教育から選択することになっているが、1つ1つの事業に具体性がなく、寄附者の関心が 得られにくい。

 昨年度の寄附額を参考に、寄附金の使い道について、充当予定の事業名を明確にできないか
 具体的に事業を設定したあとには、それぞれの事業に具体的にどのように使われるか イメージできるように、写真等添えてホームページに掲載。
 事業の進歩状況、また寄附によって実現された事業、関係者の感謝の言葉等の紹介を行うとさらに良い。
 将来的にはその内容を寄附者へのお礼の手紙に載せて送ることで、より高い関心が得られる。

・新しい返礼品の開発
 新たに体験型の返礼品として、地域の課題解決につながる返礼品の開発を検討して見たらどうか。
 墓掃除、空き家点検、草刈り等のサービスを行うことを返礼品に加えるなど。

・返礼品の紹介 の情報をより充実させる
 生産者へのインタビューによる情報、返礼品を受け取った人のコメントを掲載する。 生産者へのインタビューは、今期の若者議会委員で行いたい。その 取材の様子を若者議会ブログにも掲載し、少しでも若者がふるさと納税に興味を持っても らえるように、私たち自身もPRしていきたい。

 今後の計画として、今年度中にリニューアルするための基礎を築き、来年度はふるさと納税のPR活動を主に行っていきたい。返礼品の生産者インタビューは、お礼の手紙の制作とい ったPR方法のリニューアルに必要な写真やレポート等の材料を提案した い。

 来年度では、リニューアルしたふるさと納税をよりPRできるよう、方法を検討するために、若者議会とは別に新城ふるさと納税PR部隊の設立を提案する。
 若者議会OB、OGを中心として構成し、 リニューアル後のふるさと納税をインターネットや市内のイベント、施設を用いてより効果的に全国の人への宣伝方法を検討するためのグループである。




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