ここが、本題。子ども・若者育成支援推進法(子若法)と多摩市子ども・若者支援と活躍条例の関係である。
簡単に言うと、多摩市条例は、子若法の発展条例である。この法律の内容は、法律を実施する「大綱」を見てみるとよく分かる。
実は、大綱は、何度か改正されている。大きな変化が、「子ども・若者ビジョン」から、「子供・若者育成支援推進大綱」への変更である。ここで、「子ども」という表現が、「子供」に変わっている。青少年保護育成基本法の流れで、「子ども」は嫌だったのかもしれない。
当初、子ども・若者育成支援推進法に基づく大綱「子ども・若者ビジョン」(平成 22 年7月)がつくられ、子ども・若者に関する施策が推進された。 この法は、法の5年後見直し(法附則第2条)と大綱の5年後見直しが予定されているため、子ども・若者育成支援推進点検・評価会議を設置して、平成 25 年 11 月から計 10 回の審議を行い、大綱の総点検を行った。
その結果、「子供・若者育成支援推進大綱」ができたというのが経緯である。
1.「子ども・若者ビジョン」
これは考え方、理念を表したビジョンである。
5つの理念として、
(1) 子ども・若者の最善の利益を尊重
日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者の個人としての尊厳を重んじ、発達段階に応じてその意見を十分尊重するとともに、その最善の利益が考慮されることが確実に保障されることを目指します。
(2) 子ども・若者は、大人と共に生きるパートナー
子どもや若者を大人とは一段下の存在として位置づけるのではなく、また逆に、子ども・若者を甘やかすのでもなく、子ども・若者と大人がお互いに尊重しあいながら、社会を構成する担い手として共に生きていくことを目指します。
(3) 自己を確立し社会の能動的形成者となるための支援
子ども・若者が、社会とのかかわりを自覚しつつ、自尊感情や自己肯定感をはぐくみ、自立した個人としての自己を確立するとともに、社会との関係では、適応するのみならず、自らの力で未来の社会をよりよいものに変えていく力を身に付けることができるよう、健やかな成長・発達を支援します。
(4) 子ども・若者一人一人の状況に応じた総合的な支援を、社会全体で重層的に実施
子ども・若者が持つ能力や可能性、あるいは抱えている困難の程度は一人一人異なります。また、様々な分野にわたる支援を組み合わせることが必要な場合や、一つの分野の中でも官民の様々な団体や個人が支援を行う場合があることから、社会全体で分野、主体の壁を越えて互いに連携、協力し、必要な財源を確保しながら、一人一人の置かれた状況、発達段階、性別等に応じて抱えている問題が異なることにも配慮しつつきめ細やかな支援を行っていく必要があります。また、このような連携・協力を通じて、支え合いのネットワークから誰一人として排除されることのない「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指すとともに、すべての子ども・若者が確かな社会生活を始めることができるよう支援していきます。
(5) 大人社会の在り方の見直し
児童虐待を始め大人が子ども・若者に対する加害者となる場合に限らず、子ども・若者の問題は、それを取り巻く大人を含む社会全体の問題です。このことを踏まえ、大人自らがその責任を自覚して子ども・若者のモデルとなるよう努めるとともに、社会の改善に取り組むことができるよう、社会の在り方を見直す取組を進めていきます。
考え方としては、その通りだろう。
2.子供・若者育成支援推進大綱
評価会議を踏まえてつくられた「子供・若者育成支援推進大綱」は、基本理念というよりも政策推進に当たっての基本方針に性格を変えている。
1 全ての子供・若者の健やかな育成
全ての子供・若者が、かけがえのない幼年・若年期を健やかに過ごすことができ、かつ人生 100 年時代、絶え間ない変化の時代を幸せ(Well-being)に、自立して生き抜く基礎を形成できるよう、育成する。
2 困難を有する子供・若者やその家族の支援
困難を有する子供・若者が、速やかに困難な状態から脱し、あるいは困難な状況を軽減・コントロールしつつ成長・活躍していけるよう、家族を含め、誰ひとり取り残さず、かつ非常時においても途切れることなく支援する。
3 創造的な未来を切り拓く子供・若者の応援
子供・若者が、一人一人異なる長所を伸ばし、特技を磨き、才能を開花させ、世界や日本、地域社会の未来を切り拓いていけるよう、応援する。
4 子供・若者の成長のための社会環境の整備
家庭、学校、地域等が、子供・若者の成長の場として、安心・安全な居場所として、Wellbeing の観点からより良い環境となるよう、社会全体、地域全体で子供・若者を育てる機運を高め、ネットワークを整え、活動を促進する。
5 子供・若者の成長を支える担い手の養成・支援
教育・心理・福祉等の専門人材から、地域の身近な大人、ひいては当事者たる子供・若者自身に至るまで、多様な担い手を養成・確保するとともに、それぞれの連携・協働の下、持続的な活躍が可能となるよう、支援する。
パブコメ意見には、
・日本国憲法の理念にのっとることを明示すべき。
・大綱案には、子どもの権利条約に言及した提案等を認めることができないが、児童の権利に関する条約の内容に沿うべき。
・子供・若者を育成すべき対象として見るのではなく、子供・若者の最善の利益を尊重することが確実に保障されることを優先するべき。
等がある。
ただ、これらは、子若法にも書かれているもので、むしろ、これでは、政策の推進力が弱いといえるだろう。むろん、いくつかの点で、気になる表現があるが、政策の推進力という点では、「子供・若者育成推進大綱」は、評価できると思う。
多摩市の子ども若者支援活躍条例では、「ビジョン」の基本理念を取り入れ、「大綱」の弱いところを補強し、自治体が今後注力すべきところを規定したものである。
(1)条例の基本となるのは、大綱の3である。子ども若者のひとり一人の価値、主体性を基本にし手制度を組み立てている。その表れとして、その権利性を明示した(法律は弱い)。これは憲法13条の個人の尊重に由来する。
(2)大綱の2,4の「縦のネットワーク(切れ目のない)」、「横のネットワーク」による縦糸、横糸による重層的支援を記述した。
(3)大綱3の具体化として、挑戦、活躍という発想とその後押しを前面に押し出した。なお、誤解があるといけないので、確認しておくが、「活躍」とは、起業ビジネスのようなことではなく、自己肯定感、自己有用感の発露、実践である。私は、自己肯定感、自己有用感を持てる機会をつくることが、最大の支援だと思っている。
このあたりは、さらに、詳しい関係図をつくってみよう。
簡単に言うと、多摩市条例は、子若法の発展条例である。この法律の内容は、法律を実施する「大綱」を見てみるとよく分かる。
実は、大綱は、何度か改正されている。大きな変化が、「子ども・若者ビジョン」から、「子供・若者育成支援推進大綱」への変更である。ここで、「子ども」という表現が、「子供」に変わっている。青少年保護育成基本法の流れで、「子ども」は嫌だったのかもしれない。
当初、子ども・若者育成支援推進法に基づく大綱「子ども・若者ビジョン」(平成 22 年7月)がつくられ、子ども・若者に関する施策が推進された。 この法は、法の5年後見直し(法附則第2条)と大綱の5年後見直しが予定されているため、子ども・若者育成支援推進点検・評価会議を設置して、平成 25 年 11 月から計 10 回の審議を行い、大綱の総点検を行った。
その結果、「子供・若者育成支援推進大綱」ができたというのが経緯である。
1.「子ども・若者ビジョン」
これは考え方、理念を表したビジョンである。
5つの理念として、
(1) 子ども・若者の最善の利益を尊重
日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者の個人としての尊厳を重んじ、発達段階に応じてその意見を十分尊重するとともに、その最善の利益が考慮されることが確実に保障されることを目指します。
(2) 子ども・若者は、大人と共に生きるパートナー
子どもや若者を大人とは一段下の存在として位置づけるのではなく、また逆に、子ども・若者を甘やかすのでもなく、子ども・若者と大人がお互いに尊重しあいながら、社会を構成する担い手として共に生きていくことを目指します。
(3) 自己を確立し社会の能動的形成者となるための支援
子ども・若者が、社会とのかかわりを自覚しつつ、自尊感情や自己肯定感をはぐくみ、自立した個人としての自己を確立するとともに、社会との関係では、適応するのみならず、自らの力で未来の社会をよりよいものに変えていく力を身に付けることができるよう、健やかな成長・発達を支援します。
(4) 子ども・若者一人一人の状況に応じた総合的な支援を、社会全体で重層的に実施
子ども・若者が持つ能力や可能性、あるいは抱えている困難の程度は一人一人異なります。また、様々な分野にわたる支援を組み合わせることが必要な場合や、一つの分野の中でも官民の様々な団体や個人が支援を行う場合があることから、社会全体で分野、主体の壁を越えて互いに連携、協力し、必要な財源を確保しながら、一人一人の置かれた状況、発達段階、性別等に応じて抱えている問題が異なることにも配慮しつつきめ細やかな支援を行っていく必要があります。また、このような連携・協力を通じて、支え合いのネットワークから誰一人として排除されることのない「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指すとともに、すべての子ども・若者が確かな社会生活を始めることができるよう支援していきます。
(5) 大人社会の在り方の見直し
児童虐待を始め大人が子ども・若者に対する加害者となる場合に限らず、子ども・若者の問題は、それを取り巻く大人を含む社会全体の問題です。このことを踏まえ、大人自らがその責任を自覚して子ども・若者のモデルとなるよう努めるとともに、社会の改善に取り組むことができるよう、社会の在り方を見直す取組を進めていきます。
考え方としては、その通りだろう。
2.子供・若者育成支援推進大綱
評価会議を踏まえてつくられた「子供・若者育成支援推進大綱」は、基本理念というよりも政策推進に当たっての基本方針に性格を変えている。
1 全ての子供・若者の健やかな育成
全ての子供・若者が、かけがえのない幼年・若年期を健やかに過ごすことができ、かつ人生 100 年時代、絶え間ない変化の時代を幸せ(Well-being)に、自立して生き抜く基礎を形成できるよう、育成する。
2 困難を有する子供・若者やその家族の支援
困難を有する子供・若者が、速やかに困難な状態から脱し、あるいは困難な状況を軽減・コントロールしつつ成長・活躍していけるよう、家族を含め、誰ひとり取り残さず、かつ非常時においても途切れることなく支援する。
3 創造的な未来を切り拓く子供・若者の応援
子供・若者が、一人一人異なる長所を伸ばし、特技を磨き、才能を開花させ、世界や日本、地域社会の未来を切り拓いていけるよう、応援する。
4 子供・若者の成長のための社会環境の整備
家庭、学校、地域等が、子供・若者の成長の場として、安心・安全な居場所として、Wellbeing の観点からより良い環境となるよう、社会全体、地域全体で子供・若者を育てる機運を高め、ネットワークを整え、活動を促進する。
5 子供・若者の成長を支える担い手の養成・支援
教育・心理・福祉等の専門人材から、地域の身近な大人、ひいては当事者たる子供・若者自身に至るまで、多様な担い手を養成・確保するとともに、それぞれの連携・協働の下、持続的な活躍が可能となるよう、支援する。
パブコメ意見には、
・日本国憲法の理念にのっとることを明示すべき。
・大綱案には、子どもの権利条約に言及した提案等を認めることができないが、児童の権利に関する条約の内容に沿うべき。
・子供・若者を育成すべき対象として見るのではなく、子供・若者の最善の利益を尊重することが確実に保障されることを優先するべき。
等がある。
ただ、これらは、子若法にも書かれているもので、むしろ、これでは、政策の推進力が弱いといえるだろう。むろん、いくつかの点で、気になる表現があるが、政策の推進力という点では、「子供・若者育成推進大綱」は、評価できると思う。
多摩市の子ども若者支援活躍条例では、「ビジョン」の基本理念を取り入れ、「大綱」の弱いところを補強し、自治体が今後注力すべきところを規定したものである。
(1)条例の基本となるのは、大綱の3である。子ども若者のひとり一人の価値、主体性を基本にし手制度を組み立てている。その表れとして、その権利性を明示した(法律は弱い)。これは憲法13条の個人の尊重に由来する。
(2)大綱の2,4の「縦のネットワーク(切れ目のない)」、「横のネットワーク」による縦糸、横糸による重層的支援を記述した。
(3)大綱3の具体化として、挑戦、活躍という発想とその後押しを前面に押し出した。なお、誤解があるといけないので、確認しておくが、「活躍」とは、起業ビジネスのようなことではなく、自己肯定感、自己有用感の発露、実践である。私は、自己肯定感、自己有用感を持てる機会をつくることが、最大の支援だと思っている。
このあたりは、さらに、詳しい関係図をつくってみよう。