松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆子ども若者育成支援推進法(子若法)の一部改正案(3)・責務規定

2021-11-27 | 子ども・若者総合支援条例
 責務規定が大幅に追加されている。

 現行法では、国の責務と地方公共団体の責務規定しかなかった。政府の役割を規定していた法律が、改正案では、保護者の責務や国民の責務などが加えられ、法律の性質が、大きく変わった。子ども・若者を社会を構成する重要な主体とし手捉えるのではなく、保護育成の対象としてとらえるという粗点が大きく変わった。

(保護者の責務)
第五条 親権を行う者、未成年後見人その他の青少年の保護者は、青少年の人間形成にとって基本的な役割を担うことに鑑み、基本理念にのっとり、その保護する青少年を健全に育成すべき第一義的責任を有することを自覚し、その育成に努めなければならない。
(国民の責務)
第六条 国民は、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、青少年の健全な育成に努めなければならない。
(事業者の責務)
第七条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、国又は地方公共団体が実施する施策に協力し、その供給する商品又は役務が青少年を取り巻く社会環境に悪影響を及ぼすことがないようにする等青少年の健全な育成に努めなければならない。

 子ども・若者の問題が、個人の努力や頑張りでは、とてもカバーできない社会的な、構造的な問題から生じているという問題意識があり、社会の仕組みや大人社会のあり方を変えていこうという目的で子若法がつくられた。それに対して、改正案は、保護者の責任に先祖返りしてしまった。これで何とかなれば、簡単な話であるが、もう一人一人の努力や奮闘だけでは、如何ともしがたいというのが、現状だろう。

 大人は自己責任というが、自分は社会に守られ、育てられ、そして今、自己責任を主張できるようになったのではないか。自分たちが、今の、子ども、若者の状況に置かれたら、自己責任でできるのか。簡単に言えば、学校を出て、自分はすぐに使い物になったかである。多くは、1年、2年、「使えない」と言われて、育てられたのではないか。それを忘れて、よくいうよというのが、若者の声である。

 若者に自己責任をいうのなら、自分たちも自己責任で暮らしたらよい。年金も放棄して、自分で稼いでほしい。これが声には出さないが、若者の思いだろう。たしかに、年金で暮らしながら、自己責任をいうのは、都合がよすぎる。

 ようするに、私たちは、助け合い、寄り添って暮らしている。その前提に立って、保護者の責任や国民の責任を論じるという立ち位置を明確にしないと、間違ったメッセージを送ることになるだろう。
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