松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆子ども・若者税を考える(多摩市)

2021-06-01 | 子ども・若者総合支援条例
 多摩市の子若条例は、ちょうどよい条例ができ始めた。

 全部で10条強の条例で、権利、支援、活躍のバランスがいい。最初は、5,6条の理念型の条例のような話もあったが、基本条例まで押しあがり、次の仕組みに展開できる土台はできたように思う。

 条例づくりで注力するのは、実際の運用である。できもしない条例をつくっても意味がない。その場合、できる条例の条件は、その条例を支える資源を用意できるかである。特に財源、人材資源が難しい。

 新しい仕組みができると、それを担う予算や人員が必要になる。条例づくりでは、常にこの点を頭に入れながら作っていくが、今回の条例で、どのくらいの資源が必要になるかは、まだ明確ではないが、確実に必要になる。

 その負担分を、本来ならば、「子ども・若者税」の創設でいくのが筋である。宮崎市の地域コミュニティ税のようなもので、「子ども・若者は重要なのだから」住民税の均等割に500円を上乗せする超過課税である。多摩市なら、3000万円くらいにはなるだろうか。これを基金にさまざまな活動を行うことになる。

 論文ならば、「子ども・若者税の創出を」というのが書けるが、しかし、実際には、この新税は、実現可能性は乏しいだろう。宮崎市でもあったように、新税反対・廃止という市長候補者が出て、こちらのほうが選挙で勝ってしまうだろう。

 「子ども・若者」はそこまで大事なのだという機運が盛り上がれば、新税反対・廃止論者は、ポピュリズムだと批判されるだろうが、実際は「困っているのは老人だ」という声に押されるだろう。さらに悪いことに、子ども・若者には、投票権はない。地方からの「子ども・若者税」は、困難なので、論文を書いても仕方がないかもしれない。

 ただ、国は、分からない。国税である消費税の値上げ理由に、「子ども」が使われるということはあるかもしれない。子ども庁は、そうした背景があるのかもしれない。

 子若税が無理だとすると、必要な経費をどのように調達するのか。どこの自治体でもそうであるが、多摩市では、このコロナ禍で、令和3年は、市民税が15億円減収した。来年度は、もっと厳しいかもしれない。東京都からの仕送り金も減っている。

 そうすると、少しずつ、あちこちの配布予算を減らして、余剰を生み出さないといけないが、多くの人は気が付かないので、「困っているのは私たちだ」という声にはならないだろう。それでも、結局は、弱いところ、文句を言わないところにしわ寄せがいくことになる。一番先に狙われるのは、自治体職員の給料で、給料そのものは簡単に減らせないから(泉佐野市では2割減らしたことがあるが)、結局、残業代を減らすことになる。

 仕事は増えるばかりなので事実上の残業は増える。その中で残業代の削減は、ただ働きか、必要な仕事を放り出して、さっさと帰ることになる。仕事の質がどんどん悪くなるし、働きにくくなる。最近では、公務員は、学生には進められない。

 こんな展開はいやなので、政策提案に当たっては、「稼ぐ」を念頭に入れて、行うことのが常となった。

 中長期的には、働き場が増え、働く人が増えて、税収アップ、社会保障費の削減を狙うことになる。そのために若者の出番と活躍である。もちろん若者の活躍の本義は、元気をつける、励ますであるが、中長期的には、税収アップ、社会保障費の削減も視野に入れている。

 同時に、人材確保の側面もある。税収減の中で、行政によるサービスは、やりたくてもできない。とすると、助け合う人材の育成である。若者の活躍は、その中短期的な展望である。

 かつては、審議会や委員会は、あるべき論を提案していれば、それで済んだが、今日では、それだけ難しさを増している。
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