松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆子ども若者育成支援推進法(子若法)の一部改正案(1)・目的

2021-11-26 | 子ども・若者総合支援条例
 少し前に、子ども若者育成支援推進法(子若法)の一部改正という動きがあった(第186回国会参法・修正案。結局は制定されなかった)。

 一部改正と聞くと、条文の追加、訂正くらいのイメージであるが、そもそもタイトルが変わっている。題名は、子ども若者育成支援推進法→青少年健全育成基本法である。

 青少年健全育成基本法は、これまでも提案され、制定はされなかった。私自身は、青少年の健全育成は、大事なことだと思っている。事実上、全都道府県で条例も制定されている。条例ではうまくいかないところもあるだろうから、それらを整理して、法律でなければ補えない部分を規定する法律作りがあってもよい。すぐ表現の自由が問題になるが、だからといって、未成年を守るという点は、否定できないだろう。

 「次代を担う青少年を健全に育成していくことは、我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎である。我が国においては、これまでも青少年の健全な育成のための様々な取組が様々な分野において進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。
 もとより、青少年をめぐる問題は、大人の社会の反映であり、この社会に生きる全ての大人がその責任を共有すべきものである。そして、青少年をめぐる問題は、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野にわたる広範な問題であり、青少年の健全な育成に関する施策をより効果的に推進してい
くためには、国、地方公共団体その他の関係機関及び国民各層の協力と密接な連携の下での国民的な広がりをもった一体的な取組が不可欠である。
 ここに、青少年の健全な育成に関する基本理念を明らかにしてその方向を示し、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進するため、この法律を制定する。」
 改正案に付け加えられた前文である。書き出し部分は、オーバーすぎるが、「青少年の健全育成」というアプローチからは、それなりの評価ができる文章だと思う。

 ただ、この法律作りが、難しいからといって、子若法の一部改正はないだろう。

 第1条の目的から、大きく変わっている。

元の第1条
 第一条 この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組(以下
「子ども・若者育成支援」という。)について、その基本理念、及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。

改正案の第1条
 第一条 この法律は、次代を担う青少年を健全に育成していくことが我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎であることに鑑み、青少年の健全な育成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、保護者、国民及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めること等により、青少年の健全な育成に関する他の法律と相まって、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

1.我が国社会の発展の基礎
 子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が基礎
      ↓
 次代を担う青少年を健全に育成していくことが基礎

 青少年が「健全」に成長していくことは、大事だと思うが、日本の社会が発展していくには、健全だけではだめで、若者が、次代の社会の担い手として成長していくことが基本になるだろう。

2.憲法及び児童の権利条約
 憲法・児童権利条約の規定をカットしてしまったということは、自民党の憲法改正案でも、端的に表れていて、日本社会の発展は、憲法13条の個人の尊重が出発点になるというのが、全く欠落している。
 個人の尊重とは、一人ひとりが価値を持っていて、その強み、特性を、一人ひとりが存分に発揮することで、頭がいい人は頭がいいという特性を生かして、新たな発明や発見を行い、勉強は苦手だけども、やさしい人はやさしさという特性を生かすことで、弱い人を支えるなど、それぞれが、百人百様、自分の特性を伸ばすことで、幸せに暮らせる社会をつくっていくという考え方である。
 この基本コンセプトをなくすから、健全な人で、日本社会を発展させるという無理な話になってしまう。

3.子ども若者支援
 子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取組を進めるため
        ↓
 青少年の健全な育成に関し、

 総合的な子ども・若者育成支援のための施策(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。
        ↓
 青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進する

 話が完全に変わっている。 

4.立法事実そのものから、違っている。
 困難を抱える子ども・若者は、改正案の立法事実の外にある。




 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆現時点で最も充実した「シビ... | トップ | ☆子ども若者育成支援推進法(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

子ども・若者総合支援条例」カテゴリの最新記事