松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆現時点で最も充実した「シビック・プライド条例」

2021-11-23 | シビックプライドをつくる(実践編)
 現時点で最も充実したシビック・プライド条例は、どこですかと、聞かれるので、私の意見を書いておこう。

1.相模原市の「シビックプライド条例」-ちょっと惜しい。
 名称にシビックプライドを持つ唯一の条例が、さがみはらみんなのシビックプライド条例である(2021年3月制定)。
 条例第1条の目的では、「この条例は、相模原市と関わりのあるみんなのシビックプライドを高めることを目的とします」と宣言し、第2条ではシビックプライドを定義し、「相模原市に対する誇り、愛着及び共感を持ち、まちのために自ら関わっていこうとする気持ちのことをいいます」としている。

 ここまではよいが、第4条以下のこの条例を動かす施策規定になると、まちの当事者性を高めるため規定は薄まり、シティプロモーションの色彩が濃い条例となってしまった。

 たとえば、第4条(市長の責務)では、「市長は、自ら相模原市の魅力を発信します」と、シティプロモーションの内容になっている。ここは、「市民のまちに対する愛着、誇り、共感を育み、当事者性を推進する仕組みをつくります」だろう。

 相模原市の条例が、シティ・プロモーション条例になってしまったのは、最低だった相模原市のランキングを上げようというものだったためと思われるが、もうひと頑張り、してほしかった。ちなみに、相模原市は、シビックプライド条例の制定を受けて組織改編を行い、シビックプライド推進部をつくったが、この条例の所管は、観光・シティプロモーション課である(本来は、自治推進課だろう)。

2.現時点で最も充実したシビック・プライド条例-福井県鯖江市の市民主役条例だろう
 現時点で最も充実しているのが、福井県鯖江市の市民主役条例(2010年制定)である。シビック・プライドを出発点に、内発性(愛着、誇り、共感)と当事者性を実践できる規定が盛り込まれている。

 その前文には、「市民一人ひとりの前向きな小さな声を集め建設的な大きな声とすることにより、思いを一つにし、ふるさとの再生に向けて喜びや痛みを共有、共感できるまちづくりを目指していきます」と書かれている。

 第2条の基本理念には、シビック・プライドの内容が、規定されている。
 
 第3条以下には、ふるさと学習(第3条)、鯖江ブランド創造(第4条)、ふるさと産業(第5条)、地産地消(第6条)、地域づくり(第7条)、ボランティア、市民活動(第8条)、情報の集約、発信(第9条)、市民と行政の情報共有(第10条)、市民参画(第11条)等、シビック・プライドを実践する規定が置かれている。

 鯖江市は、JK課で有名であるが、そのバックボーンが、この条例である。JKの活用という軽薄な感じの裏に、こうしたバックがある。

 シビック・プライド条例は、自治基本条例から考えていかないと、正しく理解できないが、このあたりは、拙著『市民がつくる わがまちの誇り-シビック・プライド政策の理論と実際』(水曜社)参照。

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