厚木市で空き家問題の委員会があった。ここで空き家の数が問題となった。
空き家問題の基本データは、総務省が行う住宅・土地統計調査である。これは日本の住宅の実態を把握するために、5年に1回に行うもので、厚木市では4600世帯を抽出して、そこから全体数を推計している。直近では、平成25年10月1日が調査期日となっている。それによると、厚木市の空き家数は14460戸であり、空き家率は13.6%で、国を0.1%、神奈川県を2.4%上回っている。
これに対して、空き家問題の検討にあわせて、厚木市では独自に調査を行った。委員会の検討素材とするとともに、今後のデータベースの基にするためである。こちらは水道情報を使うのもので、水道が1年以上水道が使われていない戸建て住宅を対象とする。その数は、3483件あった。ただ水道の閉栓というだけでは、工場もあり、マンション等の個室もあるので、それらを取り除くと、厚木市全体で戸建て住宅で空き家となっているのは、778戸になり、空き家率は1.45%になってしまう。
両者の数字は桁が違っている。ただ、もともと条件が違う。厚木市独自調査は、水道情報を使うので、空き家でも掃除のために水道を使えばそもそも対象にならないが、住宅・土地統計調査では、人が住んでいない空き家状態ならば、空き家になる。
また、住宅・土地統計調査には、マンションの一室も含まれている。他方、空き家法では、マンション丸ごと空き家のなった場合のみ、それを空き家とカウントする。厚木市の独自調査のほうは、対象を戸建て住宅と共同住宅全体が空き家となったものが対象なので、マンション一戸が空き家となったものが、すっぽり対象から除かれていることから、数がずっと少なくなる。
住宅・土地統計調査は、調査時点で空き家ならば対象となる。瞬間風速のものも含まれるが、他方、厚木市独自調査のほうは、1年間、空き家となっていると思われるものが対象となる。1年間という期間を設定したのは、空き家法の定義に準拠したためである。
たしかに条件が違っていて、厚木市独自調査のほうが数が少なくなるのはよくわかるが、それにしてもケタが違っており、どのように考えたらいいのだろうかというのが、素朴な疑問である。
この日の会議では、この数字を巡って、話が行き来した。例えば、厚木市の空家数はいくつなのか、あるいは空き家率は何%なのかと問われたときに、どのように答えるのかである。それぞれが根拠がある数字なので、逆に取り扱いに苦慮することになる。
両者の数が大きく違うというのは、他の自治体の調査でも現れてくる。その違いは、住宅・土地統計調査のほうは、部屋が空いている状態を事実として、客観的に見るものであるのに対して、実態調査のほうは、空き家かどうかの価値判断が入るためだろう。例えば、人は住んでいないことは明らかであるが、窓が開いていて、換気をしていることが分かれば、事実としては空き家かもしれないが、管理がされていて自治体が施策を行う対象ではないので、それを空き家とカウントする必要はない。実際、厚木市の調査でも、これは空き家から除かれている。
実は、会議が長引き、次の予定があるために、途中退席したので、その結末をどのようにつけたのかはよくわからない。何とかうまくまとまったのか、あるいは次回に持ち越したのか。私が持ち出した論点であるので、気になるところである。臨時に、もう一回やるとの連絡がきたので、明確には決着してないのだろうか。
時間切れで言えなかったが、私の理解は、空き家数や空き家率は、住宅・土地統計調査を使って言えばよく、厚木市の空家数は14460戸、空き家率は13.6%とすればよいと考えている。国の調査であるし、5年に一度の経年変化を見たり、他自治体との比較もできる。しかし、そもそも空き家があること自体は、直接、問題なのではなく、それが管理されていない場合が問題なのである。それを実態調査で調べたら、いくつあったといえばいい。
厚木市の実態調査では、勧告、命令、代執行につながる、いわゆる特定空家にあたるA区分は0件、管理不全で助言等が必要なB区分は209件、定期観察が必要なC区分は374件あり、C区分以上だと583件あった。これが直接の施策の対象として「注意すべき空き家」になる。つまり、全体空き家は14460件あるが、このうち、注意すべき空き家は583件あり、これについては、空き家対策計画に基づく助言等の施策を重点的に講じていき、それ以外の空き家が、この「注意空き家」にならないように施策を打っていくといえばいいのではないか。逆に言うと、それ以外の数字は混乱するし、出す必要もないように思う。
途中退席したのは、富山に行くためである。富山は、新幹線ができて本当に近くなった。東京駅から2時間10分。下手をすると、三浦半島の自宅から大学の研究室までにかかる時間と、さほど大きく違わない。新しい新幹線は乗り心地も快適で、飛行機はますます足が遠のいてしまう。
仕事の関係もあり、こんどいろいろとご教示いただきたく。