松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆空き家地区を歩く・横須賀②

2016-09-03 | 空き家問題

 横須賀の谷戸地区は、山あいに谷が入り組み、その谷から山に向かって狭い階段が続き、そこに住宅が張り付いている。

 このような地形的な理由から、谷戸に住む人は、おのずと限定されるので、小さな商店はかろうじてできるものの、公共施設やシッピングセンターのような施設は、駅のそばや海を埋め立ててた平地に建てられる。したがって、食料品や日用品を買う場合は、自動車やバイク・自転車などの交通手段が必要ということになり、逆に言うと、これら交通手段を使えないところにある谷戸の住宅地は、ますます空き家になりやすいということになる。 

 この結果は、調査データで裏付けられている。横須賀市の都市計画課が行った調査(2011年)によれば、谷戸地域に存在する戸建住宅7,144棟のうち、車を横付けできない建物が3,264棟(45.7%)、敷地へ至る道路に階段がある建物は1,888棟(26.4%)にのぼる。ほぼ半分の家が、車が入らないのである。 

 この谷戸地域内の7,144棟の建物のうち、空き家は562棟あり、空き家率は7.9%であった。ただ、空き家が1棟もない谷戸地域もあれば、空き家率が 18.5%に達する地域もあり、単に谷戸地域だからといって空き家になるというわけではない。 

 空き家率の高低を分ける第一の要素が、車の横付けができるかである。谷戸地域内の7,144棟の建物のうち、車を横付けできる建物は3,880棟で、このうち160棟が空き家で、空き家率は4.1%にとどまっている。他方、車を横付けできない建物3,264棟のうち、空き家は402棟で、空き家率は12.3%になっている。車の横付けの可否により空き家率に3倍の差が出ている。

 空き家率の高低を分ける第二の要素が、道路までの道に階段かあるかどうかである。谷戸地域内の7,144棟の建物のうち、道路にいたるまでに階段がある建物が1,888棟ある。このうち、空き家は265棟あり、空き家率は14%となっている。他方、車を横付けできない建物でも、至る道路に階段がない建物の空き家率は、10%に留まっている。車は入れないが、自転車やバイクははいれるということで、車の横付けの可否以上に、階段状の道路が空き家率の発生に大きな影響を与えていることが分かる。

 こうした事情を反映して、谷戸地域の人口は大きく減少している。市内全域の人口は、平成5年をピークとして、人口が減少し始め、直近では、40万人強まで人口が減少したが、谷戸地域では、すでに昭和63年をピークに減少が始まっている。市内全体よりも、10年先取りする形で人口減少が起こっている。

 さて、現時点でのまとめになるが、谷戸地域だからと言って、すぐに空き家になるわけではなく、車が横付けの可否や道路にいたるまで階段があるかが大きな要因となっている。ちなみに、この調査では、駅までの距離については、有意な差はないということであった。ただ、今後、人口減少がさらに進むと、今度は駅までの距離が問題にされはじめ、さらには谷戸であることそのものが問題にされるような気がするが、これはもう少し、時間の経過を見て、いえることかもしれない。


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