最低な私がどうやって名誉挽回するか……そもそも挽回というのがおかしいのかもしれません。だって、お二人はきっとそんなことは思ってません。私が逃げ出そうとしたことだってわかってないでしょう。
だからこれは……ただ私が自分自身を許せないだけです。自分で自分を恥ずべき人にしたくないだけ。けど恐怖というのはそう簡単に乗り越えられるものじゃない。
それはちゃんとわかってます。一度は覚悟を持ったのですけどね。私の生まれた世界での最後の戦いでは私だって死を覚悟して戦場に出てました。凄い魔法を授かれてましたけど、それでも戦場というのはどこで何がおきるのかなんて分からないでしょう。
それが戦場というもの……と聞いてました。それに実際に初めて感じた戦場の生の空気……怖気づいてしまいそうになっても、それでもあの時は私は戦場に出た。
まああの時は私は回復主体でしたけど。わざわざ砂獣に自分から向かっていく……なんてことは必要はありませんでした。それでも危険がなかった訳じゃない。あの時はちゃんと私だって覚悟……を決めたはず。
そして今の私はあの時ほどの回復魔法は使えませんが、総合的に見たらあの時よりも私は強くなってます。それは確実です。接近戦もできるようになりましたし、ポニちゃんという頼もしいパートナーだって……なのに……私は震えてる。あの時の勇気をもちあわせてない。
「うおおおおおおおおおおお!!」
激しい攻防を勇者様と腕は繰り広げてます。そんな中、近くにアイ様がやってきました。叱られるかもしれません。やっぱり私なんて連れてくるんじゃなかった――といわれるかもしれません。それが怖い。
「ミレナパウス」
そういう言葉には厳しさはありません。アイ様は勇者様よりも全然厳しいですけど、今も私も責める気はないのでしょうか? 私は役立たずなのに……
「うう……」
私はなんといえばいいのかわかりません。だから口を開けては閉じてるという事を繰り返してしまいます。そんな私を無表情な顔で見つめるアイ様。
そんな私にアイ様は手を伸ばして肩にその手を置きます。さらに顔を近づけてくる。耳元でささやかれる言葉。
「あれの事どう思う? それに周囲の目玉たち。奴らは同じ信号を送ってます」
「え?」
何をいってるのでしょうか? あの腕と周囲を囲む目玉たちが同じ信号を送ってる? それはどういうことなのか……
「信号とは?」
「信号は私達の言葉……みたいなもの。私達には理解できないけど、奴らが会話をしてると思ってくれたらいいです」
「なるほど。え!?」
私はびっくりした。アイ様の言葉が本当だとするなら……いえ、アイ様が嘘を言うはずはありません。ならば目玉とあの腕が会話をしてるのは本当なのでしょう。ならばなぜに? そう考えます。アイ様は最初にあの腕をどう思う? と聞きました。
この話を聞く前の回答は「脅威です」――というだけだっだでしょう。けど今は……私は周囲を見回します。そして戦ってる勇者様と腕。
私はただ目玉たちは動きを止めてるだけだと思ってました。けどそうじゃないとしたら? 普通、戦いながら会話をする……というのは大変な事です。
じっさいあの腕が私達と同じような感覚という保証はないです。でもわずかながらも大変なのにそれをやってるのだとしたら、きっと理由があります。
そう、理由……あの腕が私達の動きを完璧に把握してるのって
……