『ありがとうございます。けど……私はこの罰を受けます』
『そんな凡人のやり方で罪が償えるか!! 罪が万番あるのなら、その償い方だって幾通りもあるはずだ!! なのにこの法は万人に同じような罰を与えてる!! それはおかしいことだ!!
それで償える罪がどこにある!! お前が命をささげるよりも、その命を一生使って研究に使うほうが未来の為になる!! それも一つの償いだろう!!』
なるほど……と思った。確かに……ともね。実際八億人の命を奪った罪に対して、彼女が一人死刑になったとして、それで何になるだろうか? 使者は蘇らない。いや、そうだよね?
彼らの技術レベルならもしかして……とか思うけど、これだけ死者の事を言ってるんだからきっと死者をよみがえらせることは彼らもできないんだろう。それを前提としたら、やっぱり八億人の命は途方もなく重い。
彼女一人が罪を償うために命を失ってもそれで報われるのか? といえばもうそこは遺族の気持ちの問題でしかない。けどきっと彼らの法では八億人も殺したら死刑なんだろう。
むしろそれ以外何がある? みたいなさ。でも『彼』はその法は全ての人に平等に罪の償いを求めてる欠陥品でしかないといってる。彼の言い分的には彼女の命を奪うよりも彼女の才能、そしてその頭脳を使って罪を償わせる方がいい……ということなんだろう。
彼女は間違いなく天才なんだと思う。だからこそ、ここで法の下に平等に死刑を下すよりも、天才の頭脳を活用させていく方がいずれ必ずこの世界に、人類にとって易になる……それを主張してる。
その可能性はあるだろう。わかるよ。けど、きっと世間が、世論がそれを許すことはないだろう。責任を必ず求めるはずだ。てか求めてるだろう。だから彼女の刑は決定してる。
『私は……ここまでです。そして一つだけ言っておきます。私に間違いなどなかったと』
『貴様! 八億人も殺しておいてまだそんな!!』
そういって彼女は鎧の人たちが何かしたのか、電撃が彼女の全身を貫く。どうやら彼女の拘束されてる腕の腕輪。あれから発せられてるようだ。
『楽に死ねると思うな。貴様の頭は解析され、その命は輪廻を許されないようにユグドラシルの糧になることが確定している。命のエネルギー。エントロピーを吸いつくしてやろう』
そんな事を言われて彼女は乗り物に押し込まれて連れていかれた。どうやら死刑といっても私が知ってるような斬首とか絞首とか銃殺とか、そんなのではないらしい。もっとえげつない方法があるみたいだ。
『馬鹿やろう……』
彼のそんなつぶやきが空しく流れていく。
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