小頭はただポカンと口を開けていた。なにせ目の前では映画さながら……いや違う。映画以上の光景が繰り広げられるんだ。最近は映画も4Dとかなんとかいって、風がでたり水がでたり、椅子が動いたりしてエンターテインメントを催してくれる。けどそんなのが何だっていうのだ。小頭はそう思う。だって映画の200インチ? 300インチ? それだけの大きさのスクリーンであっても、それはやっぱりスクリーンの中でだけ動いてるもので作り物だ。
でも今小頭が見てる光景は違う。正真正銘、目の前で繰り広げられてる戦いである。最近はこういうのも小頭は何回か体験してる。それこそ悪魔との戦いとか……だ。けどあれは一体だった。一対多数。味方が多数だった。でも今回は違う。数えることもできないような魑魅魍魎の数々。そんな多数の敵に対して、鬼はたった二人で相対してる。てかこれは無双――といっていいだろう。漫画とかアニメでは無双はよくある。けど現実ではそうはいかないものだろう。もしもこの場に格闘技の世界チャンピオンがいたとしても、そしてよしんばあの魑魅魍魎達に格闘技が通用するとしても、きっと無双なんてできない。せいぜい数体を倒すのがやっとだろう。それは別に世界チャンピオンが弱いわけじゃない。
そういうものなのだ。いくら格闘技をきわめても、倒せるのは五人くらいか。それかめっちゃ頑張っても十人とかくらいだろう。人を倒すというのはそれくらい大変なのだ。そしていくら体を鍛えて、技を磨こうと、銃には結局勝てない。そんな世界……そんな残酷で当たり前の世界が今までだった。
けど……
目の前の光景はどうだ? 小頭の瞳には鬼たちが拳一つで魑魅魍魎たちを倒していく光景がうつってる。魑魅魍魎達はお腹が出てて、手足が骨ばってる腰位までしかないような小鬼がいたり、傘に一つの脚がついてる妖怪がいたり、青い火の玉がゆらゆらと揺らめいてたりしてる。他にも色々とどこかで見たことあるようなおどろおどろしい妖怪たちの姿がある。けどそれらを鬼たちは蹂躙してる。彼らが拳を一回奮えば何体も妖怪が粉砕されて、次に脚を奮えばさらに沢山の妖怪が触れてもいないのに吹っ飛んでいく。
そんな光景を観てたら小頭はあることに気づく。それは鬼たちが倒した妖怪たち。彼らは確かにその体が粉々になってた。けど、何やらそれこそ魂のような物が扉へと向かって吸い込まれていってた。それを見て小頭は思った。
「帰ってる?」
もしかしたら鬼たちはこうなるとわかってたのかもしれない。だからこそ、ここまで大胆に、そして容赦なく戦ってるのかも……それはあっという間だった。門からあふれてた魑魅魍魎達。それが粗方消えた。そこで二人は門の前に立つ。その時、再び巨大な腕が出てきた。