バン! バン! バン!
地獄の門から出てきた巨大な腕。赤黒く、筋肉質のその腕はとても大きいが、なんとなく小頭を抱えてる鬼の腕に似てると思った。そのスケールは数十倍は違うが、小さくしたらこの小頭を抱えてる鬼の腕になりそう。けどやっぱりその大きさは驚愕するものがある。だって片腕で地面を叩くたびに、山が……揺れている。けど不思議なことに鳥たちが飛び立つ……とかない。それが小頭にはちょっと不思議だった。だってこんな衝撃が伝わってきたら、それこそ山に生息してる鳥類が一斉に飛び立って空を染める……とかあるものじゃないだろうか? けどそんな様子は全くなかった。
「ひゃっ!?」
癇癪を起した子供のように山をバシバシと叩いてた腕。きっとデカすぎて腕だけしか出れないことにむかついてるんじゃないかな? と小頭は思ってた。するとそんな腕がいきなり小頭達の方に向かってきた。けどそれを余裕をもって鬼はかわしてくれる。
「捕まえられるとか思った……」
「あれはただ暴れてるだけだ。俺たちが狙われてるわけじゃない」
そんな風に落ち着いた声で言う鬼。けど小頭達が乗ってた木々はさっきの一撃で吹き飛ばされた。木々の枝に紛れて遠巻きにこの場所をみてたのに、小頭達の姿がさらされることになってしまう。けどどうやら魑魅魍魎達は小頭達には反応しないらしい。ただ山を下りて町へと向かってるみたいだ。
「なんで……こんなことに? どうしたらいいのあれ?」
小頭はこのまま魑魅魍魎が際限なく出てきたらどうなるのか……という事を考えて顔が青くなる。小頭は自分に何が出来るかなんて思ってないが、この事態を認識してるのが小頭ただ一人だとするなら、自分がやるしかないのかもしれない、くらいは思ってる。
「誰かが開いた」
「開いた?」
「あの門を開いたやつがいる」
「じゃあ、あれを開いた人を見つければ、閉じる事ができるって事?」
もしもバトル的な展開になったらどうしよう……と小頭は思ってた。けどどうやらどうにかなる? ちょっとだけ希望が見えてきたかもしれない。朝に起きたら眼の前に鬼が居て絶望が続いてたが、少しの光明が見えてきたかもしれない……と小頭は思った。