鬼たちは野々野小頭をある所に連れて来た。それはかなり深い山の奥。でも……それは異常……と言って差し支えないだろう。実際起きてからずっと異常だらけだから、これ以上なにに驚くことがあるのか……とちょっとは考えてた。
最近の出来事で、小頭だってそこら辺耐性ができてる。いや、できてた筈だっだ。けどこれは……
「なに……あれ?」
思わずスマホでパシャリと写真を撮ってしまう。こういうのってカメラには映らない……とかが定番だけど、データを見返してもちゃんと撮れてるみたいだ。
そこにあったのは門だった。そして門を中心に周囲の木々が外側に向かって軒並み倒れてた。それだけでもおかしいと言えばおかしい。でもそれだけだと不思議な門があるなーってくらいの感想しか野々野小頭は出なかっただろう。
だって今やそれなりの経験をした中学生の小頭だ。それくらいでは驚愕になんてならない。だって起きたら目の前に鬼がいた……の方がどう考えてもインパクトとしては強いだろう。
でも実際は目の前のそれは今の所インパクトとしては一位更新だと野々野小頭は感じてた。だって……その門は既に開いてて、そしてその周囲には青白い何かがゆらゆらと揺れてる。それにその内部……それは赤い渦巻のようになってるみたいにみえる。
さらにその門から出てきて伸びてる大行列。それは……
「百鬼夜行……ううん今は日中だし百鬼日行とか?」
こんな燦燦と夏の厳しい光が降り注ぐ中、この森の中にぶったってる門の内側から山へと延びる魑魅魍魎の数々。まるで……そう、これは……
「地獄の門?」
なんか教科書で百鬼夜行の絵巻みたいなのを小頭は思い出した。そこには地獄の門なんてのは乗ってなかったけど、この大量の魑魅魍魎を見ると、自然と「地獄」というワードが出て来た。
だから地獄のように魑魅魍魎を輩出してるこの門は、さながら『地獄の門』なんじゃないかって……
「貴方達もあそこから来たの?」
鬼たちにそんなことを聞く小頭。けど二人はちょっと視線を合わせてこういった。
「さあ?」
「私達は気づいたら『役割』を与えられてたわ』
そういった鬼二人。何があの今出て来てる魑魅魍魎と違うのか? とか思ってたら、門の真ん中くらいからでっかい腕が出て来た。
「ひゃあああああああ!?」
思わず小頭はお姫様抱っこしてくれてる鬼にその体をもっと寄せた。きっとそれだけびっくりしたんだろう。