「来たか」
「ははっこれってあれなのかな?」
「あれ?」
「ほら、これだけデカいとなると、あの山――」
「まさか……」
そんな事をのんきに言ってるふたり。そんな二人を見てたら、思わず野々野小頭は「危ない!」と叫んでた。だって地獄の門からでてきたでっかい腕が大きく持ち上がって下がってきてた。その下にはもちろん正面に立ってる鬼男と鬼女がいる。小頭の必死の叫び。それは届かずにズドオオオオン――と巨大な腕が地面に落ちた。その振動で思わず小頭はひっくり返る。
「あ……あぁ」
その衝撃の光景に小頭は地面にお尻をついたままそんな声を出してた。だって地面が……そう地面が巨大な手の形にへこんでる。信じられない光景だった。こんなのきっと鬼男も鬼女もぺしゃんこになってるだろう。そのことが……小頭にはショックなんだ。友達とかでは決してなかった。何なら、なんなのかすらわかってない。けど、ちょっとだけ交流したわけで、その中で彼の事少しはわかったような気がしてた。ぶっきらぼうだけど、優しい所とか……そんな事を思い出す。
けど命はあっけなく散ってしまった。余裕そうにしてたのに……そんな思いがあふれ出す。
「なんで……バカ……」
小頭が絞り出した言葉はそんなのだっだ。するとその時だ。何やら巨大な腕が持ち上がってきた。明らかに腕自体は下に力を入れてるみたいにみえる。けど、それに反して手は徐々に持ち上がりつつあった。
「なにか……いったか?」
そんな事を鬼男はいってたけど、流石に小頭には届いてない。けど、小頭からは巨大な腕を持ち上げてる鬼男事態はみえてる訳で……明らかにホッとしてる。
「そのまま耐えてて」
「早く頼む」
二人の鬼のそんなやりとり。どうやら腕を持ち上げてるのは鬼男だけのようだ。ならば鬼女は何をしてるのか……鬼女は体を低く保ち、集中してる。そしてその体は今迄にないくらいに赤くひかってた。熱を放ってるのか、湯気が沸き立ち、周囲の景色が揺らいでる。そしてその額の角……それも真っ赤に輝いてた。
「ふしゅううううううううううううううう」
そんな息を吐く鬼女。そして次の瞬間、彼女の攻撃が始まったのだ。それは嵐のような激しさだった。一回で終わらない、濁流のような連続攻撃。それによって巨大な腕は傷つき、おられ、変な音がして無様な様相になってしまってた。
門の向こうの声は届かない。けど、悲鳴を上げてるのはなんとなく小頭にも伝わってきた。