「そんな……」
おばあちゃんの声は慄いてる。そして小さく「ごめんね。ごめんね」――と小頭に対して謝ってくる。そんな様子をみる小頭は、今度は逆におばあちゃんの背中をポンポンとたたく。そしてこういった。
「大丈夫だよ。私は……大丈夫」
するとおばあちゃんは小頭を涙目で見てくる。そんなおばあちゃんの涙を小頭はハンカチでふき取ってあげる。そして鬼たちに向かってさらにきいた。なんか鬼男と鬼女は小声で話してる。たぶん――
「ちょっとどういう事よ?」
「さっき言ったとおりだ。小頭はそもそも俺たちを『違う』と認識してる。それはもうそういう事だ」
「……たしかに。あんたに気づかされるなんて屈辱だわ」
――とかなんとかいってた。きっと話を擦り合わせてるんだろう。なにせ鬼女も一緒に驚いてたからね。なので小声で話してる。そこに小頭は声をかける。
「私は、もう無関係ではいられないんだよね?」
その言葉に鬼男は今迄の印象通りにうなづくだけだっだ。やっぱりさっきの饒舌なほうが意外だったから小頭は「やっぱこうだよね」――と思った。
「怖くないの? 危険なんだよ?」
鬼女がそんな事をきいてくる。確かに小頭には特別な力なんてのはない。全く持って普通の人。普通の人間で、か弱い女子中学生だ。もしも超能力に覚醒とかしてたなら、自分を守る術だってあったかもしれないが、残念ながら小頭にはその兆候はない。けど小頭はそこまで怯えてる……とかはない。見た限りでは。
「怖くないっていったら嘘になる。けど、なんとかなるよ。私これでも結構修羅場くぐってきてるからね」
「まあ怯えて震えてるだけの奴よりも全然いい。いいじゃん。なら私が自己流の強化術を教えてあげよう」
「変な事、小頭に押しえないでください!」
鬼女のそんな提案に、おばあちゃんが食って掛かった。おばあちゃんは小頭に得体の知れない何か……をされると思ったんだろう。だから必死になってかばった。けど小頭は鬼女的なジョーク。冗談だという事はわかってる。おばあちゃんがあまりも必死になってるから、きっと鬼女は遊んでるのだ。
「もう、大丈夫だよおばあちゃん。それに私たちは仲間なんだよ。もっと信用してあげて。この人たちは危害を加えたりしないよ」
「本当に? 絶対?」
疑わし気な感情を隠そうとしないおばあちゃん。けど、それもわかると思う小頭だ。どういったらいいのか? と悩む。実際、二人とも屈強だし、大きい。鍛えてるのかぱっと見でわかる体つきだ。鬼男は言うまでもなく、筋肉の鎧が出来上がってる。鬼女は筋肉も見えるが、それでもちゃんと女性的な線を維持してるまさに理想的な体をしてた。そして二人ともやっぱりデカい。鬼男は二メートル近くはあるだろうし、鬼女だって180は超えてるだろう。
だから二人ともとっても強そうに見える。彼が一発でもその拳を向けたら大ダメージは免れないだろう。だからこそ、警戒をおばあちゃんはとけない。だってそれが小頭を守るためだから。
(でも四六時中こんなんじゃ、いざって時に疲れちゃってるよ)
そう、そんなのは本末転倒だ。だからこそ、おばあちゃんにはこの鬼二人を信用してほしいと小頭は思ってた。