大島恵真(おおしま・えま)の日記

児童文学作家・大島恵真の著作、近況を紹介します。
絵本作家・大島理惠の「いろえんぴつの鳥絵日記」もこちらです。

イラストコラム・第7回

2013年05月14日 | 執筆の仕事
みなさま こんにちは!
暑くなりましたね!
庭の小さな花壇も、ビオラやペチュニアの花でいっぱいになってきました。
夜、庭を通ると、花の香りがするのも初夏らしいです。

さて、イラストコラム「つれづれな生き物たち」(進学レーダー2013.vol.2)のご紹介です。

今年にはいって、実家の母の様子をみるために、
月1回、帰省しています。
(べつに、どこか悪いのではないけれど、高齢なので、いちおう)
帰省すると、なにもすることがない(笑)ので、
庭にいるか、絵を描くか、本を読むか、ということになります。
そんなわけで、庭の花の絵を描くことが増えました。

花は不思議です。
グラスなんかに活けて、次の日の朝、机を見ると、
鮮やかな花の色合いに、心が明るくなって、
また、花を描きたくなるのです。
自然のものを描いていると、飽きないのも不思議です。
デザインの始祖、壁紙のウィリアムモリスも、
自然は芸術の一番の先生だと書いていた気がします。

素人目線でお届けする生き物コラムです。
ご意見、ご感想などありましたらお知らせくださいませ。
(oshima.rie☆nifty.com)

シジュウカラ巣立ち(2013.5)

2013年05月09日 | スケッチブック
みなさま こんにちは!

けさは、庭の巣箱のシジュウカラのひなが全部巣立ちました!
ヒトの家のシジュウカラの話などおもしろくないと思われますが、
毎日、観察してきた身にすると、感慨もひとしおなので、報告させてもらいます。

今回巣立ったのは、たぶん5羽。
現場を見逃したので(惜しい)わかりませんが、裏のお宅の庭に5羽いたし、
巣箱からは声もしないので、5羽ということにしておきます。
両親は、オスのBちゃんとメスのAちゃん。
なぜメスのほうがAなのかというと、Aちゃんは、去年の6月から
うちの庭にきていたヒナだったからです。

去年の6月28日、庭に来るようになったAちゃん。
毎日観察しているうちに、緑色の羽は少しずつ黒くなり、
おとなのシジュウカラっぽい外観になりました。
秋になると、太いネクタイのBちゃんが登場。
このころは、ぎざぎざネクタイのCちゃん、細ぎざぎざネクタイのDちゃんなどもいたのですが、
だんだん、BちゃんとAちゃんで安定してきました。

はじめてAちゃんが庭の巣箱をのぞいたのは、春のきざしのみえた2月20日。
巣箱に入ったのが、あたたかい風の吹いた3月18日。
3月19日には、巣穴をコンコンつついてカスタマイズ?するAちゃんの姿がありました。
シジュウカラはメスが巣作りをするようで、
3月20日から、Aちゃんがひとりで巣材を運び始めました。
スズメに巣箱をおそわれそうになると、
ヒナの頃からの気の強さで、ひとりで応戦。

そんななか、4月19日、ようやくBちゃんが働きはじめます。
虫をくわえて、巣箱をのぞき、虫をくわえたまま、去っていきました。

そして4月20日、巣箱から「シシシシ…」とヒナの声が聞こえました!
新米ママのAちゃんは、ひそかに卵を生み、あたためていたんですね。
前日のBちゃんの行動は、ヒナがまだかえっていないということだったのでしょうか?
小雨のなか、夕方までに、ヒナの声は複数になりました。

それから、Bちゃんはおおいそがしです。
ヒナのごはんである虫を、何度も巣に運びます。
虫の大きさは、初日は1センチ以下の小さなものだったのが、
だんだん、1.5センチくらいになり、「いもむし」とはっきり認識できる形になりました。

4月25日には、巣からヒナのフンをくわえて持ち出すAちゃんの姿が。
それからは、夫婦で虫さがしです。
虫の種類も、シャクガ(たぶん)の幼虫、クモ、ガなど、さまざまに。

虫をくわえてきたBちゃんが巣箱に入ろうとすると、
同じく虫をくわえたAちゃんが、となりの枝で羽をふるわせていることもありました。
去年までヒナだったので、ヒナ時代を思い出してしまったのか???

家の前の電柱に天敵カラスがじっととまり、夫婦は巣箱に近づけないこともありました。
やむなく、人間が窓から手を出してカラスを追い払うと、
待っていたように、二羽が飛んできました。
(ツバメは人通りの多い場所を巣に好むということですが、住宅街のシジュウカラも???)

孵化から14日目、夫婦は朝からおおいそがしですが、
ときどき、Aちゃんが、Bちゃんに対して羽をふるわせてジージー鳴きます。
この行動は、巣立ちの2日前までひんぱんに見られました。

孵化から18日目、おもに働いているのはBちゃん。
Aちゃんはというと、虫をとってきても小さいのだったり、もってこなかったり、
朝、数粒出している皮むきヒマワリを餌台からもってきて、
巣箱の横で自分だけで食べていたり、
そしてBちゃんが来れば、羽をふるわせます。
これは、もう次の繁殖のことを考えているのか???と頭が?でいっぱいになった、翌日。

19日目。天気もよく、朝から気温が上がっていきます。
大阪万博公園の記録では、シジュウカラが巣立つのは孵化から18~20日ということで、
きょうあたりが巣立ちか?とこちらもそわそわしながら窓の外をのぞきます。
ところがこの日、Bちゃんの姿が見えません。
虫をもってくるのは、朝からAちゃんだけ。
きのうまでのやる気のないAちゃんとはちがう鳥のように、2分おきに虫をゲットしてきます。

とうとう、Bちゃんの姿は見えませんでした。
死んでしまったのでしょうか。

Aちゃんは午後からの強風のなかも、機械のようにいったりきたりで虫を運んできます。
運んできては、フンを持ち出す。
その間、ヒナたちは、巣穴から外をのぞき、鳴くようになりました。
もう、シジュウカラの顔をしています。
ヒナの声に引き寄せられたのか、スズメやメジロが巣箱をのぞきにくると、
Aちゃんはすかさず追い払います。
カラスの声がすれば、すっとんでいって様子を見、
うちの猫のしっぽが窓から見えれば、仁王立ちで目を丸くして見、
いそがしいこと、このうえありません。
Aちゃんの奮闘は、この日の18時すぎまでつづき、夜は、巣箱は静かでした。

そしてきょう、孵化から20日目。
気になって5時30分に起きて、窓をあけても、ヒナの声は聞こえません。
あれ、巣立っちゃった?と思っていると、
窓の開く音に気づいたのか、畑からすっとんできたAちゃん。
ママの羽音を聞いて、ヒナたちも、「ジジ」と小さく鳴いて目覚めたようです。

それにしても、まだAちゃんは虫をもってくるので、
もう1回寝てから観察、と思って寝ていると、
7時前、急に巣箱がさわがしくなりました。
ヒナの声が大きくなり、Aちゃんらしき親鳥の「ピツピツ!」という声が聞こえます。
Aちゃんの声は巣から離れたところで何回も聞こえます。
もしや巣立つ?と思ったとき、
2階の窓の外に、横切る鳥の影が。

巣箱の見える部屋にいってみると、もう巣立ったあとでした!
孵化してから20日目で、一瞬のうちに、巣立ちは決行されたのです!

3年前、はじめてヒナが庭で巣立ったときは、
孵化から14日目(と思ったのですが、もうちょっとたっていたかも)、
巣立ちの時間も最初のヒナから最後のヒナまで、30分かかりました。
そのときの巣箱は底が浅かったので、
ヒナが穴からとびだしそうになる姿がよく見られました。
やむなく、早めに巣立ってしまったのかもしれません。
ヒナたちは、まだしっぽが短く、ヒナ顔で、
飛べないで地面に落ちるものもいて、
けっこうはらはらしたものでした。

今回は、そのような心配はありませんでした。
ヒナたちは、Aちゃんの誘導のもと、無事、裏のお庭に移ることができました。
カラスにもみつかりにくいし、Aちゃんの懸命さがみのったかたちでしょうか。

新米1年生ママの奮闘にはおつかれさま、と、
姿を見せなくなってしまったBちゃんの奮闘にも、よくがんばったね、どうか無事で、
と祈りと敬意をあらわしたい、初夏の朝でした。





黒猫ノアール 2013年5月

2013年05月02日 | 黒猫ノアのはなし
 1週間前から、黒猫がうちの玄関で暮らしています。ネコが家の中にいるなんて、その前日までは思ってもみないことでした。

 発端は、その1週間の5日前。庭のシジュウカラの巣箱からヒナの声が聞こえてきて、喜んでいたその日あたりから、野良の黒猫が庭に来るようになりました。庭の虫にじゃれついたり、門にすわって通行の人をながめたり。あどけなさの残るネコだなあ、とあたたかい気持ちで見ていたのですが、そのうち巣箱の横の塀にすわるようになり、シジュウカラの親たちが巣箱に頻繁に虫を運んでくるようになった1週間前、とうとうシジュウカラの行動に気がついてしまいました。

 目を輝かせて巣箱の真下に陣取る黒猫。シジュウカラの親たちは、巣箱に近づけずに前の電線でツピツピ鳴くばかり。そこで急遽、黒猫捕獲作戦を決行。かつおぶしを手にのせて、つかまえたのです。まだ1歳にならないくらいの子ネコなので、おもいのほか簡単につかまりました。

 ところが、子ネコだと思っていたものの、玄関に閉じ込めてみると、かなりの大きさ。黒いから、縮小して見えたのかもしれません。しかも、庭では逃げがちだったのに、家の中に入れたとたん、人の体のまわりをぐるぐる回る慣れつきよう。玄関に置いた簡易ネコトイレも一発で理解しました。

 このネコが姿を見せたのは昨年の夏で、母親らしい黒猫といつもいっしょでした。この母ネコがなかなか優秀で、子ネコが畑から道路に飛びだそうとすると、前足でさっと制御して、車が行きすぎるのを待ってから二匹で道路を渡るという慎重ぶり。この母が、野良ネコとして人に好かれるためにはどうしたらいいのかを子ネコに伝授したのかな、などと勝手に思い描いています。

 あまりに慣れているので、だれかに飼われていたのかなと思い、えさをあげていたと思われるお宅に聞きにいくと、うちじゃ飼ってませんからご自由にとのこと。
 このまま庭に放したらシジュウカラの妨害になるので、飼ってみることにしました。脱走しても近所の迷惑にならないように、ネコにはかわいそうですが、去勢手術をしてもらおうと病院につれていくと、もう済んでますとのこと。えさをあげていたと思われるお宅で、やってくれたのかもしれません。やはり、ある程度、飼われていたのかもしれません。でもご自由にと言われたことだし、せっかく病院にもきたので、健康診断やワクチンの接種をしてもらいました。

 名前と誕生日も決めましょうと言われたので、名前はノア、誕生日は特に理由もないのですが、春生まれの1歳でしょうというので、3月1日にしました。考えたり悩んだりする時間がなかったのは、かえってよかったかもしれません。他人の(ネコでも)名前や誕生日を決めるなんて、いくら考えたり悩んだりしても、進展はなかったと思います。

 ノアは、フランス語の「ノアール」(黒とか夜といった意味)からつけました。いつも使っているフランス製の木炭鉛筆の商品名でもあります。しかし、動作がどたどたしていて、タヌキのタヌさんといった風情。
 どうどたどたしているかというと、玄関には棚があり、ノアはその棚の上が好きなのですが、保護したその夜に、ずどーーーーん!と轟音がするので玄関を見に行くと、ノアが棚から落ちたのでした。体が大きいので、まるくなって毛づくろいをしている途中で落ちてしまうのです。その後もよく、そういうことがあるのです。

 寺田寅彦のネコの随筆によれば、寺田家にはメスの「三毛」とオスの「玉」がいて、三毛は音もさせずに高い所からおりるのに、玉のほうは降りるというよりは「落ちる」のだという記載があり、まったくノアも玉と同じで、落ちたりぶつかったりするネコなのでした。

 群ようこさんの「トラちゃん」には、オスネコの単純なかわいらしさ、という記載もあります。ノアもたしかに単純に喜ぶネコで、また人が大好きなようで、玄関を通るときはだれかれかまわずまとわりつきます。居間で笑い声なんかがすると、さびしいのか、ニャーニャー鳴きます。会いに行くと、ゴロゴロとノドをならして鼻をつきだします。鼻と鼻であいさつせよ、ということなのです。

 スケッチをしてみると、ネコはなかなかじっとしていないことがわかります。ちょっと描くと動き、目があうとこっちに来るので、正面顔が描けません。ネコにかぎらず、インコでもオウムでも、人間の子どもでも同じで、じっとしているように見えても、つねに細かく動き続けているので、5秒くらいで1ポーズを描ききることが求められます。動くものを相手にしていると、絵がうまくなりそうです。

 結局、スケッチできたのは、後ろ姿のみ。このイラストではありませんが、窓の外の、シジュウカラの巣箱をみつめている姿です。ノアは、シジュウカラの親たちが塀にスタッと止まるたびに、耳をぴんと立てて夢中でながめます。明日で、ヒナが孵化したと思われる日から2週間になります。そろそろ巣立ちかもしれません。しばらく、ノアにはがまんしてシジュウカラのことを忘れてもらいたいものです。

 ヒナの巣立ちも、家の前が道路なので心配です。3年前は、巣穴を飛び出したヒナたちは、3羽ほどがまっすぐに道路をつっきって向いの畑に落ち、残りの3羽ほどは玄関のドアに衝突して庭に落ちました。窓からながめていて、「これが巣立ちか!」と、あまりの急さとイメージのちがいにおどろいたものです。道路にはよく車が通るし、家の前の電柱にはカラスがいるし、ネコはいるしで、人間が協力してもなお、住宅街の鳥の子育ては苦労が多そうです。

 ヒナたちの新しい門出は、どんなでしょうか。ヒナたちの生きる真剣さ、親鳥たちの必死の誘導、きっと今年も、目が離せないと思います。とつぜんの黒猫との出会いとシジュウカラの子育てで、あわただしくも、初夏らしい活気にあふれた1週間となりました。

※イラストは「凹んだってだいじょうぶ」(清流出版発行・岸本葉子編)より by Rie Oshima