大島恵真(おおしま・えま)の日記

児童文学作家・大島恵真の著作、近況を紹介します。
絵本作家・大島理惠の「いろえんぴつの鳥絵日記」もこちらです。

小劇場にて

2019年09月30日 | 個人的なエッセイ
みなさま、こんにちは!

先週、両国にある小劇場「シアターX(カイ)」に初めて行ってきました。
ポーランドの劇団「テアトル・カナ」の公演「人口密度」を観るためです。
『チェルノブイリの祈り』(スベトラーナ・アレクしエービッチ著)を原作にした劇でした。
前衛的な作品なので、説明するよりも、自分が感じた部分を書いていきたいと思います。

会場に入ると、真っ暗な舞台に薄明るい部分が見えます。
グレーだけの世界が静謐でとても美しい、と思いました。
観客も静かで、その静けさを共有することが、とてもいいな、と思いました。

音楽が流れ始めて、舞台の中央がちょっと明るくなります。
小さな美しい水槽(金魚を飼うみたいな感じの)の前に、男性が立っています。
水槽の中は水色と緑色で、地球の自然が凝縮されているようです。

その上に、雲のオブジェがつり下げられています。

この後、男性を含めて4人の男女が言葉や踊りを繰り広げるのですが、
この雲のオブジェは、照明の加減で色が変化していきます。
変化するのに気がついたのは、いつのまにか、雲が燃えるような色になっていたからです。
それからだんだんと、火が消えていくように色が変化し、
最後には、全体の照明がふっと消えて、雲はグレーになりました。

雲の下の俳優さんたちのアクティブな動きと、静かに存在する雲との対比が、印象的でした。

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原作がチェルノブイリの事故を扱う作品であるため、
織り込まれたテーマも深いものがあったと思います。
劇の後、ロビーで観客の方と団員の方々との通訳をまじえたトークがありました。
こういう小さなトークセッション、とてもいいなと思いました。
さまざまな感想や意見が出ました。
若い方の中には、原発の是非について悩んでいるという意見や、
カタストロフィに憧れてしまう点をどうしたらいいか、といった問いかけもありました。
団員の方々は、それぞれの問いに、ていねいに答えていました。
前から考えていた言葉というよりは、その場で考えぬいて、
そのときのベストな言葉で返した、というような深さがありました。

私が思ったことは、
俳優さんたちが激しく踊っていたのは、生身の人体の限界を私たちにつきつけていたのでは、
ということです。
何度も同じ踊り、同じ応酬があり、そのくりかえしをずっと見せつけられていました。
それは、生身の人間というものを、考えてほしいということだったのではないかと思えました。

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劇場の場所は、両国国技館のお向かいにある、回向院の隣でした。
なかなか訪れることもなかった場所ですが、
お相撲は国技館ができるまでは回向院で行われていたそうです。
昔からさまざまな芸能が行われた場所でもあったと思います。
いろいろな人の思いがここにわきあがっていたんでしょうね。

2019年の講談社児童文学新人賞授賞式に参加しました

2019年09月16日 | ごあいさつ
みなさま ごぶさたしております。
今年に入って私生活でいろいろとあったため、すっかり更新できなくなっておりました。

ようやく秋の入り口となった今月なかば、
恒例の講談社児童文学新人賞・絵本新人賞の受賞パーティに参加してきました。
恒例の、とはいえ、呼んでいただけるのは数年。
同期の受賞の方々や先輩作家さん、受賞のみなさんとお会いできるすばらしい場です。
ふだん、横の繋がりがあるようでない立場ですので、
進捗状況やお悩みを聞いたり聞いていただいたり、
活躍される方のお話を聞けたりと、脳も心もどんどん活性化!

二次会では、担当編集さんとも打ち合わせでき、
(関西など遠方の作家さんは、その日のお昼などにすでに打ち合わせを済ませている)
なんとなく進んでいけばいいや…と思っていた作品に、いっぱつ喝を入れていただきました。
個人的には、なんとなく進んで、でもなかったのですが、
自分だけで考えているとどうしても客観的になれませんので、
プロの編集者さんの意見はたいへん貴重でした!

台風の被災地からいらっしゃった受賞者さんも。
どうか、ご自愛くださいませ。

来年は、受賞されたみなさまの作品が、続々刊行されることでしょう。
新刊を読めるのを楽しみにしつつ、私も心機一転、がんばります!

※イラストは本文とは関係なく、ずっと前に描いた絵です。でも、今の気分をあらわしているかも!