暇な弁護士の暇つぶし日記

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通知義務違反(無断修繕)と必要費償還請求(民法608条1項)の関係

2020-07-17 14:48:09 | 法律
必要費に関する民法の規定は以下のとおり。
(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

必要費の請求をするために,貸主の承諾は必要とされていないため,借主は無断で修繕しても必要費の請求が可能である。
民法615条では,修繕を要する場合には,賃借人は賃貸人に通知しなければならないとされているが,通知をしなくても必要費の請求は認められる(よほどのことがなければ)。

ところで,新民法で,607条の2が新設された。
(賃借人による修繕)
第六百七条の二 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

問題は,これまで民法615条の通知を怠っても必要費は請求できるとされていたが,607条の2の通知を怠れば修繕権はないから,無断修繕として用法違反になり,必要費の請求も認められないのではないかと疑問が生じることである

そうすると,607条の2は借主の修繕権を明示したとともに,必要費償還請求権の要件を加重したということになるのか。

一見すると,借主の権利を明示した借主のための改正のようにも見えるが,必要費との関係では,借主に不利な改正かもしれない。
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