アガサ・クリスティーが別名(メアリ・ウェストマコット)を使って書いた作品。ネットレビューで評価が高かったので読んでみました。
なんで別名かというと、ミステリじゃないから。日本ではハヤカワミステリからアガサ・クリスティー名義で出版されています。
家族(や他人)のためを思ってしたことが、実はひとりよがりだった…というよくある日常の話なんだけど、その状況がいかに恐ろしく悲しいことなのかをリアルに描いている。クリスティーの力量のすごさをみせつけられる作品。
「クリスティーなんて中学生が読むものだよね」というセリフをずいぶん聞いたものだけど、そう言った人たちにこの作品を渡してみたい。
自戒のためにも一度読んでおくといいと思うけど、押し付けがましい生き方をしている人はどんなチャンスを与えられても気づけないものなんだよね。その人の押し付けがましさを甘んじて受けている、笑顔の仮面をかぶった家族や友人がいる限り…。
人間て怖い。
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お気に入りのシーンは、丘の上で4フィートの距離をあけて男女が立っているところ。恋愛の醍醐味って、相手に触れることができない短い期間にギュッと濃縮されてると思うわ。
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2013/1/6(正月休みに追記)
この作品はとても印象に残っているので、ときどき振り返ることがある。
今回も時間がたくさんあったので振り返っていたのだけど、ネットを見ていると「この作品の持つ意味がわからない」という意見が結構あって驚いた。
何も感じない人と言うのは、きっと幸せな人生を歩んできたのか、もしくは作品中のお母さんと同じタイプの人なんだろう。
本気で「わからない」という人がいることに、少し驚いた正月休みでした。