1939年、東部戦線。
カールスラント国境の名もなき村はずれに居た第8中隊から、この物語は始まる。
20年間の沈黙を破り、突如侵攻してきた人類になすすべはなく、戦局は悪化する一方だった。
「おい、シャル。少しは体を休めておけ。」
エリーゼ・フォン・バウアー中尉が部下であるシャルロッテ・シュルツ准尉に話しかけた。
「バウアー中尉、スペアパーツのない整備中隊になんかに任せるられませんよ。
戦闘中のエンジントラブルは悪夢ですし、自分の「靴」は自分で確かめるのが一番ですよ。」
機械油で汚れた顔をエリーゼに向ける。
やや黒っぽい髪に全体的にまとまった顔は庶民のちょっと可愛げな女の子といった感じで。
貴族の証しである「フォン」がついてピシッ、と決まった金髪碧眼のいかにも貴族のエリーゼとは大違いだ。
もっとも、エリーゼは貴族生まれにもかかわらずシャルロッテと同じく男のような口調で話すが。
なるほど、よい心がけだ。
よい兵士とは命を預けるものに常に整備を怠らないことだ。
そう思っていたときに後ろからノコノコと人が来た気配を感じ後ろを振り向く。
「あ、あの。第8中隊はこちらですか!」
足に陸戦ユニットを履いた12、3歳程度のあなどけない少女が立っていた。
肩についている階級章はウィッチの最低階級である軍曹。
エリーゼたちの薄汚れた軍服と違いピカピカな軍服を着用しており、
今日来ると聞いた新人だな、と彼女は思った。
「君か新任の補充兵は。
第8中隊へようこそ、中隊といっても動けるのは君と合わせて5人ぐらいだが……私はエリーゼよろしく」 」
緊張気味な赤い髪の少女と握手する。
オドオドとしたままで、エリーゼはいかにして娑婆っ気を抜かすのか考える。
「今整備しているのがシュルツ准尉、
隣から順にマイヤー曹長、ハンス軍曹だ。ほら、挨拶しろ」
「はい!クリス・ウェーバーであります」
直立不動で4、5歳離れた少女たちに挨拶する。
初な所がエリーゼ以下、内心可愛さを覚えた。
「さっさと、荷物を片付けろ。クリス・ウェーバー。
主砲の整備をハンスとやれ、雪が降る前に本物の機械化歩兵にしてやるぞ」
「はい!」
「開閉器に少しでも汚れが朝まで砲弾磨きと歩哨任務だぞ。」
「ハイ!シュルツ准尉殿。」
クリスは駆け足で背負っていた荷物を置きに走る。
視界から見えなくなった時にエリーゼはシャルロッテに話しかける。
「で、使い物になるかあのひよっ子は?」
「愚問ですぜ、中尉殿。使い物になれるか?ではなく『使い物にさせる』のです。」
「そうだったな、時間があまりないとはいえあまり無理はさせるなよ。」
「了解です、中尉殿。」
視界の脇から話題の人物がやってきたのでこの話は終わり、
『使い物にさせる』べく新人教育がこの後されるはず、だった。
低く腹に響くような鈍い音が担当戦区に響いた。
ローマ字で擬音表示するならばDOM!DOM!といった感じだ。
「お客さんだ!
パーティーが始まるぞ。
無線を受信に切り替え戦闘準備!」
「了解、新人!ぼさっとするな!」
「や、ヤ―!」
5人の少女たちは陸戦ストライカーユニットに足を入れ。
使い魔とリンクし、ケモノ耳を頭から出現させる。
ペットボトル大の砲弾を腰のパックに入れ、肩にはウィッチ用の37ミリ砲を担ぎ魔道エンジンを吹かす。
「戦闘準備完了!」
3分後、
鋼鉄の脚を履いた戦乙女が即応待機状態で現れた。
『鉄拳より黒騎士へ、
コード7発生。B6へ急行されたし』
『黒騎士受信せり、出動する』
連隊本部より無線で連絡を受ける。
そして一斉にエンジンがうなり、B6に向け全身を開始した。
「黒騎士3、4兵の右側へ。
間距離50で前進、攻撃しろ。
黒騎士2、5と左へ回る成功を祈る。」
ユニットの足の部分から猛烈に泥をはねのけつつ5人の魔女は進む。
やがて前方に指定した丘が眼前に現れ、砲声もこれまでもないほど大きく響く。
エリーゼは思う。
丘の両側にある森林地帯に湿地帯に敵はいないか?
丘まですでに突破されていないか?
いや、それよりも問題は新人か。
横にいる新人ことクリス・ウェーバーを盗み見する。
顔は青く、緊張で風が吹けば今にも倒れそうだ。
戦力的に置いてゆくわけにもいかないから、こればかりはやむえない。
いざとなれば……まあ、なんとかなるだろう。
そう、気軽に考えた。
戦場が見えてきた。
カールスラント国境の名もなき村はずれに居た第8中隊から、この物語は始まる。
20年間の沈黙を破り、突如侵攻してきた人類になすすべはなく、戦局は悪化する一方だった。
「おい、シャル。少しは体を休めておけ。」
エリーゼ・フォン・バウアー中尉が部下であるシャルロッテ・シュルツ准尉に話しかけた。
「バウアー中尉、スペアパーツのない整備中隊になんかに任せるられませんよ。
戦闘中のエンジントラブルは悪夢ですし、自分の「靴」は自分で確かめるのが一番ですよ。」
機械油で汚れた顔をエリーゼに向ける。
やや黒っぽい髪に全体的にまとまった顔は庶民のちょっと可愛げな女の子といった感じで。
貴族の証しである「フォン」がついてピシッ、と決まった金髪碧眼のいかにも貴族のエリーゼとは大違いだ。
もっとも、エリーゼは貴族生まれにもかかわらずシャルロッテと同じく男のような口調で話すが。
なるほど、よい心がけだ。
よい兵士とは命を預けるものに常に整備を怠らないことだ。
そう思っていたときに後ろからノコノコと人が来た気配を感じ後ろを振り向く。
「あ、あの。第8中隊はこちらですか!」
足に陸戦ユニットを履いた12、3歳程度のあなどけない少女が立っていた。
肩についている階級章はウィッチの最低階級である軍曹。
エリーゼたちの薄汚れた軍服と違いピカピカな軍服を着用しており、
今日来ると聞いた新人だな、と彼女は思った。
「君か新任の補充兵は。
第8中隊へようこそ、中隊といっても動けるのは君と合わせて5人ぐらいだが……私はエリーゼよろしく」 」
緊張気味な赤い髪の少女と握手する。
オドオドとしたままで、エリーゼはいかにして娑婆っ気を抜かすのか考える。
「今整備しているのがシュルツ准尉、
隣から順にマイヤー曹長、ハンス軍曹だ。ほら、挨拶しろ」
「はい!クリス・ウェーバーであります」
直立不動で4、5歳離れた少女たちに挨拶する。
初な所がエリーゼ以下、内心可愛さを覚えた。
「さっさと、荷物を片付けろ。クリス・ウェーバー。
主砲の整備をハンスとやれ、雪が降る前に本物の機械化歩兵にしてやるぞ」
「はい!」
「開閉器に少しでも汚れが朝まで砲弾磨きと歩哨任務だぞ。」
「ハイ!シュルツ准尉殿。」
クリスは駆け足で背負っていた荷物を置きに走る。
視界から見えなくなった時にエリーゼはシャルロッテに話しかける。
「で、使い物になるかあのひよっ子は?」
「愚問ですぜ、中尉殿。使い物になれるか?ではなく『使い物にさせる』のです。」
「そうだったな、時間があまりないとはいえあまり無理はさせるなよ。」
「了解です、中尉殿。」
視界の脇から話題の人物がやってきたのでこの話は終わり、
『使い物にさせる』べく新人教育がこの後されるはず、だった。
低く腹に響くような鈍い音が担当戦区に響いた。
ローマ字で擬音表示するならばDOM!DOM!といった感じだ。
「お客さんだ!
パーティーが始まるぞ。
無線を受信に切り替え戦闘準備!」
「了解、新人!ぼさっとするな!」
「や、ヤ―!」
5人の少女たちは陸戦ストライカーユニットに足を入れ。
使い魔とリンクし、ケモノ耳を頭から出現させる。
ペットボトル大の砲弾を腰のパックに入れ、肩にはウィッチ用の37ミリ砲を担ぎ魔道エンジンを吹かす。
「戦闘準備完了!」
3分後、
鋼鉄の脚を履いた戦乙女が即応待機状態で現れた。
『鉄拳より黒騎士へ、
コード7発生。B6へ急行されたし』
『黒騎士受信せり、出動する』
連隊本部より無線で連絡を受ける。
そして一斉にエンジンがうなり、B6に向け全身を開始した。
「黒騎士3、4兵の右側へ。
間距離50で前進、攻撃しろ。
黒騎士2、5と左へ回る成功を祈る。」
ユニットの足の部分から猛烈に泥をはねのけつつ5人の魔女は進む。
やがて前方に指定した丘が眼前に現れ、砲声もこれまでもないほど大きく響く。
エリーゼは思う。
丘の両側にある森林地帯に湿地帯に敵はいないか?
丘まですでに突破されていないか?
いや、それよりも問題は新人か。
横にいる新人ことクリス・ウェーバーを盗み見する。
顔は青く、緊張で風が吹けば今にも倒れそうだ。
戦力的に置いてゆくわけにもいかないから、こればかりはやむえない。
いざとなれば……まあ、なんとかなるだろう。
そう、気軽に考えた。
戦場が見えてきた。