「おのれ、エミヤキリツグ。
外来の魔術師の分際で・・・奥方に近づきすぎではありませんか!!」
居間より離れの一室。
水晶の魔術で居間の様子をうかがっていた一人のメイドが、
和気あいあい(?)と居間で朝食の時間を過ごす者とは逆に恨み骨頂、あるいは姑的感情を出していた。
なお、服装は相変わらず頭巾を被り、所詮萌えメイドのようなミニスカでなく足首まで届くロングスカート。
等と正統派メイドの威厳と厳格さを保っており、見ている人に威圧感を与えるような姿であった。
「セラ あさから うるさい。」
朝から騒ぐ相棒に辟易したのかリーゼリットがたしなめる。
「リーゼリット、貴方はメイドとしての自覚が足りません!!」
今日と言う今日はこののんびり屋に、
誇り高きアインツベルンに使える使用人としての心構えを説かねばならない。
そうと決まれば今すぐにでも説こう、とセラは決める。
「いいですか、まず我らアインツベルンの歴史は千年にわたり―――・・・・・・何をしているのですか貴女たちは!!?」
「・・・んぐんぐ なにって 朝食。
マイヤが買って来てくれたから 食べているのだけど?」
口いっぱいにドーナツを頬張りながら状況を説明するリーゼリット。
そして、セラが知らぬ内に部屋に入っていた久弥舞夜に指を指す。
まぁいいや・・・ではなく、舞夜も黙々と買ってきたドーナツをもきゅもきゅと食べていた。
「なるほど、朝食ですか。ホムンクルスと言えども食事による補給は必要です。
ゆえに一日の仕事をなすためには仕方がないととしましょう、で・す・が。何ですか!?メイド服はどうしたのですか!!!?」
「ほえ?」
セラに指をさされたリーゼリットの服装は使える主が魔法少女となって活躍する時空使用であり。
ようは、古風なメイド服などではなく一般的な服装をしていた。
「それについては、マダムがそうするように先ほど指示しましたが、何か?」
「そんな、私は聞いていません!!!」
口に物を入れたままで話せないリーゼリットの代わりに舞夜が答える。
「ああ、まったく。奥方様は貴族の淑女として、
アインツベルンの誇りある魔術師としての慎みが足りません。
最近あちこち遠坂の者と遊びに行くなど元気なのは大変よろしいのですが、なぜこうも―――」
ぐぅう
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
腹の蟲、否。
腹の虫がセラのお腹から鳴り舞夜とりーゼリットが注目する。
「え、ええと、これは。その。そうです!セイバーです!
何時もお腹をへらして食っては寝て食っては寝ているサーヴァントのです!!」
セイバー=食っちゃ寝の公式図は脇枠キャラ達にも知られている事実であった。
より正確に描くと、『セラ、何かありますか?』あるいは『マイヤ、お茶受けを用意してください』等と。
可愛らしい騎士王は衛宮士郎が居ない時間帯、事あるごとに食事を彼女らに注文していたからだ。
「セラ おなか すいたんだね」
「ご安心を、貴女の分も用意してあります」
顔を赤らめ、誤魔化そうとするセラを2人は優しい眼で見る。
「違います!!だから貴女たち誤解です!!!
メイドたるものこのようなはしたない事などいたしません!!」
白い肌だけでなく耳まで真っ赤にしてなおもセラは抗弁する。
ぐきゅうぅぅぅ・・・
「セラ まいやが買ってきた ドーナツ おいしいよ?」
「コーヒもどうぞ、ドリップ式なのでインスタントよりはお口に会うと思います」
二度目の腹虫が鳴ると同時にリーゼリットがドーナツを出し、
舞夜が持ちこんだポットからドリップ式コーヒーパックにお湯を注ぎ、コーヒーの香りが部屋に満ちる。
「・・・・・・いただきます!!」
さすがのセラも空腹には勝てなかったようで、とうとう降参した。