艦娘哀歌
艦これでもシリアスな話です。
しかも作中では艦娘がタバコを吸い、酒を飲む。
といったシーンがあるのでキャラのイメージが壊れる!という方には推奨できません。
しかし見方によってはある種戦場のリアルさを追求した描写とも読み取れます。
そしてこのSSシリーズ全体に共通しているテーマは「艦娘が歌う軍歌」であり、
記者が艦娘に対してインタビューする形で物語は進みます。
シリーズ全30話と長編で、
語り部は黒潮、由良、響、川内と数多くのキャラが登場します。
ぜひ見てください。
「なるほど、興味深いエピソードですね。
由良さん、教わった、とありましたが他にもその方に教わって今も歌われている軍歌はあるんですか?」
「そうですね……『海底万里』は潜水艦たちがよく酔った時に歌う歌ですね、歌詞はもちろん同じでは無いですけど。
後は、『ラバウル小唄』も皆よく歌いますね。他にもいくつかあったと思います」
「響は泥酔一歩手前になると『祖国は我らのために』を歌い出したりするし、割とそういう歌はアタシらの中じゃポピュラーだよねえ」
ありゃ見物だよ、そりゃもう流暢なロシア語なんだ、
しかも歌詞はロシア国歌のでもブレジネフ時代のでもなくてスターリン時代のだぜ、と隼鷹が口を挟む。
相当面白いのか隼鷹は満面の笑みである。
男は隼鷹の言葉に何か引っ掛かったのか、少し眉を寄せ、思案顔になった。
「ポピュラー……ですか」
「んまあアタシらはあんまり基地の外部とは関わりを持たないしさあ、
楽曲とかそういうのも世間様とはかなりかけ離れてるからさ。
知らないって訳じゃないんだけどね。
軍歌はアタシらに馴染み深いし、世間の流行り歌よりも……何というかストン、
と身に入るって言うのかなあ、そういう感じがするんだよね」
隼鷹はそう言うと、どこに隠していたのか、缶ビールを取り出した。
プシュッ、というプルタブを開ける音に由良の眉が少し動いたが、
隼鷹が飲み始めても特に何も言わず、話を続ける。慣れっこなのか、と男はそれを見つめた。