二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

おススメSS ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~

2015-12-13 22:35:23 | おススメSS
ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~


本当はSSを更新すべきところですが、
時間がとれないため本日もSSの紹介をします。
お題は2015年11月末から映画が公開され連日満室御免の「ガールズ&パンツァー」です。

時間軸は本編より遥かに先で、
当時のことのについて主要キャラクター達が記者のインタビューに答え、

その時の考えや気持ちを回想する話で、
公式が足りないところは作者の構想力でカバーしていますが、
違和感無く自然にできています、ぜひみてください。




――ご自身で書かれた本でも語っていましたね、聖グロリアーナとの練習試合ですか?

その通り。
それから1週間もしない内に、聖グロリアーナ女学院と練習試合をするという情報が入ってきた。
聖グロリアーナ女学院の主力がイギリス戦車と聞いて私は胸の高鳴りを押さえきれなくなった。
三突の初陣にはちょうどいい相手に思えたし、何よりもヴィレル・ボカージュの戦い(※4)のように試合展開が進むだろうと考えていた。

あの時は模擬試合であんこうチームの四号戦車――西住流である隊長に一撃を喰らわせた――という経験から相手はたいした事でもないだろうと思っていたし、
自分がヴィットマン(※5)級の戦いを出来るかもしれないという浅はかな妄想まで膨らませていた。
生徒会広報の立案した待ち伏せ作戦も完全に機能するだろうと考えていた。今思えば滑稽だ。

私達にとっての大きな誤算は、これはヒストリカルイベントやリエナクトメントではなく本気の試合だと思わなかった事だ。
自分達の好きな塗装を施そうと言い合った結果、三突は奇想天外な色になり、幟まで付けてしまって……今思えば待ち伏せを台無しにするくらい目立つ仕様にしてしまった。
試合が始まると、三突は私達の希望に通りに動いてくれた。

突撃砲ゆえの信地旋回頼みの照準という制約はあったが、攻撃力と射程に関しては初期の戦車では群を抜いて高かった。
問題はこちらの練度不足で砲撃は全く当たらなかった事だけ。
私は観測手を兼ねている、左衛門佐との連携不足、そして私と左衛門佐の腕からは遠距離の目標に当てる事は難しかった。
生徒会が建てた待ち伏せ作戦は、私達……あんこうチームを除く全ての戦車の奇抜すぎる塗装、穴だらけの射撃精度、経験の浅さから容易く崩壊した。

それから大洗の市街地へ逃げ込むという作戦……隊長曰く「もっとこそこそ作戦」を開始するに至った。
各自に待ち伏せ攻撃の方法を一任され、私が出した提案は「待ち伏せをしよう」という物だった。
ちょうど通りかかった薬局の隣に三突がちょうどすっぽり入る路地がある、そこへ入り込んで接近する敵を脇から叩こう、と。

突撃砲が真価を発揮するのは待ち伏せにある、
継続戦争、独ソ戦、西部戦線……突撃砲はまさに移動する大砲として使用される事が多かった。

私の提案に皆が乗っかった、ちょうど幟があり、
薬局には宣伝用の幟がある、それに隠れてしまえばどうって事は無いだろう、そう判断した。

この判断はすぐさま役に立った。
待ち伏せを始めて暫くしないうちに、マチルダがやってきた。
距離にして数メートルも離れていない。左衛門佐は即座にマチルダ2に命中させた。

あの時の歓喜といったらそれはもう凄かった、始めての勝ち星に私達は車内で歓喜の声を上げた。
黒煙を上げるイギリス戦車、そして砲口から白煙をくゆらす三突。
私は自分が西部戦線のど真ん中に立っているような気分を覚えて恍惚とした。
夢にまで見た景色……私達は意気揚々と幟を回収し、次なる待ち伏せ場所へ向かった。

腕を組みながらカエサルと並んで高笑いをして、これならやれる、絶対に勝てると自信を取り戻していた。
車高の低さなら生垣やブロック塀が隠してくれるだろう、同じ様な待ち伏せ攻撃を行って撃破していけばいいし、
実際、その戦法ならこちらにも勝算はあっただろう……あのバカみたいに目立つ幟さえ付けていなければな!

頭かくして尻隠さず、まさにその通りの敗因で私達の三突はマチルダから逃げる際に砲撃で沈黙した。
撃破判定装置が白旗を上げ、隊長へ報告を入れると同時に、車内は一斉に論議の嵐になった。

「幟なんか付けたからこうなった」「カッコいいからぜよ」
「さっきの待ち伏せには役立った」「でも、やられてしまったではないか」
「一体どこの誰がこんな事をした」「鏡を見て言え」

などと。後にも先にも戦車道の試合で友情にヒビが入りかけたのはあれが一度きりだった。
結局試合は僅差まで詰めたがあんこうチームの行動不能により聖グロリアーナ女学院が勝利した。
私も本では「敗北した」ぐらいしか書いていなかったが、
正直な話、この試合の詳細は恥だと思って封印するべきだと思った。機会を逃したら今ここで言ってしまうが……

結局練習試合に負け、その日の翌日には反省会となった。
隊長を中心にして進められた反省会だが、全員揃って頭を抱えたのは言うまでもなかったろうな。
私たちのチームは撃破という戦績を残せたからよかったが、M3リーは試合をする事なく乗員が試合を放棄して逃亡、
八九式は至近距離からの不意打ちに失敗し脱出するという後先を考えない場所に突っ込んで撃破され、
生徒会の38tは至近距離で隊長車への砲撃を外し、密集している他の敵車両すら外して撃破されるという情けない結果に終わった。カエサルは反省会の内容を引っさげて私達の前に帰ってきた。


――やはり失敗の責任は大きかったですか?

いや。カエサル曰く「隊長は殆ど怒っていなかった」との事だったが、
あの3両撃破という格の違う戦果を見せられた上で、冷静な指摘をされると、ただただ私達の力量不足が不甲斐なく思えてきて……初陣が散々な結果に終わった事から全員揃って派手な塗装は全て取りやめて、元の色へ戻そうと言う結果になった。
三突を修理する前に、私達は自らの戒めを込めて撃破された三突を写真に撮る事にした。

〔彼女は机の上に置かれたアルバムをめくり、
 一枚の写真を私に見せる。赤色、黄色と派手な塗装が施され壊れた幟が立てられたままの三突が映っていた〕

こんな派手な塗装、過去に戦車道で何個が前例があるしタンケッテレースでは当たり前だが、
高校生の戦車道でこんな事をしているのは私達ぐらいだった。
それから元のジャーマングレーの塗装に戻され、改めて三突の練習を行った。徹底的かつ綿密に。

生徒会長からこの学校を戦車道全国大会へ出場させると聞かされたからには本気でやるしかなかった。
生憎、第63回大会では決勝戦でマウスを前に敗れてしまったが……それでも私達が大洗戦車道の「矛」として戦い続け、

その役目を全うしたのは誇るべき事だったし、
歴史が好きである事以外、何の取り得も無かった私達が果たした唯一の成果だったのは事実だった。

それに、殻にこもって自分達だけの空間を作っていた私にとって、
新しい友人も出来た。それが私達が胸を張って誇れる結果だった。
 






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おススメSS 作州浪人

2015-12-07 22:48:19 | おススメSS

作州浪人

最近話題沸騰中の戦国架空戦記です。
よく戦国物の架空戦記といえば戦乱期の大名に転生憑依し、
あれこれ内政や技術改革を行いつつ生き残りを図るのが常道ですが、
本作品はかの剣豪宮本武蔵に転生がひたすら脳筋ヒャッハー!で成り上がる話です。

これだけでもかなり斬新な作風ですが、宮本武蔵が活躍した時代といえば関が原の戦い、大阪の陣。
えお除けば徳川の天下が定まり、なり上がりが困難な時代で史実の武蔵もその点でかなり苦労しましたが、

この武蔵は先に関が原の戦いで徳川の四男の首を討ち取り、京都所司代を襲撃し、
余波で彦根にゃんの兜のモチーフとなった井伊直正が死亡。福島正則を煽りに煽って戦乱の時代へ逆行。
などとかなり無茶苦茶(だがそれが良い)事をしており、思わずその発想はなかったと関心する次第であります。

最後まで完結済みです。
どうぞ見てください。




「こ、このクソガキ……!」

「まあ待て、才蔵。それで武蔵、それだけで徳川に勝てるとでも?」

「あのよ、この作戦で重要なのは、毛利に広島をあげるって所。これが一番重要。
 そして毛利が話に乗って広島を受け取れば……毛利は自分の領国を守るために必死こいて戦わざるを得なくなる……
 彼らは本来の戦国大名に戻る! 多分、福島家の皆さんよりも? 毛利家の皆さんの方が真剣に必死に戦うよ。
 地元だし先に負けた恨みもあるし。毛利と福島と、中国地方だけ戦国時代に戻れば……他の地域だって大人しくしていられないやつがきっと出る! 
薩摩島津、肥後加藤、筑前黒田、西国勢が多いけど……東国だと奥州伊達、羽州上杉、佐竹あたりも黙っちゃいないだろ!」

「……それは期待できるが、確実では無いな。」

「そうですぞ殿! あくまでこっちの都合の良い期待だけです!」

「広島の福島もそうだけど……今はどこもかしこも関ケ原後の領土移動で混乱中だし戦争とかしたくない家ばかり。
 そしてそういう状況だってみんな分かってるから別にそう決められたわけでなくても
 ……今は戦争しないって空気が日本全土に漂っている、みんな、なんとなくそう思ってる
 ……その空気を破るだけで不意打ちの先制攻撃になる、それだけで圧倒的に有利!」

「そうかもな……しかし確実では無い……だが……」

「確実な勝算なんざあるかよ。」

「その通りだな。」

「殿! まさか!?」

「俺もまだ40過ぎ……俺のこの年の頃、太閤殿下は、明智討伐の山崎合戦か。
 そしてその後も精力的に戦い続けて天下を取られた。なのに俺は既に守りに入っていたか。
 しかし守りに入っても我が家は遠からず滅びる、武蔵の言う通りだ。
 どうせ滅びる我が家ならば、死中に活路を求めるしかあるまい。」

「……殿。」

「さて武蔵よ。」
「なんだよ。」
「オラッ!!」
「がふっ!」
「よし、この一発で勘弁してやる。縄を解け!」
「はっ!」
「……なんだ、マジかよ。」

「ああ。やってやる。どうせ太閤殿下に泥の中より拾い上げられた桶屋の倅だ。
 惜しいものなど何もない、すべて失っても元々よ! やってやる、やってやるから、お前、俺に仕えろ!」

「そういうことなら……宮本武蔵です、殿……よろしくお願いします。」

「ふん、まともな口の利き方もできるのか。いいか、お前が言いだした話だ。
 これから先、多少、戦況が不利になっても……敗滅寸前になっても……
 他の奴らは逃がしても、お前だけは逃がさん、地獄まで付き合ってもらうぞ!」

「……分かりました、お付き合いしましょう、殿!」

時は慶長けいちょう10年7月初頭。
慶長という年号が終わると次は、元和げんなになる予定だった。

元和といえば元和偃武げんなえんぶ、元和の年号の頃に武が主力であった時代が終わり、平和
な江戸時代が本格的に始まるという意味で知られていたのだが……

時代に逆行したモンスター宮本武蔵に。

一度感情が激発すれば何をやらかすか分からないキ○ガイの一種として当時から
定評のあった福島正則。

出会ってはならない二匹の狂犬が出会い、意気投合したとき!
もやは止められない大きな変化が……起ころうとしていた。

その時、歴史は動いた!

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【予告】ヴァルハラの乙女 第20話「スピード娘」

2015-12-03 23:10:11 | ヴァルハラの乙女

「ふ…あぁ……」

会議は退屈だ。
シャーロット・イェーガは出そうになった欠伸を抑えつつそんな思いを抱いた。
昔の話だが、軍人とは戦場で国のために華々しく戦う英雄ぐらいしか感じていなかった。

だがこの部隊では幹部クラス階級である大尉を押し付けられる形で昇進し、
ようやく分かったのだが、軍人の普段する仕事とは町役場の役人とそう代わりが無いことに。

即ち書類、書類、そして書類の決算。
さらに打ち合わせ、根回し、会議に会議。
やっている事は官僚の仕事そのものでネウロイと戦うよりも紙と戦争している気分になる。

正直、書類なんかよりも訓練でもしている方が楽しい、
シャーリーは色々自分の自由気ままな性格など問題点を挙げた上で、
何とか重要な仕事から外してくれとバルクホルン大尉に拝み倒したが、

「気持ちは分かるが、軍隊は官僚組織だからな。
 が、この紙切れさえあればストライカーユニットが動く。
 ああ、それと大尉のまま責任だけなしなんて甘い事を言うなよ」

とバッサリ断られてしまった。

「それに指揮系統の序列はミーナ中佐、坂本少佐、わたし、そしてイェーガ大尉。
 となっているから、もしもの時は指揮して貰わなくては困る、軍人ならそこを忘れるな」

しかも指揮なんて面倒な事までするらしい。
このままでは自由きままに飛ぶことはできない。

いっそ、中尉の降格するような事でもするか。
とシャーリーは一時はふざけて考えたが、元々原隊を追い出されるように501に来た以上、
ここでさらに問題を起こせば自由に飛ぶことすらできないし、逃げるような真似はしたくなかった。

だからこそ私はここにいる。
世の中楽しいことばかりじゃない事を嘆きつつ、ここにいる。
そんな風にシャーリーは内心で結論を下した。

「で、結局宮藤さんが破壊した阻止気球の予算は下りなかった、そういうことよ」
「中佐、こっちもコネを動員して色々手を尽くしたが全然足らない、申し訳ない」
「うーむ、私の方は扶桑海軍に問い合わせたが艦艇に阻止気球なんて今時積んでいないからなぁ…」

見知った名前の登場にシャーリーは意識を内心から会議に戻す。
宮藤芳佳、最近坂本少佐が故郷からスカウトし501に来た期待の新人ウィッチだ。
胸はルッキーニの言葉を借りれば「残念賞」であるが魔女として才能は規格外と表現しても良い。

何せ部隊に配属する直前にネウロイと遭遇してこれを撃退し、
続けて部隊に配属されてからも大物ネウロイを続々と仕留める一役を担っている。












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ヴァルハラの乙女 第19話「病室」

2015-12-01 22:41:22 | ヴァルハラの乙女


「あ……?」

ペリーヌ・クロステルマンが目覚めた先に見えたのは病室の天井であった。
しばらくその意味が分からず、ぼんやりと天井を眺めて過ごす
が、徐々にこうなったであろう原因の記憶を思い出し、状況を理解する。

そう、自分はネウロイに対して無茶な行動をした。
そしてその結果、負傷してしまったのだ。

「ん、眼が覚めたか中尉」
「…っ!!バルクホルン大尉!」

横から声が掛けられる。
振り向けばそこにはぎこちなく腕を挙げるバルクホルンがいた。
よく見れば手から腕にかけて包帯が巻かれており、同じく負傷したのだろう。

いや、違う。
そんな原因を作ったのはペリーヌ自身だ。

「申し訳ございません、大尉!!
 私があんな事を…あんな事をしなければ大尉は負傷しなかったのに!!」

起き上がりバルクホルンに頭を下げるペリーヌ。
無理にネウロイに突撃していた自分を止めようとしていたのを覚えていた。

「あ、ああ。別に気持ちが落ち着かず、
 むしゃくしゃする時だってあるさクロステルマン中、ペリーヌ」

対するバルクホルンは気にするなと言いたげな言葉で答えた。
しかし、ペリーヌの心が追いついていなかったことを知っていた。
それを知った上での言葉にペリーヌは自分の未熟さを思い知り、落ち込む。

「大尉がいなかれば今頃私は……」
 
「そ、そんな顔をするな。
 それに感謝するならわたしじゃなくて宮藤だ。
 宮藤がネウロイを仕留めたお陰でこうして生きていられるのだから」

「あの宮藤ですって!!?」

思わぬ人物が出てきたことでペリーヌが叫ぶ。
宮藤、宮藤芳佳といえばペリーヌが密かに慕っている坂本少佐の同郷というだけでも気に入らないが、
何よりも気に入らないのは少佐に可愛がられており、自分ではとても進展できないほど密接な関係を築いている。

「…本当にあの子は実戦はここが始めてですよね、大尉?」
「本当だぞ、わたしも信じられないけど」

それに輪に掛けて気に入れないのは、
圧倒的なウィッチとして才能をこれでもかと見せ付けてくることだ。
未熟な所は多いが訓練を重ねるごとに徐々に洗練されており、とてもこの間まで一般市民だったとは思えない。

だからこそ、ペリーヌは宮藤が羨ましかった。
少佐に可愛がれている上に、自分と殆ど変わらぬ歳で見せる才能。

はっきり言ってペリーヌは、

「私では勝てないのですね、あの子に…」

ペリーヌは宮藤に負けていた。
ウィッチとしての才能の差を思い知った。
そして湧き上がる劣等感を初めとする負の感情がペリーヌの心を支配し、やがて嗚咽と共に涙を流す、

「ぺ、ペリーヌ……」

その光景にバルクホルンは彼女の名前を口にすることしか出来なかった。



※  ※  ※



どうすればいいのだ?
と、言うのが正直な感想だ。

ペリーヌが思い詰めて情緒不安定なのは知っていたけど、
普段の強気の姿勢がこうも負の感情を露にして崩れるなんて。

いや、違うか。
単に強がっていただけかもしれない。

ペリーヌに家族はいない。
ようやく10台に入った所での離別。
そして戦争、さらに異郷で戦いに自ら身を投じた。
楽しい事よりも辛い経験の方が多く、ずっと辛いことを我慢していたのだろう。

そしてここ第501統合戦闘航空団は国際的な部隊だ。
真面目な彼女が祖国を代表する気概で緊張した日々を過ごしていたのは、
わたしだけでなくミーナに坂本少佐といった部隊幹部は皆知っている。

後はエイラだな。
エイラはしょっちゅう真面目なペリーヌを弄っていたけど、
ああ見えて歴戦のウィッチだからたぶんペリーヌが負の感情に陥らないように、
わざと挑発してペリーヌの感情を発散させていたし。

もしも同郷の人間、わたしにミーナ、エーリカのカールスラント組のように同じ国。
同じ部隊で過ごした戦友がいればペリーヌの心を癒すことができただろう。

「ぺ、ペリーヌ……」

彼女の名を口にするがそこから先が続かない。
どんな言葉を掛けても今のペリーヌに届かないからだ。

どうすればよいか?
他人の心を癒せるほど人生経験がないまま、
前世を終えてしまったわたしに出来ることが分からない。

転生憑依と言えばニコポ、ナデポでヒロインの心を掴むものだが、
現実でそんなことが出来る人間なんて非常に限られているのは分かっている。

そもそも同姓にフラグを立ててどうするということあるが…。

「う、うぅ……」

だけど、泣き続けるペリーヌを放って置くなんてできない。
彼女は前世でボクが知る物語の登場人物であると同時に今のわたしの仲間なのだから。

それにだ、泣いている女の子を放置するなんてありえない。
今では女の子、ついでに人種も変わってしまったが心は漢であり紳士でありたい。

だからわたしは黙ってペリーヌの傍に座り肩を貸した。
未だ涙と嗚咽を漏らす彼女はわたしにもたれ掛かり涙でわたしの服を濡らす。

「…………」

わたしはその間何も言葉を発せず引き続き沈黙を保つ。
なぜなら下手な同情や哀れみの言葉は返ってペリーヌの心を傷つけるからだ。

かつてのわたしのように。
わたしはまだこの世界に馴染めずいとことも有って夜には涙を零した。
色んな人がわたしに対して色々な言葉を掛けたけど、それで落ち着くことはなかった。
けどそんな時、当時親戚の子で今では兄となるゴドフリード兄さんは黙って傍にいてくれた。

どんな情けや同情の言葉よりも、それが一番良かった。



※  ※  ※



「ん…?」

誰かが自分の髪を撫でる感触であやふやな意識が覚醒する。
眼をうっすらと開けてみれば視界は横になっていた。

頬に感じる体温から誰かの膝を借りているようで、
心地良さにペリーヌは再度眠りにつこうとしたがある事実に気付く。

すなわちこの膝枕は誰の膝なのか、ということに。

『そろそろ眼が覚めたか?
 まあ、そうでもなくてももう少し付き合ってもいいけど』

頭上から耳に届く声はカールスラント語。
東部カールスラント訛りがある口調でペリーヌは直ぐに声の主が誰かが分かった。

バルクホルンである。

「~~~~~っっっ!!!」

一瞬でペリーヌは意識を覚醒させ、眼を見開く。
そして自分がバルクホルンの膝を借りていた事実に悶絶する。

「…そ、そんな!わ、わたくしには坂本少佐が!!」
「あー、ペリーヌ?クロステルマン中尉?」

出た言葉ペリーヌの勘違い10割の内容であった。
彼女はまだこの状況を作った原因を思い出していないためである。
そのため、バルクホルンが態々部隊内の共通言語である英語に切り替えて呆れた感想を述べる。

「少佐に好意を抱いているのは、
 皆知っているから良いとして、ここはどこか分かるか?」

「……病室です」

バルクホルンの冷静になるようにとの促しにペリーヌは従い周囲を観察する。
並ぶベット、鼻を刺激する薬品の香りなどと間違いなく病室であること確認した。

「どうしてここにいるか分かるか?」

「…………私が負傷したからです」

健康のままここに訪れるのは健康診断の時ぐらいである。
ペリーヌにとって病室の世話になるのは負傷の時だけであり、
そして何をして負傷したかをペリーヌははっきりと思い出した。

「良く寝てたな、まあ疲れていたのだろうな」

ペリーヌが思い出したのを確認したバルクホルンの第一声は優しいものであった。
別に馬鹿にしたりする内容でない事は知っているが自分が上官に対して泣き出した上に、
子供のように縋った上に泣き疲れて寝てしまった事を綺麗に思い出したペリーヌが羞恥心で顔を赤らめる。

「大尉、わ、私は」

「そこまでだ、中尉。
 人間色々あるが今回のような事が偶々あっただけ、それだけだ」

謝罪、あるいはいい訳か。
どっちか分からないが何らかの言葉を言おうとしたがバルクホルンに止められる。
しかし、そんな大人の態度に大してもペリーヌは絶対に言うべき事が思い出した。

「…先ほどは失礼しました、バルクホルン大尉
 この傷を治してくれたのは宮藤さんなのに私はあんなことを」

自分の暴走で周囲に迷惑を撒き散らした挙句、
傷を癒した人間に対する暴言、どちらも最低な行為で、
ペリーヌは自分がやらかした事実を前に気落ちする。

「……ペリーヌだけじゃない、
 私だって嫉妬ぐらいするさ、あの才能を見れば」

ぽつり、とバルクホルンが呟く。
普段宮藤を評価し賞賛することが多いバルクホルンの発言にペリーヌがやや驚く。

「もしもあの時、あの位の才能があればと思い事だってある。
 おまけに本人は無自覚でそれが宮藤芳佳の良さだが…まあ、人によっては腹が立つものだよ」

「以外ですね、大尉。
 あの子を高く評価する大尉がこんな事を言うなんて」

「まあ、ペリーヌのそうした感情は人事じゃないからな」

ペリーヌの問いにバルクホルンが苦笑気味に答える。
普段見られない表情と初めて知った上官の感情にペリーヌは親近感を抱いた。

「さて、傷の話だが医者の話によると数日間寝ていれば直るそうだ、
 出撃とかはミーナから禁止されているから、無理に出ようとするなよ」

「分かっています、そのくらい」

もしも始めに病室で眼が覚めた時は何が何でも出撃しようとしただろう、
が、ようやく冷静な考えを持てるようになってペリーヌは自重を覚えていた。
これも全て自分の感情を黙って受け止めてくれたバルクホルンのお陰だ。

「バルクホルン大尉、ありがとうございます。
 お陰さまで私少しは冷静になることが出来ました」

「少しじゃなくてもっと冷静でいてほしいが…今回はそれで良しとしよう」

ペリーヌの再度の感謝の表意にバルクホルンが苦笑と共に謝意を受け取る。

「それに最初より顔色が良くなっているしな、ではな」
「はい、大尉。お疲れ様です」

バルクホルンの言葉にペリーヌが答えるとバルクホルンは病室から出て行った。

「ふぅ……」

後ろ姿を見届けたペリーヌが息を吐く。
そして今までの会話を思い出し、纏め、考え、結論が出る。
弱いのはウィッチとしての強さではなく、人間としてのまだまだ未熟で弱いことでだ。

ウィッチとしての才能は確かに宮藤芳佳の方が遥かに優れている、
しかし、そこで嫉妬し感情を爆発させても何の進歩もなく、意味がない。

だからこそ、自分がすべきことは。

「まずは寝ましょう、傷を癒してからそれからね」

先に傷を癒すために寝ることだ。
そうと決まれば、とペリーヌは再度ベットに横になる。

「ふん、今は貴女の勝利を称えますわ、宮藤芳佳。
 だけど才能に胡坐をかいている間に私が追いかけてくるので、その事を忘れずに」

日が沈みつつある病室でペリーヌはそんな決意を小声で口にし、眼を閉じた。
その表情はまるで好敵手でも見つけたかのように良い表情であった。
















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