copyright (c)ち ふ
オレは、丁寧に卵殻を並べ、神杉の枝からうまく雨ダレが
落ちるように細工した。
しかし、思うように雨は降ってくれない。
降っても、あの子は傘をさしてやってくるので、旨くゆかない。
その上、オレが並べた卵殻を見習いの神主が
時おり片づけてゆく。
けれでも、オレは挫けないぞ。
術に、ますます磨きをかけるだけだ。
いまは鳥や犬や猫が相手だ。
この間は、猫のヤツにかけ損なって
ひどい目に遭ってしまった。
ヤツは目を患っていたのだ。
お陰で白い綺麗な膚にひっかき傷がついてしまって、
なかなか治らなかった)
毎日お願いにゆく大神様の境内で夕立に遇ったわ。
神杉の下で雨宿りしてたの。
誰が並べたのか、卵の殻に雫が落ちて
ピチン、ピチンと跳ねてた。
雨の雫が落ちると、殻の中にさざれ波も立っていたわ。
それが、とても変わっていて新鮮だった。
杉の枝から、落ちる雫が上手に殻のなかに入っていたの。
私は、それが面白くて、膝を折って見入ってた。
そんな時だったの。
3抱えも、4抱えもある杉の木の横から、
あの人が突然現われたの。
色が白くてほっそりしていて、目がとても素敵だった。
でも、あの人は口がきけないの。
私が挨拶すると、にっこりと笑ってくれたわ。
つづく