私がこの業界に入った30年前、
ようやくENG(Electronic News Gathering)が出てきた。
ENGとは、ビデオカメラとビデオテープレコーダ (VTR) の
組み合わせで、番組素材となる映像、音声を収集するシステムをいう。
特にロケ取材に有効で、日本では昭和40年代から50年代に
このシステムが導入され、テレビ番組制作の機動性・速報性は
格段に高まった。
(PRの世界にもフィルムに変わりENG機材が定着。
20年ほど前、ようやくカメラとVTR一体型が登場したが大きく扱いにくかった)
それまでは16ミリフィルムカメラでニュースは撮られていた。
16ミリフィルムカメラは小型で機動力があり
ニュース取材向けであったからだが、
一方では音を同時録音できず、カセットテープもしくは6ミリ幅
(1/4インチ=6.35mm)のオープンリールテープで別取りし、
編集で画と音を合わせるという大手間を要した。
またフィルムカメラはモーターで駆動するが、
モーター音やシャッター音が大きいため、
マイクがその音を拾うので劇映画ではアフレコをせざるを得なかった。
25年ほど前に大阪に昭和天皇がいらした折りに、フィルムチームの駆動音に
思わず注目したビデオカメラチームの苦虫を潰した表情を今でも思い出す。
つまりニュース映画にはフィルムカメラは本来不適切だった。
しかし絶妙のナレーションや効果音で補い、
ビデオニュースよりも味を出していたは、
それらはハンディを克服する作り手の力量にかかっていた。
当時、同時録音できるフィルムカメラはあるにはあったが高価だったので、
インタビューなどは同録できるカメラをレンタルし
専用のフィルムを使うこともあった。
しかしフィルムは、基本1本で約3分しか撮ることができず、
現像費も高かったので、
PR作品では同録のフィルムを使うことは本当に稀だった。
(今から25年前?大阪市広報映像は16ミリフィルムで
撮影・編集・納品していた)
ビデオ機材の登場で、それまでのフィルム機材と画期的に違ったのは
「同録」できたことと、「1本で20分間も収録」できることだった。
逆にデメリットは、ビデオカメラは電気式なのでバッテリーが必要で、
随時充電しなければならないことと、
カメラ自体が重い上、バッテリーも重く肉体派向きだった。
VTRも電気式だったので結露に弱く、
ジェットコースターで主観撮影をすると重力がかかり
停止するというデリケートさもあった。
またフィルムカメラはワンマンでも可能だったが、
ビデオはカメラを操作するカメラマンと、
VTRを操作するVEの常に二人体制でなければ使えなかった。
しかし何といっても「同時録音で20分連続収録」できることは大きく、
ニュースはフィルムからビデオにすぐにとって変わり、
PR作品もスチール写真(スライドショー)や16ミリフィルムから
ビデオに一気に変わっていった。
また今でこそ同録は当たり前で、
ハードディスク内蔵のカメラなら20時間連続収録可能なカメラまであるし、
カメラに収録部も収まり、めちゃ軽になった。
わずか20年で画期的にビデオカメラは進化し、
今や映画もハイビジョンで撮影し、ハイビジョンで編集する。
上映方法も劇場に合わせてハイビジョンで上映することもあるし
昔ながらの35ミリフィルムに焼いて上映することもできる。
映像機材に合わせて音の収録機材も進化を遂げた。
取材を劇的に変えたのは、何といってもワイヤレスで感度の良い送受信機だ。
小型マイクで取った音を無線で飛ばし、
受信機で受けてVTRに取り込み同録する。
それまではマイクとVTRはケーブルでつながれていたため
機動力に欠けていた。それが無線になり、突撃取材がしやすくなったし、
音を構成要素の柱にすることもできるようになった。
仮に真っ暗闇で撮っても、音があれば見られる。
場合によっては音だけの方が想像力を掻き立ててくれる。
ワイヤレスマイクが音を構成要素として成立させたことで、
取材の仕方も含め現場の状況は大きく変わった。
私がドキュメントを語り出すとキリがないが、
ワイヤレスマイクは我々PRの世界でもドキュメント≠行動観察を、
技術的に可能にし路線に新たなページを作ってくれた。
(我が社では必需品のワイヤレスマイク。
昔に比べると安価になり性能もよくなっている)
私が得意とする行動観察手法では、
照明が無くても映る高感度でかつワンマンで操作できる
機動力のあるコンパクトカメラと、ワイヤレスマイクは必須で、
このふたつの進化で約20年前では技術的に無理だった取材を
可能にしてくれた。
例えば、被写体にワイヤレスマイクをつけておけば、
カメラが一緒に現場に入らずともその時の様子が分かる。
音で様子を探ってから後でカメラが突入することも可能になる。
取材でこんなこともあった。
女性の被写体にワイヤレスマイクを付けてもらっていることを忘れ
休憩時に二人になったことをいいことに「家はどのあたりですか?」と
私が発した声をカメラマンやVEが聞き付け
「何しとるんですか!?」と一喝されたことがあった。
これもまたワイヤレスマイクならではである。
今ではカメラも小さくなりワイヤレスで
映像を飛ばすことも可能になったが、隠し撮りはできでも撮影ではない。
やはり何らかの人為的操作があってこそ撮影といえるのではないだろうか。
音も含め機材がコンパクトになりワンマンになれば機動力はあるが、
カメラマンが全てしなければならなくなるので負担はより大きくなる。
カメラマンはその負担を負担と見せない「技術力」と、
何をどう撮るかという「感性」を両立させなければならない。
もしその負担が感性に影響するようでは真の意味でカメラマンではない。
それは機材がいかに進化しようとも
カメラマンに課せられた永遠のテーマである。
いずれモビルスーツのようなカメラも出るのだろうが…
感性こそがプロか否かを決める基準であることは、
これから先も不変である。
現在岡山を中心にロケ進行中の入社案内映像でも
ワイヤレスマイクは柱になっている。
監督である私とカメラマンの二名、
場合によってはカメラマンだけが被写体についてまわり、行動を撮る。
そして音で被写体の考えを捕らえていく。
映像と音。この組合せでシーンはできている。
それを撮る道具がカメラとマイクであり、
あくまでも撮るか撮らないかはカメラマンの感性に委ねられる。
ようやくENG(Electronic News Gathering)が出てきた。
ENGとは、ビデオカメラとビデオテープレコーダ (VTR) の
組み合わせで、番組素材となる映像、音声を収集するシステムをいう。
特にロケ取材に有効で、日本では昭和40年代から50年代に
このシステムが導入され、テレビ番組制作の機動性・速報性は
格段に高まった。
(PRの世界にもフィルムに変わりENG機材が定着。
20年ほど前、ようやくカメラとVTR一体型が登場したが大きく扱いにくかった)
それまでは16ミリフィルムカメラでニュースは撮られていた。
16ミリフィルムカメラは小型で機動力があり
ニュース取材向けであったからだが、
一方では音を同時録音できず、カセットテープもしくは6ミリ幅
(1/4インチ=6.35mm)のオープンリールテープで別取りし、
編集で画と音を合わせるという大手間を要した。
またフィルムカメラはモーターで駆動するが、
モーター音やシャッター音が大きいため、
マイクがその音を拾うので劇映画ではアフレコをせざるを得なかった。
25年ほど前に大阪に昭和天皇がいらした折りに、フィルムチームの駆動音に
思わず注目したビデオカメラチームの苦虫を潰した表情を今でも思い出す。
つまりニュース映画にはフィルムカメラは本来不適切だった。
しかし絶妙のナレーションや効果音で補い、
ビデオニュースよりも味を出していたは、
それらはハンディを克服する作り手の力量にかかっていた。
当時、同時録音できるフィルムカメラはあるにはあったが高価だったので、
インタビューなどは同録できるカメラをレンタルし
専用のフィルムを使うこともあった。
しかしフィルムは、基本1本で約3分しか撮ることができず、
現像費も高かったので、
PR作品では同録のフィルムを使うことは本当に稀だった。
(今から25年前?大阪市広報映像は16ミリフィルムで
撮影・編集・納品していた)
ビデオ機材の登場で、それまでのフィルム機材と画期的に違ったのは
「同録」できたことと、「1本で20分間も収録」できることだった。
逆にデメリットは、ビデオカメラは電気式なのでバッテリーが必要で、
随時充電しなければならないことと、
カメラ自体が重い上、バッテリーも重く肉体派向きだった。
VTRも電気式だったので結露に弱く、
ジェットコースターで主観撮影をすると重力がかかり
停止するというデリケートさもあった。
またフィルムカメラはワンマンでも可能だったが、
ビデオはカメラを操作するカメラマンと、
VTRを操作するVEの常に二人体制でなければ使えなかった。
しかし何といっても「同時録音で20分連続収録」できることは大きく、
ニュースはフィルムからビデオにすぐにとって変わり、
PR作品もスチール写真(スライドショー)や16ミリフィルムから
ビデオに一気に変わっていった。
また今でこそ同録は当たり前で、
ハードディスク内蔵のカメラなら20時間連続収録可能なカメラまであるし、
カメラに収録部も収まり、めちゃ軽になった。
わずか20年で画期的にビデオカメラは進化し、
今や映画もハイビジョンで撮影し、ハイビジョンで編集する。
上映方法も劇場に合わせてハイビジョンで上映することもあるし
昔ながらの35ミリフィルムに焼いて上映することもできる。
映像機材に合わせて音の収録機材も進化を遂げた。
取材を劇的に変えたのは、何といってもワイヤレスで感度の良い送受信機だ。
小型マイクで取った音を無線で飛ばし、
受信機で受けてVTRに取り込み同録する。
それまではマイクとVTRはケーブルでつながれていたため
機動力に欠けていた。それが無線になり、突撃取材がしやすくなったし、
音を構成要素の柱にすることもできるようになった。
仮に真っ暗闇で撮っても、音があれば見られる。
場合によっては音だけの方が想像力を掻き立ててくれる。
ワイヤレスマイクが音を構成要素として成立させたことで、
取材の仕方も含め現場の状況は大きく変わった。
私がドキュメントを語り出すとキリがないが、
ワイヤレスマイクは我々PRの世界でもドキュメント≠行動観察を、
技術的に可能にし路線に新たなページを作ってくれた。
(我が社では必需品のワイヤレスマイク。
昔に比べると安価になり性能もよくなっている)
私が得意とする行動観察手法では、
照明が無くても映る高感度でかつワンマンで操作できる
機動力のあるコンパクトカメラと、ワイヤレスマイクは必須で、
このふたつの進化で約20年前では技術的に無理だった取材を
可能にしてくれた。
例えば、被写体にワイヤレスマイクをつけておけば、
カメラが一緒に現場に入らずともその時の様子が分かる。
音で様子を探ってから後でカメラが突入することも可能になる。
取材でこんなこともあった。
女性の被写体にワイヤレスマイクを付けてもらっていることを忘れ
休憩時に二人になったことをいいことに「家はどのあたりですか?」と
私が発した声をカメラマンやVEが聞き付け
「何しとるんですか!?」と一喝されたことがあった。
これもまたワイヤレスマイクならではである。
今ではカメラも小さくなりワイヤレスで
映像を飛ばすことも可能になったが、隠し撮りはできでも撮影ではない。
やはり何らかの人為的操作があってこそ撮影といえるのではないだろうか。
音も含め機材がコンパクトになりワンマンになれば機動力はあるが、
カメラマンが全てしなければならなくなるので負担はより大きくなる。
カメラマンはその負担を負担と見せない「技術力」と、
何をどう撮るかという「感性」を両立させなければならない。
もしその負担が感性に影響するようでは真の意味でカメラマンではない。
それは機材がいかに進化しようとも
カメラマンに課せられた永遠のテーマである。
いずれモビルスーツのようなカメラも出るのだろうが…
感性こそがプロか否かを決める基準であることは、
これから先も不変である。
現在岡山を中心にロケ進行中の入社案内映像でも
ワイヤレスマイクは柱になっている。
監督である私とカメラマンの二名、
場合によってはカメラマンだけが被写体についてまわり、行動を撮る。
そして音で被写体の考えを捕らえていく。
映像と音。この組合せでシーンはできている。
それを撮る道具がカメラとマイクであり、
あくまでも撮るか撮らないかはカメラマンの感性に委ねられる。
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