いまから20年ほど前の話である。
私は商品PRにあきあきしていた。
やれ商品カットだの、やれシズルカットだのと
スタジオで照明をあてて商品を撮るのに
面白みをまったく感じなかった。
企画の段階で、商品説明ではなく、
その商品をどのようにして販売すべきか、に路線を変え
販売のための応酬話法であったり、日々の活動の中で
どう販売していけばよいのかをセールスマンに聞くなど、
「取材形式」でまとめる企画を出すようになっていた。
というのも取材対象が「物」から「人間」になるからだ。
「人間」は生きている。
頭をナタで割って何を考えているのか見えるのならぜひ見てみたい。
しかしそんな事をしてしまうと殺人者になってしまう。
私にはまだ育てなければならない娘たちがいる。
できる限りべったりとくっついて話を聞いたり、
行動を観察することで、
その真意の一コマを発見することができる。
まさに「行動観察」こそフィルムにはない機動力を持つビデオの強みなのだ。
行動の一挙手一投足を逃すことなく、
インタビューで真意を切り取ったものを
ビデオに収め、あくまでも答えを出すのではなく、
「ああ俺もそうだ!そう行動すれば売上が上がる」等と
『感じてもらうビデオ』制作に面白みを感じていた。
もちろんカメラマンというフィルターを通した後、
監督である私のフィルターで編集するわけだから、
真実というわけではない。何らかの意図が入っているのは言うまでもない。
肉体派突貫野郎の河西 秀樹カメラマンと本格的に取組んだ
「トップセールスマンの行動」(富士火災海上)もまた、
損害保険のトップセールスマンの行動観察から
「雲の上の人であるトップセールスマンの日々の活動」を
同じ仕事をする視聴者に見て感じてもらい、
それを見た人は自分風にアレンジして、
自分の日々に活かしてもらおうと企画したものだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/88/1d5b22c7fb4a2b68820a454e8bed1d28.jpg)
(村田 肇氏を自宅前でカメラが襲う)
人選されたのは、富士火災・奈良支店の村田 肇氏で
富士火災内だけでなく、損害保険会社すべてのトップに君臨していた。
満場一致の人選で、テコズル事はなかった。
ただし、この時私は
「村田さんに次ぐNo2かNo3の方も取材したい」と注文を出した。
この意図は、村田さんの一挙手一投足や語りが、
本当にセールスの見本となるのか?を検証したかったからだ。
この行動は正しい、これは間違っていると比較はしない。
セールス法は無限にあり、その人固有のものである。
ただし、根っこには共通点があるはずだ。
その共通点を監督として引き出したかったし、
引き出せば、答えは言わなくても
同じ仕事をする者には必ず共鳴するはずである。
そういう狙いの元、人選されたのは同じ奈良支店の植本 修司氏だった。
植本氏もまた将来を嘱望されるセールスマンで、No2のポジションにあり、
遥か上を行く村田氏を目標としていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/0e/e21846a7b090a7daf3719152f14c8199.jpg)
(植本 修司氏の自宅までカメラは急襲!)
取材は1週間にもおよび、撮影テープも膨大なものとなったが、
約10日間の編集の末、40分物の本編と、
ノーナレーションの村田版と植本版、各30分物の計3本を納品した。
ノーナレーションの村田版と植本版は、河西カメラマンに編集させた。
もちろんプロデューサーからはギャラをふんだくって、
河西カメラマンに編集をお願いした。
カメラマンが撮ってカメラマンが編集するとなると何を捨てるのかに
興味があったし、うまくいけばそれを素材にすれば私の編集も楽である。
また、日頃「多田ちゃんの編集はあまい」と豪語する河西カメラマンが
どのようにまとめるのかを知りたかったし、お手上げして
「ぎゃふん!」と言わせもしたかった。
さすがに河西カメラマンの編集はまずまずの上がりだったが、
監督ならこのカットは「捨てる!」というところに
こだわりを持ってつないでいた。
結論①カメラマンと監督は兼務はできない!!
本編では村田氏と植本氏を同列でつないだが『感じるビデオ』としては
大成功だったように思う。なにより私自身が、
トップセールスマンである村田氏の発言を鵜呑みにせず、
つねに植本氏の活動と比較しながら
比較的クールに村田氏を見られた事が大きかった。
結論②監督は常に眉唾で被写体に接するべし!
さらに大きな収穫は、
「ビデオは見た人に感動を与え、自分も行動したいと思わせる!」
と同時に
「取材を通じて、被写体の退路を断ち、被写体自体を
よりバージョンアップさせる動機づけとする!」
という2つの効果がある事を私は確信した。
ということはNo1を取材するよりもNo2を取材する方が
No2は必死になってNo1に近づこうとするし、No1はNo2に負けまいと
必死になって行動する。その結果、No1とNo2は飛躍的に向上し、
No3で安泰と決め込んでいた者までも必死にさせるという効果があるのだ。
決論③結局、誰もがわかるビデオよりも、
No2、No3をターゲットにしたビデオの方がはるかに効果が大きい!
言うまでもないが、取材する側も覚悟を決めてかからねばならない。
常に観察眼をフル回転させて、スタッフが一枚岩で挑まねばならない。
これで、商品PRとギャラが同じなら、本当に割が合わないが、
現在まで、私はこの方法が気に入っている。
取材で様々な事を発言することで
自分自身の逃げ場、言い訳、退路を断った村田氏は
前年売上高3億円で業界No1だったが、この取材を終え、
作品が教材として各支社に送られた翌年、5億円を達成。
前人未到の快挙で、「しばらくこの記録は破られないだろう」と
富士火災企画部の担当者も驚きを隠さなかった。
後日、歴史と伝統漂う『奈良ホテル』で
「五億円達成記念パーティー」が挙行された。
村田氏から招待状が届き、有田 節子プロデューサーと私は
招待されたが、いくら包めばよいのか私は数日悩む事になる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/e8/c0d7f0935f7ea501855d1e8514e5edf0.jpg)
(村田 肇氏 五億円達成記念パーティー)
私は商品PRにあきあきしていた。
やれ商品カットだの、やれシズルカットだのと
スタジオで照明をあてて商品を撮るのに
面白みをまったく感じなかった。
企画の段階で、商品説明ではなく、
その商品をどのようにして販売すべきか、に路線を変え
販売のための応酬話法であったり、日々の活動の中で
どう販売していけばよいのかをセールスマンに聞くなど、
「取材形式」でまとめる企画を出すようになっていた。
というのも取材対象が「物」から「人間」になるからだ。
「人間」は生きている。
頭をナタで割って何を考えているのか見えるのならぜひ見てみたい。
しかしそんな事をしてしまうと殺人者になってしまう。
私にはまだ育てなければならない娘たちがいる。
できる限りべったりとくっついて話を聞いたり、
行動を観察することで、
その真意の一コマを発見することができる。
まさに「行動観察」こそフィルムにはない機動力を持つビデオの強みなのだ。
行動の一挙手一投足を逃すことなく、
インタビューで真意を切り取ったものを
ビデオに収め、あくまでも答えを出すのではなく、
「ああ俺もそうだ!そう行動すれば売上が上がる」等と
『感じてもらうビデオ』制作に面白みを感じていた。
もちろんカメラマンというフィルターを通した後、
監督である私のフィルターで編集するわけだから、
真実というわけではない。何らかの意図が入っているのは言うまでもない。
肉体派突貫野郎の河西 秀樹カメラマンと本格的に取組んだ
「トップセールスマンの行動」(富士火災海上)もまた、
損害保険のトップセールスマンの行動観察から
「雲の上の人であるトップセールスマンの日々の活動」を
同じ仕事をする視聴者に見て感じてもらい、
それを見た人は自分風にアレンジして、
自分の日々に活かしてもらおうと企画したものだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/88/1d5b22c7fb4a2b68820a454e8bed1d28.jpg)
(村田 肇氏を自宅前でカメラが襲う)
人選されたのは、富士火災・奈良支店の村田 肇氏で
富士火災内だけでなく、損害保険会社すべてのトップに君臨していた。
満場一致の人選で、テコズル事はなかった。
ただし、この時私は
「村田さんに次ぐNo2かNo3の方も取材したい」と注文を出した。
この意図は、村田さんの一挙手一投足や語りが、
本当にセールスの見本となるのか?を検証したかったからだ。
この行動は正しい、これは間違っていると比較はしない。
セールス法は無限にあり、その人固有のものである。
ただし、根っこには共通点があるはずだ。
その共通点を監督として引き出したかったし、
引き出せば、答えは言わなくても
同じ仕事をする者には必ず共鳴するはずである。
そういう狙いの元、人選されたのは同じ奈良支店の植本 修司氏だった。
植本氏もまた将来を嘱望されるセールスマンで、No2のポジションにあり、
遥か上を行く村田氏を目標としていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/0e/e21846a7b090a7daf3719152f14c8199.jpg)
(植本 修司氏の自宅までカメラは急襲!)
取材は1週間にもおよび、撮影テープも膨大なものとなったが、
約10日間の編集の末、40分物の本編と、
ノーナレーションの村田版と植本版、各30分物の計3本を納品した。
ノーナレーションの村田版と植本版は、河西カメラマンに編集させた。
もちろんプロデューサーからはギャラをふんだくって、
河西カメラマンに編集をお願いした。
カメラマンが撮ってカメラマンが編集するとなると何を捨てるのかに
興味があったし、うまくいけばそれを素材にすれば私の編集も楽である。
また、日頃「多田ちゃんの編集はあまい」と豪語する河西カメラマンが
どのようにまとめるのかを知りたかったし、お手上げして
「ぎゃふん!」と言わせもしたかった。
さすがに河西カメラマンの編集はまずまずの上がりだったが、
監督ならこのカットは「捨てる!」というところに
こだわりを持ってつないでいた。
結論①カメラマンと監督は兼務はできない!!
本編では村田氏と植本氏を同列でつないだが『感じるビデオ』としては
大成功だったように思う。なにより私自身が、
トップセールスマンである村田氏の発言を鵜呑みにせず、
つねに植本氏の活動と比較しながら
比較的クールに村田氏を見られた事が大きかった。
結論②監督は常に眉唾で被写体に接するべし!
さらに大きな収穫は、
「ビデオは見た人に感動を与え、自分も行動したいと思わせる!」
と同時に
「取材を通じて、被写体の退路を断ち、被写体自体を
よりバージョンアップさせる動機づけとする!」
という2つの効果がある事を私は確信した。
ということはNo1を取材するよりもNo2を取材する方が
No2は必死になってNo1に近づこうとするし、No1はNo2に負けまいと
必死になって行動する。その結果、No1とNo2は飛躍的に向上し、
No3で安泰と決め込んでいた者までも必死にさせるという効果があるのだ。
決論③結局、誰もがわかるビデオよりも、
No2、No3をターゲットにしたビデオの方がはるかに効果が大きい!
言うまでもないが、取材する側も覚悟を決めてかからねばならない。
常に観察眼をフル回転させて、スタッフが一枚岩で挑まねばならない。
これで、商品PRとギャラが同じなら、本当に割が合わないが、
現在まで、私はこの方法が気に入っている。
取材で様々な事を発言することで
自分自身の逃げ場、言い訳、退路を断った村田氏は
前年売上高3億円で業界No1だったが、この取材を終え、
作品が教材として各支社に送られた翌年、5億円を達成。
前人未到の快挙で、「しばらくこの記録は破られないだろう」と
富士火災企画部の担当者も驚きを隠さなかった。
後日、歴史と伝統漂う『奈良ホテル』で
「五億円達成記念パーティー」が挙行された。
村田氏から招待状が届き、有田 節子プロデューサーと私は
招待されたが、いくら包めばよいのか私は数日悩む事になる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/e8/c0d7f0935f7ea501855d1e8514e5edf0.jpg)
(村田 肇氏 五億円達成記念パーティー)
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